礼蘭の妄想

 学校に登校すると、やけにれいらんがときめいていた。

「どしたん、れいらん? やけに、楽しそうやね」

「ちょっと考え事してるんだー」

「どんな助兵衛スケベエな妄想かなー?」

 のん子も話に加わった。

「別に、助兵衛じゃないもん」

「じゃあ、どんなん考えてんの?」

 さちが尋ねると、れいらんは、決まり悪そうな、でも幸せそうな顔をした。

花日はなひ先輩のことだよ。どんなコーデでも、似合うよな〜って」

「例えば?」


 例えば、普段の先輩のコーデは、淡いピンクと白の、桜スイーツみたいな大人コーデ。それで、お昼はサンドイッチとフルーツで、何から何まで楚々そそとしていてお美しいの。

 そんな先輩を、ガラリとイメチェンしてみてはどうだろう。

 大人な女性って感じのフェミニンコーデとは、反対の位置にある、ボーイッシュコーデを着てみたら。


「先輩の場合、フツーじゃね?」


 中性的な花日先輩が、あえてメンズライクな格好をしてみても、それはそれで素敵だと思うんだ。

 例えば、ジェンダーレスなストリートコーデ。ダボダボなパーカーを着て、ダボダボなワイドパンツをいて、足にはスニーカーを履き、頭にはニット帽を被った、最近の若者コーデ。つんとクールな表情をさせれば、女子(私)の心を鷲掴みにするだろう。

 それから、甘味をゼロにした、ブラックコーヒーのようなクールコーデ。全身を暗い色味、もはやオールブラックでもいいだろう。全身を真っ黒でキッチリしたアイテム、ブーツやパンツ、ブラウスで固める。コーデはビターでかっこいいが、先輩自身のフェミニンさと桜色の髪が、にこやかなギャップを生み出して、たまらないだろう。

 あとは、そうだな……パンク系かな。社会に反骨精神を抱いているような、クレイジーな格好をした先輩もカッコ良くて美しいだろう。


「——みたいな感じかな」

「うん、とりあえず、レイラのへきはわかったなー。んで、まあまあ助兵衛じゃねいかい」

「ウソ、ちゃんと服着てるもん」

「エイチは生身だけとは限らないのなー」

 今の話、さちには全然ピンと来なかったが、この話をしているれいらんは、道化じゃないことはわかる。

 今夜書く記事のネタにでもしようか。


 ヘックシュン!

(今日は、やたら鼻がムズムズするわね。花粉症かしら?)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る