2019.4.14 眠病 ◎
主人公の仮名:あき
ある日、学校に行ったら風邪みたいなものが流行っているらしかった。
それは「眠病」といってテレビでも注意してたやつだ。休校だ、休校だ、と生徒間で騒がしく情報共有が行われている。
とりあえず学校が休みになったのは、私としては嬉しい。症状はパタッと眠ってしまうことだってさ。普段の私たちとなんら変わりないじゃん。
周りには学校から出てきた人、校門から入ってくる人(今日は休みだよ!)、マスクをしている人らがいた。
ああ、マスクはいいかも。あったっけ。
ガサガサ鞄を漁るも出てこない。私のマスク嫌いが裏目に出たようだ。
これが感染症だとして、突然私が眠ってしまったとしたらそれは非常にもったいないことだ。休みは大切に使わないとね。
私は近くの女子高生にマスクをねだった。
「いいよ。」優しい女子高生は私にマスクを手渡す。
ありがとう。優しいねキミ。私は慣れないマスクを身につけ、校門を出た。
*
帰宅路には車がごった返していた。排気ガスが臭い。中を覗けば案の定高校生もいる。
こんな中にいたらかえって感染するんじゃない。そんなことを考えながら、私は道の端っこを歩いた。
閉め切った空間にこういうとき、なるべくはいたくないものだ。
やがて見知った顔が見えてくる。
「お〜、あき姉ちゃんじゃないすか〜」
ふ抜けた声をしたこいつは駄菓子屋の長男。
チラッと店先を覗くと、次男と三男もしっかりいた。「うっす」「ちわーっす」
私はいつものように側のベンチに腰を下ろす。
「あのね、」
アンタ達、と私は言った。中学校はどうなってるか知らないけど。
「最近インフルエンザも流行ってると思うんだけどね、それ以上に私の高校では『眠病』ってのが今流行ってるの」
「なんすかソレ」「知らね」「初めて聞いたっす」3人はやる気のなさげな返事を返しつつも、食い入るように私を見る。
「あー、えっとね、眠病ってのは突然眠ってしまう病気らしい」
「普段の俺らとなんら変わりないじゃないすか!」
私と考えていることが同じじゃないか。
「とにかく、学校に行くときは気をつけるんだよ」
「あっ、それは大丈夫っす」
次男が口を開いた。
「俺らの学校もインフルで学校閉鎖なんすよ」
だからこんな時間でものうのうと菓子を食っているわけか。
3人はそれぞれ別々の菓子を口に加えていた。
「まあ、なるべく外には出ない方がいいからね。十分気をつけなさいよ」
私はそう言い残して店を出る。三男が菓子を持った手をこちらに伸ばしてきたが、あいにくお金も持っていないため、断った。
*
おまじないのように、息止めをしたりなんだりしながら家へ帰ると、聞き慣れた音がした。
よく漫画なんかで「ブロロロロロ……」なんて言う……
「はあ!?こんなときに!?」
こんなときに外出ですか。
「おかえり、あき。出発するよ」
前置きもなくこれである。
*
「それで、どうしてホームセンターなんかに」
ドアの外側は私の予想に反した風景だった。
「父さんが」
母親はいつものポーっとした表情でそれを眺めていた。
「いや、でも」
こういうときってさ、普通はこんなところじゃなくてスーパーに行かない?備蓄の食料とか水なんかを買うために。というかそもそも外出なんてしないわよ、フツー。
「あっいや、でも」
自分の考え自体が根本からおかしいのでは?たかが風邪のような感染病が蔓延してるだけで、災害時のような思考に切り替わってしまうなんて、おかしいでしょう。
「なにモゴモゴしてるの、あんた。父さんたち先に行ったよ」
「へーい」
思考をやめて私は歩き出した。トロい母は、数秒のうちに視界の後ろに流れた。
まあ、でも。
そんなヘンテコな思考に陥るほど、今回の感染病はイレギュラーなのかもしれない。
それとも、既に私は……。
*
2023.12.11 記憶を頼りに続きを書いてみる。
その後、ホームセンターから出た際、駐車場で変な少女と出会う。背は高め。髪はピンクみたいなメルヘンな色で、巻いている。アイスを食べていたような記憶がある。宇宙人みたいだった。
家に着くと、空に変な天体が浮かんでいた。
どうも火星らしい。存在感がでかい。
サイコロの目のように、整然と空を直線に抜けていく。目の数は時間とともに大きくなっていくようだ。
そして外にいると、または見続けると、頭がおかしくなるらしいことも分かった。外で歩いている人、みんなおかしい動きをしている。踊ってるみたい。眠病もこれらの症状の1つかもね。
そう思ってたら、兄もおかしくなった。
そのとき、私は玄関にいたが、家族の制止も振り切って、外に出て仕事をしようと躍起になっている。ぺんぺーんって、兄にお尻かほっぺかを叩かれたのは、この夢だったっけ?
とにかく変な様子だった。
覚えていることは以上です。
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