【短編】クラスで三番目に可愛い女子が、毎日告白の練習をしてくる
南川 佐久
第1話 クラスで三番目に可愛いってどうなの?
とある放課後。その日は秋なのにやけに寒い日だったのを覚えている。
高一初めての夏休みも秋の修学旅行も終わって、クラスの皆が打ち解けだして、誰が誰と付き合っているだの、どの女子が人気だのという話にももう慣れてきた。
そんな中、放課後に教室を掃除していると、ふと箒を手にした女子と目が合う。
今日の掃除当番、教室担当は俺とその女子のふたりだ。
たしか名前は、
夕暮れに染まる黒髪は肩より少し上と短めだが、目を見張るほど艶やかで、その髪を耳にかける姿が印象的だった。
いや、思わず見惚れてしまうくらいには
なにせ彼女は……
「ねぇ」
クラスで三番目に可愛い女子――
「三番目って、どう思う?」
「へ?」
袖の長いセーターで、もごもごと口元を隠す三上が、明らかに俺に話しかけていることにようやく気付く。
――『三番目って、どう思う?』
開口一番、なんだその質問。
だがその意味は、このクラスの男子ならそれなりに理解できるものだった。
誰が決めたかわからないそのクラス内美少女ランキングは、風の噂で広まって俺の耳にも届いていた。
だから、この問いの意味が俺にはわかる。
「三番目……普通に上位だと思うけど」
「やっぱり、
むすっと頬を膨らませて、どこか不服そうな三上。
たしかに、あのランキングは女子には非難轟々だった。
女子の可愛さにランクを付けるとは何事かと。
でも、そういうことをついついしてしまう生き物なんだよ。男子ってやつは。
睫毛の長い不服の眼差し。俺は、じっと見つめられていることにどぎまぎしつつも口を開く。
「……クラス内美少女ランキングのこと?」
「そう。あの失礼千万なランキング。だって、『クラスで三番目』よ? 他のクラスもあるってことは、学年内だとそれ以下なわけでしょう?」
「でも、可愛い女子がこのクラスに集中していれば、三上は三位だ」
「銅メダル! 表彰台ぎりぎりレベルじゃないっ!」
「なんだ、そっちこそ失礼な。銅メダルってすげぇんだぞ。でもその口ぶり……もしかして三上は、一番になりたいのか?」
「そっ……! そういうわけじゃなくて!」
俺の問いにごにょごにょと視線をそらし、頬を染める。
そうして三上は、恥ずかしそうに呟いた。
「絶対……負けたくないのよ……」
「は?」
「私にだって、負けられない戦いがあるの! 三番目じゃあ、安心できないのぉっ!」
「安心……? 何に?」
夕暮れに染まる三上の頬は橙で。だが、さっきまでより明らかに赤みが増していた。
照れているのだ。……可愛い。何に照れているのかはわからないが。
そんな三上は、ごにょりと、「誰にも言わない?」とジト目を向ける。
長い睫毛がしぱしぱとして、羞恥にちょっと涙が出そうなその様が、くそ可愛い。
何を言い出すつもりかは知らないが、秘密にして欲しいなら守るべきだろう。
俺は「はは」と軽く笑って「言わないよ」と返事した。
すると三上は……
「……好きな人がいるの」
「!」
「絶対に、告白に失敗したくない相手が」
それは初耳だ。
「へぇ~。三上に好きな奴がいるなんて、クラスの皆が知ったらびっくりするな」
なにせ、三番人気ですし。
それは、俺的には十分大人気の部類だし。
「ちなみにどんな奴?」
「それは内緒っ!!」
「だろうなぁ~。で、それをどうして俺に言うんだ?」
問いかけに、三上は耳を真っ赤に染めて。
「……ふたりきりだったから」
「ふーん?」
「東雲って、話かけやすそうだなぁって。今ならいけるかなって……」
ごにょ、と呟く三上はまるで猫のように背を丸めて、自信がなさそうで。
三番目でどうして自信がないのか俺にはまったくわからないが、いわく、三上的には三番目では告白が失敗するのではないかと案じているらしい。
「……告白の、練習をさせて欲しいの」
そう、まっすぐに俺を見つめて言い放ったのだ。
その言葉の意味が信じられず、俺は背後をぱっと振り向く。
しかし、三上の言ったとおり、今は教室にふたりきり。言葉の矛先には俺しかいない。
「……俺?」
自身を指差すと、三上は照れくさそうにこくりと頷く。
「これから毎日、東雲を相手に告白の練習をするから。……付き合って」
「は????」
そうして、なぜか、クラスで三番目に可愛い女子から毎日告られる生活が始まったのだった。
※あとがき※
五話完結の短編です。一日一話更新予定。
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