礼蘭のプリズンブレイク

 そんな私に、学校という場所は向いていない。閉鎖へいさ的で、空気を読んで、周りに合わせなくちゃいけない。とても個性なんて出しづらい。勉強だって、自分のペースで、自分の興味がある物事の勉強などできない。かたよった価値観を全員に押しつけ、それにはんした者は、徹底てってい的にたたつぶされる。まるで、どっかの宗教のようだ。

 そんなの、いたいけな子どもにすることじゃないだろうに。これによって、どれほどの子どもが苦しみ、心をこわして、若き命が失われたか。


 どうしてそんなに、命をすり減らしてまで行く必要があるのだろうか。行ったところで、楽しいことがあるわけでもない、社会に出た時に必要な知識の、何から何までを完璧に叩き込まれるというわけでもない。

 そんな目の上のタンコブに、金やダイヤよりも貴重な時間がことごとくうばわれて行くのは、とうてい許せることじゃない。

 ミニマリストの起業家なんかは、絶対に行くのをやめるだろう。

 これが会社だったら、辞めて、いくらかマシな職種に転職できるのに。学校じゃ、そんな概念がいねんなんてない。まるで、鳥かごだ。私は前世で、何か罪を犯したのだろうか。

 ……何よりも貴重な時間をドブに捨てるくらいなら、多少の面倒の方がいくらかマシかな。

 私は長々と悩んだ末、学校に行く日数を減らしてみようと決意した。


 月から金までの五日のうち、火曜と木曜を「休む日」と決めて、やってきた最初の火曜日。


 うちのパパは、今海外でお仕事中。保護者は、成人済のお兄ちゃんがいるとしても、学校への連絡は私がやろう。社会人になったら、自分で連絡するのが当たり前だ。

 出てきた先生に「休みます」と伝えればいいか。

 

 恐る恐る学校に電話を掛け、出てきたのは、同じ学年の別のクラスの先生だった。気さくな雰囲気の男の先生で、私はいくらか安堵あんどした。

「おはようございます。三年六組の天田あまた礼蘭れいらです」

 とりあえず、今日一日は欠席させていただくことと、そのむねを担任の先生に伝えて欲しいことを申した。直接、担任の先生に言わないのは、事情がある。

『どうして、学校を休むの?』

 無論、向こうにはウチが母親がいないことも、父親も仕事で家にいないこと、電話主が生徒本人であることも知っている。

 口がはばかる。体調不良とか、冠婚かんこん葬祭そうさいとか、特別な事情があるわけじゃない。私がピンピンしている上で、休む理由なんてのは、学校側からしたら休む理由にはならない。特に、あの人にとっては。

 でも、ウソをつくのも、うやむやに言うのも得策ではないだろう。

「家で勉強がしたいからです」

 家で勉強がしたいから学校を休む。言葉を見れば、単純明快な行動が、どうしてこんなにも難しいのだろう。


 何とか、一枚、壁を乗り越えた。今日は自由に時間を使える。明日になれば、もっと大きな壁が待ち受けてるだろうが、今日という貴重きちょうな資源を確保かくほできたのだから、良しとしよう。

 罪悪感は、無いと言えばウソになる。私のクラスの担任は、難しい人だ。傲慢ごうまん、自己中心的で、無神経。平気というか、悪気わるぎなく人を傷つける。無論むろん、人望は薄い。そこまで、年行っているわけでは無いが、私の年代からすれば、親世代に値する。とにかく規律きりつを守れで、少しのミスもゆるみも許さない。烈火れっかの如く怒りだす。

 例えば、清掃の時間は、だまってやるの原則だが、少しでも気を緩めておしゃべりする生徒を見つければ、呼び出して烈火れっか怒号どごうを浴びせる。

 生徒の方は、いらないお喋りはしていたものの、掃除そのものはやっていた。

 そんなに烈火のごと怒鳴どならなくてもいいじゃないかと、私は思った。

 原則に違反いはんした生徒が呼ばれて怒られている間、その生徒たちがやっていた作業は中断される。他の生徒たちにとっても、怒号が発せられる空間は居心地が悪い上に、貴重きちょうな人員をかれて、作業が進まない。先生の方が、よっぽど害悪だろうに。そこへの迷惑は考えてもいないのだ。

 そんな先生だ。体調不良での欠席にも悪い顔をする。ピンピンな上での欠席なんて、信じられないだろうな。

 はあ、気が重い。電話の先生にとっても、難しい頼みだったろう。でも、より立場が下の私が言ったところで「ふざけんな」と聞き入れてもらえないのは目に見えている。

 いつか死人が出ないといいけど。


 うつうつとした気持ちは切り替えて、貴重な時間を無駄むだにしまいと、勉強に集中した。今日の授業でやる範囲を予測して、教科書にってる内容をネットで調べて、ノートにまとめる。

 

 十六時頃になると、勉強を切り上げて、気分転換にスマホを開いた。勉強に集中するために、ノーパソ以外のスマホ、タブレットは、全て電源を落として仕舞しまっていた。

 スマホを開いたら、まず先にさっちゃんにREINのメッセージを送った。

『ヤッホーさっちゃん!』

『私今日、学校休んだんだー』

 これを送って、音楽を聞いていた。同じ曲の二周目の半ばで、返信がきた。

『どっか、体調悪いん?』

『ううん、朝から元気だよ。それでも休んだんだ。勉強する時間作りたかったから』

『そうなんかぁ』

『そうなんよぉ』

『さっちゃんは、学校はどう?』

『まあまあかな。給食たべる以外はどれもてきとー』

『勉強は得意?』

『家庭科と美術は好きだけど、あとはてきとー』

 さすが、鋼の心を持つさっちゃん。字面じずらからは想像できないが、きっとサバイバルな毎日を送っているに違いない。

『さっちゃんは強いね』

『れいらんは、平気なん? 元気休みなんかして』

『平気じゃないだろうね。明日は、波乱はらんの一日になるかも』

『でも、怒られることにビビって、我慢し続けるのは、つらいばっかりだし、時間の無駄だからさ』

『覚悟決めたんだ』

『おー、かっこいい』

『私は勇者さ』

 そこでやりとりを終えた。

 それから、少し天井をぼーっと見つめた。

 明日は戦いになるだろうか。備えてみよう。


 私はまた、机に向かってノートを開いた。新しいページの頭には「どうして学校に来なかったのか?」と真っ先に飛んでくるであろう問いを、二行分の大きい字で書き出した。

 その下に箇条書きで、自分の頭の中にある思考を書き出した。

 

 どうして学校に来なかったのか?


 ・行きたくないから

 

 結局はこれなのだ。「行きたくないから行くのをやめた」。本当だったら、明日だって行きたくない。でも、世間の風潮がそれ断固として許さない。完全に行かないのは流石にマズいだろうから、行く日数を減らすという手を取ったのだ。

「行きたくないから」の理由をその下に書き出した。


 ・学校という場所は、私には向いていない 

 ・家で一人で勉強していた方が、私には合っている

 ・学校は居心地が悪くて、ストレスがたまることばかり

 ・貴重な時間を無駄にしたくない。

 ・少しでも、自分の興味があることに時間を注ぎたい。


 ざっとこんなところだ。ホント、これが会社なら、すぐに転職している。

 そして、次の問いだ。


 高校はどうするのか?


 これに関してはアテがある。入試に筆記試験がなく、不登校にも寛容な、通信制高校に進学するのだ。校風もかなり自由で、窮屈きゅうくつな思いをすることは少なくなるだろう。

 私が心より崇拝している、二つ年上の先輩が通う通信制の高校が、すごく魅力的なのだ。

 校舎のある場所は山奥にある町だ。私の住む都市部からはだいぶ遠くにあるが、電車に長く乗っていれば、最寄り駅から程良く歩いたところに校舎がある。豊かな自然に囲まれて、運動不足も解消できるから、健康にもいい。

 何よりも、先輩曰く、その学校は学校の運営はほぼほぼ生徒が行い、生徒一人ひとりのパーソナリティを尊重し、それを培うのが、大きな教育方針だ。その教育方針はただの言葉ではないそうで、生徒を「子ども」として下に見るのではなく、「一人の人間」として尊重される。

 先輩は居心地が良いと話していた。どれだけ歳が若かろうが、見た目に違いがあろうがなかろうが、結局人間は人間なのだ。

 その高校の中学校版があれば、すぐに転校したいくらいだ。

 

 飛んでくる問いに関してはこんくらいだろうか。私はその後、最近お気に入りのファンタジー漫画や、最近読んでいなかった大好きな少年誌の漫画の好きなお話を熟読した。


 

 そしてやってきた、水曜日。覚悟を決めて、学校に向かう。本当は今日だって行きたくないが、学生の本業は学校に行くことだ。授業中は、教科書読んでいれば良いか。その場合、数学はかなりつまらないが。

 何も波風が立たずに、このまま今日という日が過ぎ去って行けば、どれほどいいことか。だがしかし、私が何をしようと、何もしていなくとも、災難というのは絶えず降りかかってくる。私がその災難に立ち向かう度胸も体力もなく、見てみぬフリをしていれば、その災難は妖怪と化して、私にいつまでもつきまとってくる。

 どうして人生というものは、こんなにも苦行なんだろうか。でも、それに負けて死んでしまうのも嫌だった。まだお別れしたくない存在だって、いっぱいあるからだ。叶えたい夢だってある。

 そんなことを悶々と抱えながら、学校に向かっていた。

 

「おい、天田! ちょっと、こっち来い!」

 案の定だ。野犬みたくえてやらぁ。向こうもやる気のようだ。私はあれの何十倍も大人な対応をしよう。大丈夫、ちゃんと備えたんだ。

 私は先生のところへ向かった。

「何でしょう」

「何でしょうじゃねぇよ! 風邪でもねぇのに、サボりやがって! 昨日、家で何やってたんだ!」

「勉強です」

「勉強したいなら、学校ですればいいだろ!」

「学校じゃあ、授業があって全く時間を取れないでしょう。私は、自分のペースで勉強したいんです」

「それなら昼休みとか、放課後にやれよ!」

「授業の時間を勉強の時間に当てれば、より多くの時間を勉強につぎ込むことができます。

正直にいうと、私には、学校の授業に、貴重な資源である時間を使う価値を見出せません。それなら、図書館で本を読んでいた方が楽しく知識を得られます」

「ふざけるな! 学校は遊びに来るところじゃねぇんだ!」

 遊びって、何がだ?

「何が、遊びなんです?」

「本なんてくだらんもの読んでる暇があるなら、受験に合格できるように努力しろよ!」

 本がくだらないだと? 本の価値が分からないとは、おろか者。

 だから視野が狭いんだ。自分が思う価値観が、この世の全てと信じて疑わない。

 本とは人類の英知だ。自分は知らない、知恵や価値観、異世界の暮らしを知ることができる。

 学校では習わない。けれど、生きていくには必要不可欠なお金のこと、億を稼ぐ富豪の思考や、習慣。労働者になって働く以外のお金の稼ぎ方、どうすれば人生を楽に、効率良く生きれるのかとか、人生を賢く楽しく生きるための知恵を身につけられる、とても価値のある道具なのだ。

 私が今、冷静でいられるのも、本から得た知恵の賜物たまものである。

「高校受験に関しては、通信制の高校を検討しています。入試に筆記試験はなく、書類選考と作文と面接のところです」

「通信制なんて、良い大学には行けねーぞ」

「……高校卒業後に関しては、はっきりとした答えはありません」

「だったら、卒業後の進路、どこを志望しても対応できるように、中学のうちから基礎をしっかり身につけておくべきだ」

「そうするにしても、考える時間が欲しいんです。本を読んでたくさん知識を身につけて、いろんな仕事の世界を知って、どの仕事につけば、自分の本領を発揮できて、会社員以上に、もっとたくさんお金をもらえるか。大学には、そもそも行くか行かないか、高卒以降は自分が興味関心を持つ物事に焦点を当てて、心のままに楽しく生きたいんです」

「甘ったれるな。そんな甘い考えで、この先、生きていけんぞ」

「いいえ、そういう気楽な考えで人生を楽しんでいる人、結構いますよ。現代にも、大昔にも」

「はあ?」

「私の父が言っていました。時間は有限で、失ってしまえば、二度と回復しない。だから、少しでも自分が有意義に感じることを優先しなさいと」

「くだらん。そんな馬鹿げたこと言う大人なんて、ろくなヤツじゃ……」


 ドン!!!


 私は先生の目先にある机に近づき、力いっぱい叩いた。

「貧乏人が、なに人の親侮辱ぶじょくしてんだよ!」

「立場をわきまえろ! 俺は、本当のことを言っただけだ。なにが悪ぃんだ!」

「黙れ。本当のことなら、なにを言っても許されると思うなよ。あと、立場をわきまえろって、一番、わきまえてない人がなに言ってんだ」

「は?」

「アンタ、教師でしょ? 教師は生徒の手本となる存在でなければならない。なのに、常日頃から人を見下して、人を傷つける言葉も平気で言って、周りの迷惑も考えず怒鳴り散らかして、自分のことをなにも理解しようともしてくれない、身勝手な人間が担任になった生徒の絶望が、アンタに分かるか?

 アンタみたいな存在が、じりじり、じりじりと人の心を追い込んで、最悪、命を奪うんだ」

 そうやって横暴な人がのうのうと勝手に生きてる裏で、その周囲の人、特に下の立場に置かれた子どもたちが、日に日に命もろとも、心をすり減らしていく。まるで削られてゆくトリュフのように。

 私は学校以外のり所が存在しているからいい。

 子どもによっては、そんなものは存在しないなんて人もいるだろう。それで両親共に、自分の敵で、味方が誰一人いないなんて状態に陥っている場合、子どもに与えられた選択肢は、バラバラトリュフの状態でいきつづけるか、命を断つかぐらい。探せば他の選択肢もあるかもしれないけれど、難しいものだ。


「私のパパは、世界を飛び回って、いろんな国の人とビジネスをやっている富豪なの。そんなパパの言葉を聞いて、実践していけば、パパのようになれること間違いないでしょ。

 もう一生行かないとは言いません。学校を休むのは火曜と木曜の週に二日だけです。いちいち連絡をいれるのは面倒なので、今ここで言っておきます」

「それではよろしくお願いします」と頭を下げて、自席へ帰る。これ以上は何も言ってこなかった。

 戦いが終わった、とホッとした。

 でも、モヤモヤは晴れなかった。学校に行かずに勉強することで、将来豊かな暮らしができる証拠なんて、どこにもない。

 でも、今の自分の気持ちをないがろにして、つぶし続けるのも良いことじゃない。私は、私の信じる道を信じ続けよう。それでいいんだ。

 そういう前向きな思いを抱いても、心の奥底には、やっぱり焦る気持ちが重く硬い、岩石のように、ドスンと居座いすわり続けている。

 

 ただし、数学だけは、欠席した。他の教科の授業なら、授業の進行を聞き流して、教科書を読むのに集中すればなんとかなるが、数学だけはそうもいかない。数学の教科書には、文章というものが無いに等しいし、教科書の内容は程々に、受験に出るような問題をひたすらかされる。

 どうやって解けばいいのかわからないなぞの問題と、ただただにらめっこするだけの、地獄のような時間がえられない。

 数学の教科書や受験問題ぐらいでしか、見たことの無い図式の計算をするよりも、確定申告の計算とか、税金関係の計算方法をただひたすら頭にめ込んだ方が、将来社会人になる上で困らない。

 ていうか、税金を治めるという、全国民がマストでやらなきゃいけない義務事が、なんであんなに複雑なの!? 義務教育を終えただけの人間には、到底出来そうに無い。


 数学を欠席したことに関して、教科担の先生からは、こころよく思われなかった。授業の最中、図書館にやってきた。

天田あまたさん、どうして授業をサボったの?」

 この先生は、比較的穏やかで、滅多に怒鳴ったりはしない。まあでも、ささいなおとがめならしょっちゅうだ。これが先生という生き物なんだろうけど。

「どうしても嫌だったからです」

 私がそう答えると、先生はため息をついた。

「嫌だからって、逃げてばっかりじゃ、この先どうするの? 嫌なことがある度に逃げ続けるの?」

「……私のお兄ちゃんは、『無理はするな』ってよく言います。お兄ちゃんの友達が、真面目で優秀な人だったんですけど、高校に入学してからは、人が変わったように無気力になったんです。

 中学の時なんかは、高校受験にむけて、二年生の冬休み明けの頃からストイックに頑張っていたので、もえ症候群しょうこうぐんってやつですね。結局高校は、中退しました。

 未来の自分を夢見るあまり、今の自分を大切にしなければ、気を病んでしまって、結局「未来の自分」なんてなれていなかったり、それ以前に自殺や過労死なんかで死んでしまえば、終わりです」

「そっかぁ。……でも、社会人になったら、多少無理をしてでも働いてお金をかせがなきゃ、良い生活は送れないよ。プリントだけでも、やってみたら?」

 げっ。プリントだけですら出来ないから、ここにいるのに。……やっぱり、私の思い描いている「自分の心のままに生きる」なんてのは、夢物語なんだろうか。

 そして、数学の授業の時間が終わり、私は教室に戻った。


「あっ、サボり魔が帰ってきた」

 胸にチクリと刺さる言葉が飛んできた。教室の手前の廊下のわきに、見知った顔の女子生徒たちがたむろっていた。

 彼女たちは皆、私がさっちゃんと出会う以前によく遊んでいた友達グループだ。以降は、勉強を理由に誘いを全部断って、学校だけの関係になったが、学校でも相手にされなくなった。以前の私は、仲間外れにされたくない思いで、全部の誘いにのっていた。彼女らのささいな頼みも全部引き受けて、グループ内じゃ立場が弱かったと思う。

 今では、誘いも頼み事も断り、常識をも無視した私が、気に入らないのだろう。

「ねえ、礼蘭れいら、なんで授業サボったの?」

 彼女たちは、私が教室へ行かせないためか、廊下を封鎖ふうさするように立ち並んだ。これじゃあ、通行の邪魔じゃまだ。

「昨日は、丸一日サボったよね?」

「……嫌だったからよ」

「はあ? そんだけで?」

「ずるくね?」

「アタシらだって嫌なのに、オマエだけ逃げるなんて、卑怯ひきょうじゃねーの?」

「……そんなに嫌なら、アンタたちだって休めばいいじゃん」

「は? ウチら今年、受験なんだけど!」

「礼蘭だって、そうじゃん! 遊んでばっかで、高校受かんの?」

「オマエの将来、終わったな」

 ……うるさい。サボる度胸も無い奴らが、威張いばりやがって。

 湧き出る怒りと共に、心は悲しみに包まれた。私はただ、今の自分を大事にしたいだけなのに……。

 何もかもが嫌になった私は、彼女らを突き破るでもなく、後ろへ後退し、階段を下った。

「はあっ? 礼蘭! どこいくの!?」

「またサボんのかよ?」

 うるさい!

 もう嫌だ。この施設内に、私を理解してくれる人なんていない。みんな、敵だらけだ。

 逃げよう。お兄ちゃんに会いたい。

 そんな一心で、私はプリズンブレイクを行い、家に帰った。

 家のカギなら、ブレザーのポケットに入れている。

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