第2話 教室と屋上で告白
「これから毎日、東雲を相手に告白の練習をするから。……付き合って」
「は????」
……わけがわからないよ。
告白の練習って……何? 俺の気持ちはどうなるの? ドキドキし損じゃん。それが毎日続くわけ? ぶっちゃけハードすぎる。
「……ダメ?」
「んぐぐ……!」
はい! その上目遣いはダメです! 断れるわけがないっ!!
「……わかったよぉ……」
いままで女子とそれらしい浮いた話のなかった俺だ。
告白なんて夢のまた夢だと思っていたけれど。まさかそれが『練習』だなんてあんまりだ。
でも、三上が俺のことを『話しやすそう』と思って選んでくれたこと自体はまんざらでもない心地だった。
だから、つい、OKしてしまったんだ。
◇
初日の告白は、そのまま放課後の教室で行われた。
ふたりきりなのをいいことに、箒を手にしてナチュラルに、さらっと言ってしまおう作戦。
「……好き。付き合って」
「…………」
ずきゅんっ……!
夕日に染まる上目遣いと、自信のなさ故の泣き出しそうな表情が庇護欲をそそる!
ガッデム……!!
完全にテンプレな台詞の棒読みなのに! なんつー威力だ!
だが、それは俺が女子に慣れてなくてチョロいから効いているだけだと思う。
三上が誰を射止めようとしているのかは知らないが、今の棒読みじゃあさすがに無理があるだろう。
冷静に考えると、あの棒読み具合はモテメン相手には「はぁ? 声ちっさ」で終わるし、俺みたいな非モテがされたら「え? 罰ゲーム?
「たしかに、こりゃあ練習が必要かもな……」
困ったように頭を掻くと、三上はスカートの裾を握りしめてぷるぷる震えだす。
「やっぱり……ダメなのね……私じゃあ」
「いやいや! 練習すりゃあこれから良くなるし! 付き合う以上はとことんやらせてもらうよ、俺は!」
泣かせまいとして、バカみたいな笑みを浮かべる。「任せとけ!」なんて恋愛経験ゼロの俺が何言っちゃってんだって、心の中で自分にツッコミをいれながら。
でも。三上は笑ってくれた。
だからいいかなって、思ったんだ。
◇
2回目の告白は、放課後の屋上だった。
俺の中の鉄板テンプレートだから。
そう提案して、俺と三上は今、放課後の屋上にいる。
無論、扉には立ち入り禁止の手作り張り紙をして人払い済み。
昨日より少し暖かい秋風が三上の短いスカートを揺らす。それを手で遠慮がちに抑えながら、三上は告白してくれた。
「あなたが好きです。付き合ってください……」
「…………」
ズキュン……!
昨日と全く同じ台詞なのに!敬語になっただけで何だこの違いは!?
なんつーか、俺を好意の対象としてリスペクトしている感じが伝わるっていうか、なんていうか……敬語、イイな!
「ど、どうだった?」
「イイ! 昨日よりかなりグッときたぞ!」
「ほんと!?」
ぱぁ、と瞬間的に笑みが咲く。
可愛い。なぁにが3番目だ。今の三上は圧倒的に世界で一番可愛いよ。
口元のによによを隠しながら、俺はその日の講評をした。
敬語がイイ。上目遣いがイイ。
夕暮れっつーシチュエーションはやっぱり鉄板でイイ。
ただ、それも相手次第だと。
日頃から親しい男友達や幼馴染とかに告白をするなら、敬語はよそよそしくて不自然に感じるから通用しないだろう。
大真面目にそう告げると、三上もこれまた大真面目にスマホでメモを取ったりして。
それがなんだか可笑しくて、つい吹き出してしまう。
「俺らって、なんつーか変なとこで真面目なとこ、似てるよな?」
「あはは!」と笑い飛ばすと、三上はスマホで口元を隠して。
「東雲のそーいうとこ、好き……」
と言ってくれた。
好き、という単語に思わず頬が熱くなる。
三上いわく、バカ真面目にこんな練習に付き合ってくれて、それをネタにすることなく、失敗したときは笑い飛ばしてくれるところがイイんだと。
「そっか。そういうところが、話しやすいってことなのかもな」
俺にも、女子に褒められる長所のひとつもあってよかったよ。
「ありがとな、三上」
それに気づかせてくれた三上に礼を言う。
隣で体育座りをしていた三上は驚いたように顔をあげ、目を見開いた。
そうして、ふいっ、と顔を逸らして。
「こっちこそ、ありがとうだよ……」
夕暮れの屋上でふたりして「緊張したら腹減ったなぁ!」とポッキーを分け合う。
ポキッと折れるその音と秋風に耳を澄ませるその時間を、俺は、ずっと続けばいいなと思ってしまった。
※あとがき※
五話完結の短編です。一日一話更新予定。
お楽しみいただけると嬉しいです。
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