第27話

まるで自分の恥部をさらけ出している気分になる。




と、その時だった。




後方の扉が開き他のメンバーが入ってきた。




「う……わっ」




白いスーツの白夜先輩。




黒いスーツの光輝先輩。




青いスーツの青葉先輩。




赤いスーツの優人先輩。



4人が並んで立つと目のやり場に困ってしまうほどにきらびやかだ。




「明日香ちゃん、ドレス可愛いよ」




「あ、青葉先輩こそ……」




青いスーツに白いシャツがよく似合う。




近づいてバラに触れられると、思わず赤面。




鼓動がはやくなる。




みんな、かっこよすぎ!



「なんかホストみてぇ」




そうぼやいている白夜先輩は、4人のうちの誰よりもキラキラ輝いてて……ポーッと見ほれてしまいそうになる自分を、慌てて引き戻す。




そうこうしている内にモデルさんの撮影が終わり、私たちの番になる。




この撮影所も桜ヶ丘学園関係者のもので、今日は特別に撮ってもらうことになったのだ。




「よろしくお願いします」




カメラマンさんや関係者さんたちに丁寧にお辞儀をする先輩たち。



「お、お願いします!」




私はカチカチに緊張してしまって危うくコンセントに足をひっかけるところだった。




中央の椅子に1人で座らされて、先輩たちは私を取り囲むように立った




まるでお姫様みたいな自分の立場に今更ながら気づき、「これ、大丈夫なんですか?」と、左後ろに立ってる優人先輩を見た。




「全然OK。明日香可愛いから」




ニコッと微笑むその笑顔に、再び赤面。




どうやらあまり話しかけない方がいいみたい。




これ以上顔が赤くなったら撮影なんてできないもんね。



「今日は生徒会のために時間空けたんだから、最高のもの撮らせてもらうからね」




と、カメラマンさんも意気込んでいる。




ちゃ、ちゃんとしなきゃ。




「ちょっと、女の子……明日香ちゃんだっけ? 表情固いよ」




「ご、ごめんなさい」




ニコッと口角を上げてみる……。




「笑顔が不自然かなぁ。自然に自然に、リラックスして」




リラックスって……こんな状態じゃできないよ!



もはや自分の普段の笑顔がどんなものだったのか思い出せる状態ではない。




右の頬だけ上げてみて「何か企んでるの?」と言われたり、キュッと眉間にシワを寄せて「怒らない怒らない」と笑われてしまう。




「ふぅ……ちょっと休憩しようか」




最終的には呆れ顔とため息。




「すみませんでした……」




ここまで足を引っ張るなんて我ながら情けなくて涙が出そうになる。




関係者の方はみんな優しくて「最初は誰でも緊張するから」と言ってくれたけど、気分が晴れることはなかった。



そして、その休憩時間もあっという間に終わってしまう。




「お願いします」




さっきよりも元気のない声でそう言い、カメラマンさんの横を抜ける。




と、その時だった。




「コンセント気をつけろよ? お前いっつも引っかかってコンセント引き抜くんだから」




と、白夜先輩が大きな声で言ったのだ。




その場にいた人たちが「引き抜くってどれだけの力で歩いてんの」と、笑い始める。




「うっ……」



事実だから反論できない私は、かぁぁっと一気にユデダコ状態だ。




なにもこんな場面でバラすことないじゃない!?




赤くなったまま椅子に座り、カメラを見る。




右隣に立っている光輝先輩がまだクスクス笑ってて、左隣に立っている白夜先輩は知らん顔でそっぽを向いている。




「大丈夫だよ、ドジっ子って可愛いから」




「そうそう。明日香ちゃんの場合天然ドジって感じ」




耳元でそう言ったのは優人先輩と青葉先輩だ。



ってうか、天然ドジってなにそれ?




「そんな言葉聞いたことない」




ボソッと反論すると、後ろ2人は声を上げて笑い始めた。




「天然もののドジなんか救いようがねぇ」




フッと笑みをこぼして呟く白夜先輩。




救いようがない!?




なにそれ、なんでそんな事まで言っちゃうかな!?



「確かに、天然のドジは直せなさそうだ」




光輝先輩まで!




「ちょっと、さっきから黙って聞いてれば――!」




思わず立ち上がったその瞬間――。




「え……?」




私の首にフワリと回る優人先輩の手。





「ほら、笑って」




青葉先輩の言葉。



カシャッ!




フラッシュがたかれて「お疲れ様、いい絵が取れたよ」と、満足そうなカメラマンさんの笑顔。




「お世話になりました」




「今日のご飯なにかなぁ」




「優人、少しは食べ物から離れろ」




大きく伸びをしながらゾロゾロと出口へ向かう先輩たち。




へ……?




今のでOKだったの?



1人でポツンとその場に取り残されていると……ドアに手をかけた白夜先輩が振り返った。




「いい笑顔、できてたじゃん」




「えっ……」




カッと、顔が熱くなる。




「早く着替えろよ。置いて帰るぞ」




「えっあ、待って……!」




慌てて後を追いかけたのだった。

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