第2話: 月の夜に我と遊び、我と戯れ、我と死の契りを結ばん。

「僕を見捨てないでよ、遊月ちゃん・・・」


「死にたいんでしょ?」


「なわけないじゃないですか・・・意中の人と出会いえたんですよ、なのに

死のうなんてやつがいたら大バカ者ですって」


「しょうがありませんね」


遊月那姫ゆづきなひめは困ったように自分のほっぺに人差し指を当てた。


「わはあ〜〜〜〜めっちゃ可愛い・・・体から力が抜ける・・・」


「可愛いなんて言われると照れます〜」


「だって可愛い以外他に表現にしようがないんだもん」

「はっきり言って一目惚れなんです」

「遊月ちゃんしか考えられません」


「調子よすぎです」

「あなた、女子みんなにそんな歯の浮いたようなこと言ってるんでしょ」


「そんなことないですよ、俺は可愛い人には素直に可愛いって言ってる

だけです・・・」


「遊星・・・あなたイケメンくんだし、ビジュアルもまあ私のタイプ

なんですけど・・・でも見るからに軟弱そうだし軽そうだし」

「もっとこう、たくましくて強うそうで頼り甲斐があって少しくらいのことじゃ

動揺なんかしないメンタルが強そうな人が私、好きなんですけど」


「え〜・・・それって俺とキャラま、真逆じゃないですか」

「僕が自分のタイプって言っておきながらマッチョってなんですか?」


「ね、だから〜諦めてください」


「諦めきれません・・・これから期待通りの男になるってことで考えて

もらえませんか?」

「遊月ちゃんが彼女がダメって言うなら、友達からでもいいですから」

「俺を見捨てないでください」


「お願い!巫女姫様みこひめさま


そう言って遊星は神社に参拝した時みたいに手を合わせてパン、パンって

叩いた。


「困ったわね」

「私、神様に仕える身だけに手を合わせてお願いされると弱いんです」

「それにしてもクラスの女子全員にフられるなんてよっぽど女子に嫌われてる

んですね」

「そのへん、ちょっと私の同情少しだけかってますけど・・・」


「俺、何も嫌われるようなことしてないです、普通に生きてるだけです・・・」

「勉強は、まあイマイチだけど、運動もまあダメだけど」

「でも漫画が好きで、アニメが好きで、美少女育成ゲームが好きで美少女フィギュアが好きで、緑黄色なんちゃらが好きで・・・。


「それで充分です」


「しょうがないですね・・・じゃ〜まずはお友達から・・・それでいいですか?」


「いいです、それで、充分です」

「で、遊月ちゃんに会いたくなったらどうやってご連絡すればいいんですか?」

「スマホとか持ってます?」


「スマホがなにか知りませんけど・・・」

「そうですね・・・じゃ〜この勾玉、お渡ししておきますから」


そう言って遊月那姫ゆづきなひめは懐からブルー色に透き通った勾玉を出した。


「私に会いたくなったら、この勾玉に呪文唱えてください」


「わ、分かりました・・・で、なんて唱えたらいいんですか?」


《月の夜に我と遊び、我と戯れ、我と死の契りを結ばん》


「そうすれば、私が現れますから」

「ひとことでも間違えたら、私とは会えませんよ」


「分かりました、メモしときます」


「じゃ〜ね・・・私、もう行きますからね・・・さよなら遊星」


そう言うと遊月那姫は流星の前からフッと消えた。


「うそ?消えた・・・普通の女子だって思ってなかったけど神の国から来た

ってのは本当だったんだ・・・でも、遊月ちゃん・・・め、めちゃ可愛い・・・・」


「そうか・・・呪文唱えたらいいのか?、ちゃんと覚えとかないとな」


「なになに?・・・死ってなんだよ・・・まあいいわ」


《月の夜に我と遊び、我と戯れ、我と死の契りを結ばん》


「って唱えたらいいのか?・・・」


「呼びました?」


「おわ〜〜〜〜び、びっくりした」


「あのね、面白半分に私を呼ぶのやめてくれません?」


「勾玉、返してもらいますよ」

「呼び出すなら、せめて一日置きくらいにしてくれるとありがたいんですけど」

「そんなに頻繁に呼びだされるくらいなら遊星のそばにいたほうマシです」


「じゃ〜ずっとそばにいてよ」

「俺から離れたら呪文唱えますよ」


「しょうがない人・・・勾玉渡しても勾玉で私を呼び出す意味ないでしょ」


「人間界に来たばかりでしょ、どうせ行くとこないんでしょ?」


「それはそうですけど・・・」

「今夜はどこかの神社にでもお世話になろうかと思ってまして・・・」


つづく。

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