さっちゃんをメイドに
でもまだ、帰りたくない。もっとずっと、一緒にいたい。そう思うさちに、れいらんは頭を
「またいつでも来ていいよ。
梅巴とも——。
「ありがと、れいらん」
「それと、いいこと思いついたんだけどさ」
「ん、なん?」
「さっちゃん、私のメイドにならない?」
「え?」
「メイド?」
「そう、さっちゃんが私のメイドになって、私の身の回りのお世話をするの。それで、お
「えぇ……」
ちゃんと聞いてみれば、たしかにいいかもしれんけど。
「さちができるの?
「さっちゃんは、高校生でアルバイトもできるし、
「バイト……でも、うちのことあんし……」
「さっちゃんがお金を
「……でも、お母ちゃんは、ずっと
「それはキケンだね。
さちもずっと
そんなことない。お母ちゃんにはまだ、死んで欲しくない。死なれては
「……お母ちゃん」
「さっちゃん、お母さんと会ってお話したいんだけど、会わせることってできる?」
「……
「ありがとう。私もパパに相談してみる!」
急にすごいことになったもんだ……。これで、お金持ちへの道がうんと近くなった気がする。
そう思って、さちは家に帰った。さちがれいらんのメイドに!?
その日の晩。私は、お風呂上がりに、海外にいるパパとビデオ通話をする。
パソコンの向こうに、パパの顔が
『やあ、
「パパ〜!」
私のパパは、実年齢のわりに、かなり若い見た目をしている。前髪を作っているのもあるだろう。
『元気にやってる?』
「うん、私もお兄ちゃんも絶好調!」
『そりゃあよかった。それで、礼蘭、今度はどんな良いアイディアが浮かんだんだ?』
パパは
「
『メイド?』
私はパパに、そのわけやさせる予定の仕事内容、お給料に関することのあらましを説明した。お給料は、私が
『
「そんな、たいそうな気持ちじゃないよ。私はただ、——彼女の助けになりたいんだ」
最後の一言、何を言おうか、
『じゅうぶん、礼蘭は素敵だ。——分かった。向こうの
「ええっ、いいよ! 今の額でもじゅうぶんすぎるくらいだし、パパのお金に
『いいや、これは俺の個人的なプレゼントだ。自慢の娘へのな』
本当、今までもお小遣いの
「ありがとう、パパ」
お礼を言うと、パパの顔は急にムフフな表情になった。
「……どうしたの?」
『礼蘭って、異国的なものを
「えっ! どういうこと!?」
『
あー、あれかー! 気づかなくてもいいところを。
「べ、別に、あれに深い意味とかないし!! 文字のまんまだし!!」
私は
パパとの通話を切ると、そそくさとホビールームを出た。ベッドルームに
「礼蘭」
ドアのすぐそばに、お兄ちゃんがいた。
「お兄ちゃん!? 聞いてたの!?」
「うん」
「全部?」
「うん」
えーっ!! あれもこれも全部ー!!?
私は、決まり悪さのあまり、お兄ちゃんをポカポカしたくなったが、その前に両手手首を
「そんな、
「
「だって、お前が父さんと話するなんて、だいたい大きなことやろうとしてる時だからな。聞いておかないと」
「……」
まあ、でも、お兄ちゃんにも、言っておくべきだよね。
「お兄ちゃん、私ね、さっちゃんをメイドとして
お兄ちゃんは、
「まったく、礼蘭は、
「悪いかい?」
「父さんが許可してくれたんなら、俺は別にいいんだけどさ。あんまりさっちゃんを振り回しすぎるなよ」
「分かってるよ」
お兄ちゃんは私の手を離して、階段を降りていった。
私は、ベッドルームに直行した。
そして、ベッドに飛び込んだ。
胸がじんと熱い。この気持ちは、なんだろう。
さっちゃんは、ただの友達なはずなのに。
……いや、ただの友達をメイドにはしない。
……ただの友達に、キスはしない。ぎゅーと抱きしめたいとは思わない。
そもそもさっちゃんとの関係に、「友達」という言葉は合わないと思った。他人への紹介を簡単にするために、「友達」とは言うけれど。
友達でなければなんだろう。運命の糸で結ばれた関係? 神様によって、引き合わされた関係? 少なくとも、友達以上の関係だろう。じゃあ、親友? それもちがう気がする。
当てはまる言葉が見当たらない。それほど特別で
さっちゃんとの出会いは、運命的なものだった。「
私は彼女に、幸せになって欲しい。「お金持ちになりたい」という夢を叶えて、笑顔になって欲しい。
彼女が抱える苦しみ全部を、取り
ずっとそばにいたい。
ずっと一緒にいたい。
さっちゃんに、会いたい。
ともすると、
早くさっちゃんと、一緒にいたい。
その後、さっちゃんから連絡が来た。明日お母さんに、休みを取ってもらえたらしく、メイドの話もしたそうだ。絶対に、
さっちゃんの……お母さんに……。なんだか、
お兄ちゃんに、伝えよう。
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