第2話 むーげとたんぽぽ

 むーげたちの暮らすどっかの国にも、春がやってきました。

 春になれば花が咲きます。百花繚乱、満開の桜の木の下でお酒も飲み放題です。むーげは子羊だから、お酒はまだ飲めませんが。


 空気があったかくなります。羊たちは冬を越えた安堵でほっとすると同時に、高揚感でホットな気分にもなっていました。


 むーげは珍しいことにお外に出ていました。今日からむーげは小学校に通うのです。


「学校はどうして八時半から? 十時からじゃないと遅刻だむげ」


 むーげの安眠ライフもここまでのようです。学校で眠っても良いのでしょうが、ノーリスクを取りたいむーげとしては居眠りはダメ、ゼッタイ! なのです。


「いいから行くノーネ」


 お母さんにずりずり引きずられて学校に着きました。今日は入学式です。むーげの他にもたくさんの愉快な子羊たちがいます。


「みんなで写真を撮るんだぱ」


 お父さんの提案で写真を撮りました。


 むーげは入学式の内容は覚えていません。結局寝ていました。

 幸い今日は式典が終われば解散です。マダムな雰囲気の担任の先生から教科書と学習用タブレットを受け取り、さっさとおうちに帰ることにしました。


 おうちのお庭に、むーげの体と似た黄色の花が咲いています。たんぽぽです。


「きれいむげ」


 むーげはさっさとお昼寝しようとしたのも忘れて、一輪の花に見入りました。


「おや、むーげ。それは千年たんぽぽだぱ」

「せんねんたんぽぽむげ?」

「春も夏も秋も冬もずっとそこで咲き続けているたんぽぽなんだぱ」

「ずっとむげ?」

「ずっとだぱ」


 お父さんに良いことを教えてもらったむーげは、良いことを思いつきました。


 千年たんぽぽとお友達になって、毎日学校へ行く時と帰ってきた時にお話するのです。普通のたんぽぽは綿毛になって飛んで行ってしまいますが、千年たんぽぽならその心配もありません。


「行ってくるむげー」


 今日も空色のランドセルを背負ったむーげが出かけていきます。遅刻はしてないようです。

 黄色いたんぽぽの花がのほほんと風に揺れて、いってらっしゃいとむーげを見送りました。

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ぼく、むーげ。 七草かなえ @nanakusakanae

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