高校デビュー
来たる春。私とさっちゃんは、高校デビューを果たした。私たちが通う
校風も自由度が高く、髪型は自由で、
まあ、もちろん、自由は責任を
私は、そんな自由度MAX級の高校に通うにあたり、自分のルックスを大きく変えた。
第一に、髪を染めた。バナナの皮の色のような、黄色い髪。また、髪もぐーんと長く伸ばして、ハイポニーにしてお
服装も、学校に通う感を出したいと思い、
「学校なんてクソくらえ」なんて思っていた私が、こうも学校に行くのに本気になるなんて、どういう風の吹き回しだろうか。
さっちゃんの方は、髪型は黒髪のおかっぱヘアと変わっていないが、服装の方は、着物とセーラー服をミックスさせて、所々に
運よく、さっちゃんと同じクラスになった。教室は、大学の講義室のように、長い机と椅子が、そこまで多くはないが並べられていた。とくに、決まった席とかはないため、好きなところに座ってと言われた。「好きなところでいい」と言われると、逆に困ってしまうが、私は、一番後方の席に座り、さっちゃんは、一番前方の席に座った。
となりに座りたい気持ちは山々だが、私が前に座ってしまうと、私の高身長で後ろが見づらくなってしまうのと、さっちゃんが後ろに座ってしまうと、彼女が低身長が
私のとなりは、さっちゃんではなく、この子が来た。
「おひさだなー、レイラー」
彼女の名前は、
「ひさしぶり、のん子」
入学して初日のこの日は、オリエンテーションだけで終わった。さっちゃんにのん子を紹介しよう。
「レイラ、また背のびたよなー」
「え、そう? それよりもさ、のん子に紹介したい子がいるんだけど」
「ミーにオトコはまだ早いて」
「女の子だから……ってあれ?」
さっちゃんがいない。教室を
「……いない」
「もう、帰ったんなー?」
「え、はや」
オリエンテーションが終わってから、まださほど時間は
私は、
「あっ、レイラー!」
教室を出て、
「誰、
「私の友達だよ。さっちゃんって、和風好きな小柄な子なんだけど」
「レイラと真逆だなー」
私も、そそくさと校舎を後にする。
「あら、
「あー、先輩!」
その
「なんだ、
先輩の名前は、
「あら、のん子ちゃん? 二人ともずいぶんとイメチェンしたのね」
「ええ、大きな
「ここは自由な校風ですからなー」
私とのん子でそういうと、先輩はにっこり
「二人ともとってもお似合いよ」
お美しい先輩に
「へへへ、ありがとうございます〜」
「今度、カメラに
先輩の
「はいぃ、よろこんで〜♡」
ん? さっちゃん? ハッ!
「あ、さっちゃん!」
ついうっかり、さっちゃんを探さなきゃ!
「友達の存在忘れるとか、ひどくなー?」
「さっちゃんて、礼蘭のお友達でしょ」
「はい、そうです。せっかく同じクラスになれたし、一緒にお話とかしたいんですけど、もう、帰っちゃったみたいで……探してるんです。」
「では、また」と、先を行く。先輩は、「どうせ帰るだけだし、オレも一緒に行くわ」と同行した。あと、言っておくが、先輩の性別なんぞ、気にしたら負けだ。
校舎の外に出て、周辺を
これは、私もテンションが上がる。
「さっちゃん!」
私はその小さな背中に近づき、飛びつく気持ちで、ぎゅっと抱きしめた。
「わあ、……れいらん!?」
さっちゃんは
「つくしいっぱい生えてるね。食べ放題だ!」
「そんなんには、取らんけどね。他は、たんぽぽのお花とか、ヨモギとか」
「ヨモギ! ヨモギ団子に使えるじゃん!」
「うん、桜もね、花びらを塩漬けんして、ご飯やお汁に入れたり」
「美味しいの?」
「うん」
「あとは、春の七草」
「あ! 春の七草って、ダイコンとかカブとか……」
ぐらいしか覚えていない。
「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ 、これぞ七草」
「すごい! さっちゃん、全部覚えてるんだ」
「さちは、実際に食べてんかんね。全部じゃなんけど」
「おかゆにして食べんの?」
「うん、あとはかき
「すずな、すずしろって、自然に生えてるの?」
「さちは、スーパーで買ってるけどね」
ふうん、でも、昔の俳句にあるくらいだから、自生してるんだろうな。野生のカブと、ダイコンかぁ。
話を聞いていると、私も食べたくなってきた。
「さっちゃん、私も食べたい」
「ん……じゃあ、こんあと、一緒に食べよ。帰り、さちん家
「りょーかい」
あ、そういえば。と、うしろを振り返る。のん子と花日先輩は、私たちよりだいぶ離れたところに立っていた。
どうして来ないのだろうと、疑問に思った。私は、その場で二人に手を振って叫んだ。
「二人も来なよ!」
するとのん子がすぐに応答した。
「ミーらはいいよ! そちらさん二人でやってな!」
どうして? みんな一緒の方が楽しそうなのに。
「れいらん」
「ん? どうしたの?」
「……やっぱり、なんでもない」
急にどうしたんだろう。何でかは知らないが、今のさっちゃんは、なんだか
でも、そこに無理に
その後、十分な量を採取し、さっちゃんの手を引いて、四人で一緒に帰りの電車に乗った。電車の中は、気まずかった。さっちゃんは、私ら三人と距離を置いて座った。顔もそっぽを向いてしまい、全然こっちを向いてくれない。
「おーい、さっちゃーん」
「礼蘭にゃ、分からんだろーなー」
「え? どう言うこと?」
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