第2話 自身の欠落と力の獲得

 私は漂っていた。

 光の中を、闇の中を、ただ漂っていた。

 しかしそれと同時に私にとって大切な記憶が失われていってしまっていることに気付いた。

 私が生きていた証拠が失われていく。

 だが、その失われてしまっている記憶の隙間を埋めるように力が注ぎ込まれていた。

 私は私の記憶と引き換えに力を得ているようだった。

 気がつくと私は何処ともしれない荒野に一人佇んでいた。

 私は自らの掌を見る。

 私の記憶は千切れ千切れで、これが本当に私の身体なのかさえ解らないまでになっていた。

 だが、その替わりに私は手に入れた力の使い方を理解していた。

 試しにその場で軽くジャンプしてみると10mは軽く飛べるようだった。

 私の肉体は、驚異の強度を誇る物となっていた。

 その替わり失った代償は最早なんなのかさえ解らないのだが…

 しかし、こんな荒野で一人で生きていく為には、この力は絶対に必要になってくるだろう。

 何せこの身体は不老不死の身体なのだから。

 私はその場に座り込み考えた。

 まずは誰かしらが居る場所に辿り着く必要があると言うことだ。

 手荷物は特になく、服は簡素な物であった。

 幾らこの身体が不老不死の身体とは言え、このまま何もせずに荒野に一人居続けるのは御免被りたい。

 だから私は意識を広げていった。

 これも失ったものの代わりに得た力だ。

 千里眼とも呼べるものだろう。

 意識を広げ広げ…見つけた。

 人々が暮らす場所を。

 私はその見つけた場所に向かうべく走り出した。

 その速さは軽いジョギングのつもりでも、とても人間が出せるものでは無いことに気付かないままに。


 私が辿り着いた場所は荒廃していた。

 いや、正確に言えば周辺はスラムで中心にビル群が建っているような場所であった。

 スラムには子供達が日々生きていく糧を得る為に活動をしているようで、私のことになど目もくれずに動き回っていた。

 私はスラムを通り過ぎ中心地に存在するビル群へと向かうことにした。

 するとそこには摩訶不思議な光景が広がっていた。

 魔物を引き連れているもの、ロボットを引き連れているもの。

 商人の格好をしたものから、荒事を生業にするものまで、雑多な人々でごった返していたのだ。

 このビル群…この町?街?がどの様な機能を持ち、この世界の基準でどの様な規模なのかが解らない私は、取り敢えず歩きながら聞き耳を立てて情報を収集する事にしたのだった。

 とは言え、私は私の身体に与えられた能力のお陰で、彼等が何故どうやって魔物やロボットを従えているのかは何となく予想をしているのだが。


 私の予想は当たっていた。

 この世界の人々も私と同様の力を持っているようだ。

 だが、肉体能力はそれほどでも無いようだが。

 その力を持っている人々は一部の者達のみのようで、必ずしも全員がその力を持っているわけではないことが解った。

 魔物をカード化して使役する、モンスターマスター。

 ロボットをエレキネシスで支配下に置くロボットマスター。

 さらにその他の超能力者が存在するようだ。

 だが、これらの存在はこの町だけで凡そ20%程居るか居ないかと行った所。

 因みに私は、魔物をカード化する能力も、ロボットを支配下に置く能力も、その他の能力も保持している。

 これはこの世界では極希だと言うことも把握した。

 本来であれば自重して然るべきなのだろうが、私はそんなことをする気にはなれなかった。

 何故ならば私自身がかなりの強さを持ち得ているからだ。

 であるならば、自重する必要はないだろう。

 寧ろ中途半端に自重した方が危険まである。

 自身の立ち回りに気を付けて、動けば私はこの世界をかなり自由に活動できるだろう。


 私は早速魔物が跋扈するダンジョンを踏破することにした。

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