れいらん邸のルームツアー その二
気づけばさちは、またあの真っ
「サチハ……」
そしてまた、あのおぞましい声が聞こえた。見上げると、でっかくてノッポで、
「もう、その顔見たくない」
さちは顔をしかめて、貧乏神に堂々と言った。
「カンケイナイ……。オマエガドレダケオレヲコバモウガ、オマエハオレニアラガエナイ……。ソレガヨノコトワリダ……。オマエハイッショウヲビンボウニイキ、ビンボウにシヌ……。オマエノセンゾモソウシテイキテキタ……。コレハ、デントウダ……。シュクメイダ……。アラガッテハナラナイ……。アラガウコトナドデキナイノダ……」
「そんな伝統、クソくらえだ! さちの代で終わらせてやる!」
「ムリダ……ゲンニイマ、オマエハドウナッテイル……? カネモチムスメノヘヤヲノゾイタダケデ、タオレタデハナイカ……」
ううっ……。
「それは——」
「シンソコキラッテイルモノニナロウトスルナド、ムボウキワマリナイ……。ウマレルマエカラキマッテイルサダメニアラガワオウトシナイノガ、カシコイイキカタトイウモノダ……。」
「うるさい! お前なんかが、さちの生き方を決めるな! さちは、自由に生きるんだ! 絶対、絶対、絶対にだ!」
ピシャーン!!
突然、黒闇の中に
「ナンドモイワセルナ……! シュクメイニアラガウナ……! タダシクイキロ……! ミチヲフミハズスナ……!」
「嫌だ!」
ドカァーン!!
ピシャーン!!
ドシャーン!!
「オマエガクビヲタテニフルマデ、イカズチヲナラシツヅケル!!」
嫌だ! 嫌だ!
れいらんの
それだけは……その夢だけは絶対に、
「れいらん……」
するとその時、さちのほっぺに、やわらかなものが、チュ、と少しだけ触れた。
これは……? と、ほっぺを触ってみても、何もない。——いや、違う。
目が開いた。そこには、れいらんの顔があった。優しくほほえんでいた。
「大丈夫? さっちゃん」
「ありがと、れいらん」
安堵のあまりに、れいらんに抱きつきたくなったが、さちが布団から動く前に、れいらんの方からやってきた。
さちの入っている布団に入ってきて、ぐいぐい横へ横へと押していく。さすがにさちの小さなおしりじゃ、れいらんの大きなおしりに
二人で一つの布団にこもっている。ところでさちたちは今、和室にいる。さちん家にいるようで、落ち着く。
れいらんはさらに、さちにぎゅっと
「どんな夢、見てたの?」
そんで
「忘れた」
とりあえずそう言った。ほんとは、ぼんやりと覚えているものの、れいらんに話すことじゃない。
「うなされてたよ。
れいらんの前にウソは
「れいらんが聞いて
「人の夢の話聞いて得することなんて何もないよ。それに、うなされるくらいに怖い夢をみるって、相当
ここまで優しくされたら、心をゆるめざるをえない。
さちはれいらんに、貧乏神のことを話した。
「さちん家には、家を代々守ってるっていう神がいて、それがさちの夢ん中で出てきたの。
見た目は骸骨みたいに痩せこけて、全身黒い布まとった
「ほう」
「んでその貧乏神は、ひたすらさちに、お金持ちになることは
「ふんふん」
「で、さっきまた貧乏神が現れて、さちに宿命に抗うなぁ、抗うなぁ言うてきて、しまいには
ここまでを聞いて、れいらんは叫んだ。
「こっわあ〜!!」
そんでさちに泣きついた。
「さっちゃ〜ん、ほんと、幸せになって〜。私はずっと味方だから、さっちゃんは一人じゃないよ」
初めて聞いた。その言葉。「一人じゃない」って。
さちは小さく衝撃を受けた。
それからしばらく、横になったあと、ルームツアーを再会した。
「再会して大丈夫なの?」
「大丈夫、もっとれいらんのこと知りたいし」
「そんじゃあ、再会!」
再会して最初に入る部屋は、再びトロピカルルームだ。さちは、また
さちは小さく自分を
「大丈夫! 今は自身あんし、さちなら行ける!」
これにれいらんは言った。
「
「さちにとっちゃあ、肝試しよ。……あんなおぞましい部屋、一瞬見ただけでも危ない」
「人の部屋をお
れいらんは、さちを目を
「とりあえず、中に入ろう」
「さっちゃん、目ぇ開けるよー」
パッと、れいらんの目が
「部屋の中に木……」
「ニセモノだけどね。トロピカルっぽいでしょ? バナナ食べるのに持ってこいの部屋さ!」
「まさか、バナナのためにこんな……」
「それも
「ふーん、れいらんはいろんなもん好きになんね」
「その中でも特に好きなやつだよ」
こうやってちゃんと見ると、思うてたよりも怖いところじゃない。それどころか、何となく和風とも似ていて、落ち着く。
「ね、怖くないでしょ」
「うん」
「目に優しい色ばかりだからね〜」
次に入る部屋、
中に入ると、部屋はいろんなもので
「ここは、ホビールーム。見ての通り、あらゆる趣味や遊びのものを置いてるんだ。私はアニメや漫画も好きだから、好きなアニメキャラのグッズとか、いろいろ
好きなキャラか……置物や布を見る限り、れいらんは、高身長で大人びてる感じの人と可愛い子どもが好きみたいだ。特に女性の。
「で、最後の部屋」
札には、「
中を見ると、ヨガのマットや、バランスボール、ダンベル、トランポリンなど、運動に使う道具がたくさん置かれていた。
「ここは、スポーツルーム、外に出なくても運動できるようにしたんだ。夏とか、冬とか、雨の日とかでも、好きな時に運動ができる! これで運動不足が
「そらぁ、いいね」
「さっちゃんも、運動したいときは、うちでやるといいよ」
「運動なら外でやるよ」
「
「んで、このあとどうすんの?」
ルームツアーはもう終わった。
「まずは、お昼食べようよ。ちょうどいい時間になったし」
「うん、そうする」
さちたち二人は、二階の食卓で、昼食にカップラーメンを食べた。
「んで、どうする」
「
その後、ホビールームで、ゲームをやった。今回やったのは、アクションゲーム。のん子とやったのとはちがうやつ。
れいらんに遊び方を教えてもらい、一緒に遊んだ。自由度が高いゲームで、釣りや農作業をやったり、
時間なんて、あっという間にすぎていった。
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