お願い!姫巫女様。

猫野 尻尾

第1話:遊月那姫。(ゆづきなひめ)

誰の召喚も受けずに神の国から人間界へやってきた一人の姫巫女「神霊」。


遊月那姫ゆづきなひめ


彼女は「天宇受売命あめのうずめ」に仕える神霊であり姫巫女様。


天宇受売命あめのうずめ」と言うと天の岩戸に隠れた「天照大御神あまてらすおおみかみ」を救出する際、

上半身を裸で踊り八百万やおよろずの神々を沸かせたことで有名な女神様。


神の国で平和に暮らしていた遊月那姫は人間に興味をもって人間の世界に勝手に

遊びにやってきた。


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天河 遊星あまかわ ゆうせい」現役高校生・17才。


遊星は、惚れっぽくて、ちょっと図々しくせに、ヘタレ男子。

惚れっぽいもんだから我慢できずクラスの女子全員、順番に告りまくった

あげく全員から「ごめんなさい」を食らった。


断られた理由は、優柔不断、最低、ウザい、重い&ヘタレ。

女子からしたら、あげたらきりがないくらいのダメ男だと思われている。

実際は案外、純粋なところがあったりする。

かなりのイケメン君なんだが・・・軽い性格が邪魔をしている。


遊星はクラスの女子全員にフラれてショックを受けていろんなことが急に嫌に

なって挫折し倒したあげく、この先いいことなんかなにもないんだって自分を

卑下し悲観し世を儚んで死んでやるってヤケになっていた。


学校からの帰り道、カンカン鳴ってる踏切の前に差し掛かった時このまま電車に

飛び込めば、あっと言う間にあの世行きだなって、ふと思って魔がさした。


今まさに死神が遊星の背中を押そうとしていた。


おもむろに遮断機をくぐろうとした時、遊星の背後にいた死神を押しのけて、

遊星の襟首を掴かんだ誰かがいた。


「あなた・・・死のうとしてます?」


そう言われて振り向くと、そこにめっちゃ、めっちゃ、めっちゃ可愛げな巫女さん

の衣装を着た女の子が立っていた。


定番の巫女さんの衣装着てるし・・・で、巫女さんって言えば髪は普通

ポニーテールってのが一般的なんだろうけど、その子はツインテールだった。

どこからどうみても見ても360度回転してみてもその子は巫女さんだった。


しかも、さっきも思ったようにめちゃ可愛いときたもんだ。

しかも、よく見ると胸だってけっこうタワワだし・・・。

遊星はどさくさに紛れてもそういうところは絶対見逃さない。


「お〜まじこで可愛い巫女さん・・・まじ俺のタイプ」


「こんなところにいたら危ないですよ」

「とりあえず道端まで移動しましょ」


「あなた、死のうとしてたでしょ?」


「とんでもない、そんなことしないですよ」


「白状しなさい・・・分かってるんですよ」


 性格がMな遊星は女性から上目線で指摘されるとつい白状してしまう。


「そ、そうだよ死のうとしてたよ・・・でも君みたいな可愛い人に声かけられたら

死のうと思ってた決心が鈍るじゃないですか?」


「ほら、やっぱり死のうとしてたんじゃないですか」


「君、どこの神社の巫女さん?」


「私は遊月那姫ゆづきなひめと言って「天宇受売命あめのうずめ」に仕える神霊であり姫巫女です」

「今日、神の国から人間の世界にやってきたばかりです」

「現れる場所をちょっと間違えたみたいですけど・・・」


「え?神霊・・・姫巫女?・・・さん」

「どこから来たって?」


「神の国・・・」


「君、大丈夫?」


「私をバカにするなら、もう行きますよ?」


「いやいやいや・・・これって絶対運命の出会いだよ・・・」

「君、俺のために来てくれたんですよね・・・俺の命を救うために・・・」

「う〜そうなんだ・・・捨てる神あれば拾う神だ・・・」


「それちょっと違いますけど・・・ここに現れたのはあなたを救うためじゃ

ありません・・・偶然です」

「たまたま現れた場所がここだっただけです 」


「いや、それでもこれは運命の出会いですよ、遊月?・・・」


遊月那姫ゆづきなひめです」

「あそぶつき、と書いて遊月・・・」


「あそぶ?・・・あ、俺の名前もあそぶほしと書いて遊星ゆうせいって

読みます」

「あ、俺、「天河 遊星あまかわ ゆうせい」高校二年生です」

「俺のこと遊星って呼び捨てでいいですからね」

「俺たち名前に遊って文字が入ってますよね、これって偶然じゃないと思い

ませんか?」


「ああ、ゆづきなひめさん・・・僕たちのこの出会いって奇跡ですよ」

「ねえ遊月ちゃん」


「遊月ちゃん?」


「つうか遊月那姫って呼び方、仰々しいでしょ」

「だから遊月ちゃんで・・・」


「遊月ちゃん・・・いきなりだけど、これも定めと思ってよかったら俺の

彼女になってくれませんか?」


「彼女ですって?」

「本当、いきなりですね」


「はい・・・俺の彼女に・・・」


「あの?・・・そういうの困ります」


「遊月ちゃんに、うんって言ってもらえないと俺のほうが困るんです・・・

クラスの女子全員にフラれまくってもう後がないんです」


「それで死のうとしたんですか?」


「俺の彼女になってくれなかったらこのまま電車に飛び込んで死にますよ」


「えっ?私を脅迫するんですか?」

「じゃ〜どうぞ、死にたかったらいつでもお好きな時に死んじゃってください」


「さっき止めるんじゃなかったです」


「え〜神霊さんなんでしょ?・・・神様に仕える巫女さんなんでしょ・・・

死んじゃってくださいなんて、そんな無慈悲な・・・」

「僕を見捨てないでよ、遊月ちゃん・・・」


つづく。


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