第3話 デートのあとに告白
ダメだ。このままだと俺は三上のことを好きになってしまう。
そう思い、3回目の告白はちょっと待ってもらうことにした。数日空けて頭が冷えれば、また冷静な視点で三上の練習に付き合えると思ったんだ。
だが、想定外に、数日後は週末となってしまった。
週末にクラスメイトの女子と会うなんてデート以外のなにものでもない。
次の告白練習は週明けの月曜日か、と安堵していると、三上からLINEが届いた。
『好きです。今週末の土曜日、時間をもらえませんか?』
「はっ!?!?」
俺は思わずベッドから凄まじい勢いで起き上がった。震える手でスマホを握りしめていると、連投で通知が飛んできて。
『ねぇ、びっくりした? LINEで告白って、どうかな?』
なんて冗談めかしたトークが続いて、ホッとする。
(なぁんだ、練習か……)
どこか残念に思ってしまった自分の頬をビンタして、我に返す。
『ひょっとして、週末も練習するつもりか?』
『デートに誘って、そのあとに、ってどうかなと思って……』
『鉄板だな。いいと思う』
まぁ、俺ならデートに誘われた時点で有頂天になっちゃいそうだけど。そうじゃなくてもこの手はアリだ。
デートの最後に、はかなり安牌な作戦だと思う。
だって、デートに誘って、相手が来てくれるってだけで告白の成功率は高いわけだし。自信のない三上が自信をつける意味でもかなりイイ作戦に思えた。
だから、協力しようと思ったんだ。
(女子との初デートが『練習相手』になっちゃったけど……まぁいいか!)
俺は、それくらい三上の恋愛を応援していた。たとえ自分が三上を好きになってしまったとしても、三上の告白がうまくいって、笑ってくれたらそれでいいかなって……
「よーし! そうと決まればどこ行くかなぁ!」
そうして俺たちは、週末の土曜に、一緒に水族館へ行くことになった。
◇
水族館は、好きだ。
全体的に蒼い照明、落ち着いた雰囲気、ゆったりと泳ぐ魚。
水族館という空間にいるだけで自然とリラックスできるし、告白するにはもってこいの場所だとも思う。
俺たちは、最寄り駅の改札で待ち合わせをして、水族館に向かった。
無論、隣のカップルみたいに手を繋ぐことはない。だって俺たちは、『告白練習』のための同志だから……
と、思っていると。
華奢な手が俺の指先を摘んだ。
「ふぇっ!? ちょ、おい。三上……!?」
「デートなら、手くらい……」
「初回のデートで!? 案外大胆なんですのね!?」
「なんでお嬢様語?」
くすくす、と空いた方の手で口元を抑える三上が可愛い。
俺は、勇気を出してその役得を受け取った。
三上の細っこい指先を握り返して。
「本番でも、こういう風に握り返されたら、勝ち確だな」
「……!!」
「握り返されなかったら、落ち着いて機を待とう」
「おお、それっぽい。さすが師匠」
「誰が師匠だっ」
こちとら恋愛経験ゼロですよ?
なのにいいのかねぇ。こんな、クラスで3番目に可愛い女子と、手ぇなんて繋いで……
ぶっちゃけ、嬉しすぎる。
◇
水族館でイルカショーと綺麗な熱帯魚を堪能した俺たちは、三上の提案で最も大きな水槽の前にやってきた。
巨大なジンベエザメがゆったりと泳ぐその水槽に瞳を輝かせる三上。そんな三上を、あまり見てはいけないと思って顔を逸らそうとしたら、不意に目があった。
三上は、艶やかな黒髪を赤く染まった耳にかけながら。
「あなたといると楽しい。ねぇ、私と付き合って」
と。告白をしてきた。
ズキュン……!
俺は思わず水槽に手をついて、バクバクの心臓を抑える。
「今の、すっごくイイ……!」
息も絶え絶えそう答える俺に、三上は楽しそうに笑って。
「あははっ! そんなに良かったかな? じゃあ安心だ。私も成長してるってことね♪」
そうして、ふい、と視線を合わせて、
「東雲のおかげだよ。ありがとう」
と、微笑んだ。
ズキュン……
ああ、もうダメだ。
俺、三上のこと、好きになっちゃった……
そんな甘い雰囲気を裂くように届いたLINE。
それは、俺の親友の西野からだった。
『なぁ。しののん(東雲)と三上って、付き合ってんの?』
「……へ?」
いつの間にか。そういう噂になっていたらしい。
もしくは今この瞬間。クラスメイトの誰かに水族館で目撃されてリークでもされたか。
俺は、きょとんと顔を覗き込んでくる三上に告げた。
「どうしよう。まずいことになったぞ……!」
※あとがき※
五話完結の短編です。一日一話更新予定。
お楽しみいただけると嬉しいです。
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