第41話

光輝よりも早く生徒会メンバーになっていた2人。




そして、光輝とカヤは恋に落ちた。




ユカさんからすれば、光輝をとられたという気持ちになるんだ――。




「光輝を諦めようと思った。でも、無理だった」




そんな時に、吟さんに出会った。




「吟さんって、一体何者なんですか?」




そう聞くと、ユカさんはクスッと笑って「白夜の双子の弟よ」と言ったのだ。




双子の弟――!?




確かにそっくりだと思った。




だからついここまで着いてきてしまった。




でも、まさか――…。





「できの悪い吟は父親に見放されて裏の世界の人間になってたの。




『兄貴や妹の方が優秀だから』そう言って微笑んだその顔が、どれだけ痛々しかったか……」




思い出したように眉間にシワを寄せるユカさん。




そんな事があったなんて……。




私はなにも知らなかったんだ。




白夜先輩の事も、光輝先輩のことも。



「吟の中に恨みの種があったことは確かよ。だから、私と一緒になって邪魔なカヤをここへ閉じ込めたんだから」




え――…?




今、なんて?




ユカさんの表情が見る見るゆがみ、そして大声で笑い始めた。




「何日も、何週間も、何ヶ月も。




カヤはここで1人きりだった。いつ死んだのかもわからない。それは孤独な死だったでしょうね」




だけど、いい気味よ。




ユカさんから少しでも離れようと後ずさりをしたとたん、恐怖で足がからみその場に尻餅をついてしまった。




逃げなきゃ……逃げなきゃ。




気持ちばかりがあせり、動けない。




「あなたが現れた時、思ったわ。また同じようにすればいいって。



そうすれば光輝は今度こそ私を見てくれるって」




そこにタイミングよく、吟さんが戻ってきて計画は実行されることになった。




ユカさんの手が私に伸びる。




「嫌っ!」




振り払おうとするのに、力が出ない。




ユカさんの手にはガムテープとロープ。




しばられてしまえば、それで終わりだ。





嫌だ。




怖い。




助けて……白夜先輩!!


―白夜―


「いっ!?」




体に電気が走ったような痺れを感じて顔をゆがめた。




「どうした?」




光輝が心配そうに覗き込んでくる。




「いや、別に……」




嫌な予感が胸に渦巻く。




俺たち4人は今バスに乗っている。




目指すはあのボロアパート。




きっとあいつはあそこにいる。




明日香と一緒にいる。




「俺が、もっとしっかり見ててやれば……」




手の中に握り締めているのは、明日香が忘れていった教科書だ。




明日香はきっとこれを取りに来た時偶然俺たちの話を聞いてしまったんじゃないか?




そして勘違いした明日香は取り乱し、そのまま学校を出た……。



もっと、ちゃんと説明すればよかったんだ。




心配かけまいと黙っていたのが間違いだった。




爪がギリギリと自分の腕に食い込んでいく。




こんなもんじゃない。




カヤの苦しみも、明日香の痛みも、こんなもんじゃないんだ。




その時、光輝の手が伸びてきて俺の腕に触れた。




何も言わないが、その目は『お前の中のカヤまで傷つけるな』と言っている。




あぁ……。




そうだな。




俺が痛ければ、カヤも痛いんだよな?




まだ、俺の中にいるって思っていいんだよな――?


☆☆☆


「離して! 嫌だ!」




ユカさんの手からジタバタと逃げ惑う。




優しかったユカさんの笑顔が今は悪魔のように見える。




逃げ惑う生贄を負う鬼のようだ。





小さな部屋の中を這うようにして玄関へと向かった、その時、ユカさんの手が私の足首を掴んだのだ。




「いやっ!!」




強烈な恐怖が体中を襲い、無我夢中で足をばたつかせる。




その瞬間……。




ガチャッと音がしてドアのカギが開いたのだ。




その音に、ユカさんの動きが止まる。




私は咄嗟にユカさんから離れてドアをジッと見つめた。




そして、入ってきたのは――。




吟さんと、その後に続く見知らぬ5人の男たち――。




……5……人?




思い出すのは覆面の男たち。




まさか、嘘でしょ……?



ジリジリとお尻をついたまま後ずさりする私に、男の1人がニヤリと笑いかけた。




「久しぶりだな。あの時はもうちょっとだったのに邪魔が入って悪かったな」




「……っ!」




やっぱりあいつらだ!




どうして、なんでこんな所にいるの!?




「悪いね。こいつらと俺、元々通じてたんだよ。



昨日の内にこいつらから恋愛野獣会のせいで女逃がされたって話し聞いてたんだよね。



まさか、その女が君だったなんて、こんな偶然ないよね」




クスクスッと笑う吟さん。




サッと血の気が引いていくのがわかった。




事態を理解したユカさんは不適な笑みとガムテープとロープを残して部屋を出て行ってしまう。




うそ……。




こんなの嘘よ……。




「死ぬ前のボランティアだと思ってよ、ね?」




ユカさんが出て行った扉を閉めて、吟さんがその扉によりかかる。




「恋愛野獣会の奴らこいつが処女だって言ってたけど、マジ?」




1人がそう言いながら私のスカートをめくり上げる。



「離して!!」




そう叫んだのもつかの間、ユカさんが置いていったガムテープで口を塞がれて声がでなくなる。




喉の奥でくぐもった悲鳴を上げるが、外まで聞こえるハズもない。




男の体重がのしかかってきて、呼吸が苦しくなる。




なにをされているのか理解できなくて、意識が遠のいていく……。




『頑張って! 大丈夫だから、しっかりして!』




耳元で、女の子のそんな声が響く。




誰……?




見えるのは口元をだらしなく開けた男の顔だけ。




ブラを捲し上げられて、スースーする。




『もうすぐ来るわ。だから頑張るのよ! お兄ちゃんが、もうすぐ来るから!』




……カヤ……さん……?




カヤさん?




意識がハッキリとする。




口は塞がれているが、全く抵抗しない私に男たちは油断しているのがわかった。




下着はもう脱がされていて、今まさにという瞬間。





私は男のお腹を思いっきり蹴り飛ばしたんだ。

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