第7話

突然冷たい態度になる先輩。




「そんな……」




ギュッと胸が締め付けられる。




嫌なら出て行けばいい。




それは、そうだけど……。



そんな言い方しなくってもいいじゃない。




そう思ったときだった。




寮の扉が大きく開き、誰かが戻ってきた事を知らせた。




「お帰り、白夜」




青葉先輩の視線が私の頭上を通り越して、入ってきた白夜先輩へ注がれる。




キラキラと光る銀髪が、シャンデリアの明かりでまぶしく光る。



「ただいま」




白夜先輩は青葉先輩へ向けてそう言い、私の方をチラリと見て、そのまま階段を上がって行ってしまった。




なに、あれ。




カッコイイけど、キラキラしてるけど、目があったんだからなにか言えばいいじゃない!!




『お帰りなさい』




と言いかけた口を閉じて、私はぶぅっと頬を膨らませる。



そんな私を見て、青葉先輩は何かを思いついたようにニッコリと笑った。




「まぁ、とりあえずここで生活してみなよ。みんな良いヤツだし、無理矢理君をどうこうしようなんて考えてないから」




「え?」




さっきとは打って変わっての態度に、私はキョトンとする。




けれど青葉先輩はそんな事も気に止めず、私の手を再び握り、歩き出した。




そして、連れられてきた先は二階にある一番奥の部屋だった。



と言っても、一階と二階の間に廊下以外の天井はないから、二階の廊下から玄関が見下ろせる。




一番奥というのは、階段から一番遠い場所。




真下には浴場が位置する部屋だった。




「明日香ちゃんの部屋はここ。



ちなみに、俺の部屋は真反対だから、なにかあったら内線で電話してくれた方が早いかも」



そう言って、青葉先輩は食堂の真上に位置する部屋を指差した。




「わかりました」




渋々頷き、深呼吸をする。




濃い茶色の木目調のドア。




ノブは金色で丸い取っ手部分にはなにかの絵が彫られている。



「じゃ、頑張ってね」




楽しそうに手を振って、青葉先輩は自分の部屋へと入ってしまった。




頑張ってね……?




その言葉の意味が引っかかったけれど、とにかく部屋に入ることにした。



カチャッと音がして、ソロリソロリと扉を開ける。




「わぁ……綺麗」




部屋に入ると、淡いピンク色のフカフカ絨毯が目に入る。




その上には壁と同じ濃い茶色をした大きなテーブル。




足の部分が外へ向けてクルンと丸く削られているのがオシャレ。




それから、白い2人かけのソファ。




黒いテレビ台に置かれた大きなテレビ。




「すごいすごいすごぉい」




私だって裕福な家庭で暮らしてきたワケだけど、こうオシャレな部屋は初めてだった。




なんていうか、うちの親は色々と好きなものがありすぎて、統一感がない部屋だったんだ。



嬉しくなってソファに腰をかけ、テーブルに足を投げ出してテレビをつける。




お嬢様に見えなくてもいい。




今日から私がこの部屋のご主人だもの。




好きに使っていいわよね。




鼻歌交じりにそんな事を考えていると――。



入って右手にあるドアが音を立てて開いたのだ。




「うるさい」




そう言いながら出てきたのは――キラキラの銀髪頭。




「びゃっ!?」




驚いて数センチソファの上で飛び跳ねてしまった。



「白夜……先輩!?」




白夜先輩は肩にタオルをかけ、白いTシャツにハーフパンツという姿だった。




シャワーから出てきたようだ。




「あ……の……?」




「なんだよ、居候」




「ほえ……?」




いそうろう……?




その言葉の意味が理解できなくて、私の頭上にはハテナマークが浮かぶ。




「突然人の部屋に住む事になったんだ。居候だろうが」

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