第3話
「陰陽術で削ぎ落としましょう!」
すっごい良い笑顔で提案する道満。どんだけ俺の胸が嫌なんだ。相当重いぞ、肩痛いし。
「削ぎ落とすから離れてくれません?しかし陰陽術は良い考えだ!」
「都一番の陰陽師はバカなんですか??」
幻術にするか、いや物理的に変えよう。もしかしたら性別も戻せるかもしれないし!
「やってみっか!~~~蘇婆訶!」
俺は術式を唱え辺りの空気を巻き込んで自分を中心に渦を作る。
渦が小さくなり俺の胸元に集まっていく。
そして。
バチッ!!
と光、渦は消える。
「~~~~~ー!?痛ーい!!!」
「え!?大丈夫ですか晴明様!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
俺は胸を押さえて転げ回る。痛い!ホントに痛い!焦げた!嫌な匂いするし!
「何が!?」
「弾かれた!術が!」
「晴明様の術を弾いた?」
「マジかよ、相当強いぞ。これかけた奴・・・」
胸を押さえながら考える。俺の術を弾く程の術を俺にかけるなんて、全然思い付かない。
自惚れじゃなく俺より強い陰陽師なんていない。
そんな人間は、いない。
「あ~!痛ーい!道満より大きい胸が取れる~!」
「一言余計だよ」
「とりあえず陰陽術は使えないな、また痛い思いしたくないし」
「じゃあサラシで潰しますか」
手元を見る事なくサラシを取り出す道満。流石俺より俺の部屋の事分かってる。
「はい、じゃあ手上げて」
道満が後ろから手を回しサラシを当ててくれる。
「・・・・・・」
「どうした??」
「おりゃ」
「きゃあ!!」
何!?胸を下からモニュっとされた!!
「いや、柔らかそうだなぁと」
「やめろよ急に!」
「というか晴明様今の声何ですか、きゃあって」
「いやいや急に揉まれたらそんな声も出るよ!」
「出ないですよ、さ、サラシ続きしましょう」
「おい!もう触るなよ!マジで!これフリじゃないからな!聞いてる!?ねえ!きゃああああ!!」
このあと3回モニュっとされた。
「サラシの上から服を着て。うん、大丈夫ですね。いつもの晴明様です」
「う~む、上は重いし、下はないから違和感。まぁ良い!とりあえず朝メシだ!早く持ってきて!」
「ハイハイ」
朝御飯は毎日道満が俺の部屋に持ってくる。
そして一緒に食べる。
その時に今日の予定聞いてそのあと出かけたりする。
「で、実際どうするんですか?」
煮物を口に運びながら道満が聞いてくる。
「当てはある」
白飯をかき込みながら俺が答える。
「そうなんですか?」
「俺の術が効かなかったんだ。それで大体犯人は絞れる。」
「マジっスか!え、誰ですか!?」
「今日の味噌汁美味いなぁ、今日誰が庖丁人だった?」
「早く言えよ!」
「リョウメンスクナノカミ」
リョウメンスクナノカミ。この前俺が倒した、鬼の中の鬼、鬼神。八本の腕を持ち、前後に顔のある五重塔の5倍はある巨躯の怪物。
色々な奴らと戦ってきたがコイツ以上はいなかった。
戦いはかなり大掛かりのものになった。
鬼神大戦とでも呼ぶべきか。
まぁそれはいずれ話すとして。
「アイツ、飛騨出身のくせに何で京都来たのかな?」
「さぁ晴明様に恨みでもあったんじゃないですか?」
「初対面だったのに!?」
朝御飯を食べ終え、俺達はリョウメンスクナノカミと戦った場所に行く事にした。
リョウメンスクナノカミを倒したのは平等院鳳凰堂。
戦った場所からといえば京都全体なんだけど、最後の場所は平等院鳳凰堂になる。
実際にリョウメンスクナノカミ以外にも敵はいた。
それらとの戦いもあり、戦いは長引いた。
外に出る。
「牛車呼んできます」
「おー頼むー」
道満を待つ間ソワソワしかない。
ん~やっぱり下が落ち着かないなぁ。あとサラシ、苦しい。重いし。
何かこう支える物が欲しい。
「安倍晴明様!おはようございます!」
「お、おぉ!おはよう!」
「晴明様!この度は鬼神討伐おめでとうございます!」
「あ、ありがとー」
「安倍晴明様!」「晴明様!」「おはようございます!安倍晴明様!」「安倍様!」
通りすがり、貴族達、街の者。おれを見ては皆んなが挨拶してくる。
ちゃんと安倍晴明と認識して。
ん~そんなに変わらないかぁ。結婚中性的な顔だったんだな、俺。
「晴明様、お待たせしました」
「道満、意外とバレなかったよ」
「でしょう」
牛車に乗り、平等院鳳凰堂を目指す。
「晴明様、リョウメンスクナノカミは倒したのでしょう?もういない者が晴明様に術をかけられますか?」
「あーあり得なくはないのよ、術というか呪いだな、死に際な呪いは結構強いよ」
「それをかけられたと?」
「分かんない、けど俺に呪いかけられるくらい強いのはアイツくらいしか思い付かないだけ」
「・・・・なるほど」
牛車は進み、着いたのは午後15時くらい。
「え!?なくなった!?」
「実は討伐後次の朝になると消えていて」
平等院鳳凰堂の警備の者が言う。
「マジかよぉ」
平等院鳳凰堂でリョウメンスクナノカミを倒して、亡骸は堂の眼の前に崩れ落ちた。
その亡骸を見に来たんだけど、倒れた巨躯の後を残し亡骸をは消えなくなったらしい。
倒したあとはあった。身体も作られた物ではなく生き物で確かにあったと思う。
「誰か来たとかなかったのか?」
道満が警備に詰め寄る。
「いえ!夜中も巡回しましたが特に問題はありませんでした!それなあんな巨大な物どうすれば・・・・」
「・・・・どうしますか?晴明様」
「かき氷でも食いに行くかぁ。近くに店あったよね」
日が落ち、平等院鳳凰堂をオレンジ色に染める。
それを見ながら抹茶ぜんざいかき氷を食べる。
「久しぶりに食べると美味いなぁ」
「で、どうふるつもりでふか?」
「食べながら喋るなよ、ん~もう全然思い付かない」
「早っ!そしたら一生女ですよ?」
「道満、女ってどう?」
「どうって・・・・考えた事なかったです」
「俺もこうならなきゃ特に考えてなかったよ、男とか女とか。まぁまだ考えてる途中だけどね」
道満は黙ってかき氷を食べながら聞いてくれてる。
「とりあえず俺は俺だから」
「そう・・・・ですね」
日が落ちて暗くなる。
「さて、帰るか」
「はい。あ、そうだ今日の湯浴みですが。何かトラブったらしいので公衆浴場行きます」
「え、それ俺どうするの?」
「あ」
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