第3話:遊星んちにお邪魔する遊月ちゃん。

「神社なんてダメダメ」

「いくとこないなら俺の家に行こうよ?」


「え〜遊星の家にですか?」


「遠慮しないでさ・・・どうぜ俺ひとりだし・・・」


「そのひとりってのが曲者ですね」


「なに言ってんの・・・なにもしないよ神に誓って・・・」

「神に誓おうなんて人はみんな同じこと言うんです」


「じゃ〜裏寂しい神社の境内で寝る?」


「俺んちに来れば、飲み物だってあるし、あったかい布団で寝られるけど」


「じゃ〜ちょこっとお邪魔しようかしら・・・」

「ってことで遊星・・・私に捕まって・・・で頭の中で自分んちの場所を

思い浮かべて」


「はいはい・・・仰せのままに」


俺の腕を持った遊月っちゃんはその場から消えた。


遊月ゆづき遊星ゆうせいは、遊星が指示した彼の家の前に

現れた。


「ここ俺の家・・・」


「お世話になります」


「遠慮しなくていからね、永久に俺んちにいてくれていいから」


「そんな図々しいことできませんよ 」

「ご家族にだってご迷惑でしょ?」


「ああ〜親父もおふくろもいないから・・・」

「俺一人だから気つかわなくていいよ」


「え?お父さんとお母さん死んじゃったんですか?」


「あのね、勝手に殺さないでくれる?」


「そのほうがインパクトあるかと思って・・・」


「・・・まあいいわ・・・いないっていう点では同じようなもんだから 」

「実は親父は単身赴任でいなくて、おふくろは親父がいないと寂しいって言って

親父の単身赴任先に追いかけて行っちゃったんだよ 」

「俺一人残してね」


「そうなんですね・・・え?遊星はなんで行かなかったんですか?」


「俺は学校があるし・・・よそになんか引っ越したくないから」

「ひとりのほうが自由で気楽だしね」


「それに、今日からめちゃ可愛い彼女と一緒だし・・・」


「あの、まだ彼女って決まってないですけど・・・」


「いいのいいの、気にしないから・・・これからだよ」


「ほら、遠慮しないで入って」


「お邪魔しますぅ〜」


「誰もいないよ・・・おかしな遊月ちゃん」


「いいえ、どこの家にでも家の神様がいるんです」


「へ〜そんなもんなんだ」


「ちゃんと感謝しないとバチが当たりますよ」

「どんなものにでも神は宿ってるんですからね、付喪神つくもがみって言ってね」


「じゃ〜家のどこかで神様が見てるってこと?」


「そうですよ・・・だからエッチいことなんかできませんよ」


「はあ?・・・そ、そんなこと考えるわけないじゃないかよ?」


「遊星のほっぺにはっきり書いてますよ・・・アルファベットの8番目の文字が」


「え?うそ・・・そんなアルファベット誰が書いたんだ?」

「遊月ちゃんの被害妄想だよ、それって」


「なんでもいいからさ、とりあえずそこに、ソファーに座ってて・・・」

「飲み物とってくるから」


「もう遊月ちゃんは何言ってるんだよ・・・・つうか怖いよな、俺の心

見透かされてるし」

「するどい姫巫女様だな」


で、その夜はなにごともなく過ぎていった。


というより遊星に遊月をどうこうしようなんてそんな勇気ないから・・・

小心者でヘタレだからね。


遊星はソファで・・・レディの遊月は遊星の部屋のベッドで寝た。

遊星は自分の家に遊月がいるってだけで、ドキがムネムネしてなかなか

眠れなかった。


その点、神経が図太い遊月は爆睡していた。


そして次の朝、遊月は台所に立っていた。


「あれ、もう起きたの遊月ちゃん・・・おはよう」

「なにしてるの?」


「おはようございます、遊星」

「夕べ、泊めていただいたので、お礼に朝食でも作ろうかと思いまして」

「って言っても簡単なものしか作れませんけどね」


そう言って遊月が振り向いた。


「おおおおおおおお〜〜〜エ・エ・エ・エプロン姿・・・もうめちゃ可愛い」

「たまんない・・・どうしよう?」


「あ、あのさ・・・あの・・・遊月ちゃんが台所に立ってると新婚さん

みたいだよね、俺たち・・・」


「まだ彼女になってないって言ってるでしょ、しつこい」


「あのさ片想いかもしれないけど俺、誰にも負けないくらい君のこと好きだよ」

「君に命を救われた時から俺の遊月ちゃんに対する気持ちは決まったんだ」


「そんなこと・・・だって私はいつか神の国に帰っちゃう身ですよ」

「私を好きになっても待ってるのは悲しい結末だけです」


「なんでそんな切ないこと言うんだよ・・・せっかく遊月ちゃんと知り

合えたのに・・・ 」


そもそも神様とか巫女とか、みんなプライド高いんですよ。

人間を彼氏や伴侶に持つことなんてありえません・・・」


「私、ここへは興味本位で来ただけですから・・・」


その言葉は遊星にとってショックな発言以外なにものでもなかった。


つづく。



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