第6話
「青葉先輩……?」
「ほら、一緒に帰ろう」
「え?」
教室に入ってきて、私の荷物をヒョイッと持ってしまう先輩。
「一緒にって、先輩家はどちらですか?」
慌てて後ろをついて歩きながら、そう聞く。
すると先輩は楽しそうに笑って、「生徒会の人間は寮があるんだよ。知らなかった?」と聞いてきたのだ。
寮……!?
「ま、待ってください! 私がお金がなくてこの学校も辞めるって知ってますよね!?」
「あぁ、知ってるよ」
「学費でも無理なのに、寮なんて入れません!!」
これ以上出費を増やせば、今度はオジ様のベッドの相手までさせられてしまう!
「明日香ちゃん、俺は『辞めなくてすむ』って言わなかったっけ?」
「え……?」
「生徒会はね、生徒の生活環境をよりよくするためにあるんだ。
その為には、まず生徒会のメンバーの生活を改善してく事が先。
つまりね、生徒会の一員である君がお金がないと言って、生活がままならないんじゃ活動はできない」
「はぁ……」
言っていることがわかるようで、わからない。
「ま、単純に言えば生徒会に入れば学費免除に寮もタダってこと」
「へ……?」
思わず、キョトンッとしてしまう私。
「タダ……ですか?」
「その通り」
大きく頷く青葉先輩に、顔が徐々ににやけていく私。
それに、学費免除ってことは、学校を辞めなくてもいいかもしれない!!
「さ、理解したところで、行くよ?」
「はいっ!!!」
私は大きく頷いて、先輩の後をついていったのだった――。
連れてこられた場所は、学校の裏手から出てすぐの場所にある大きなビルだった。
ビルといっても冷たい印象ではなく、薄いクリーム色の壁で可愛い出窓がある。
「寮ってここだったんだ」
学校に寮があることは知っていたけれど、実際に来たのはこれがはじめてだった。
「さぁ、入って」
木目調のドアを開けて、青葉さんが私を促す。
「ありがとうございます」
一礼して、中へ入る。
入ってすぐは大きな踊り場になっていて、その中央には二階へと続く階段がある。
そして、踊り場の右手には食堂と書かれた両開きの扉。
左手には浴場と書かれた両開きの扉がある。
さすがお金持ち学校。
普通の学校の寮とは格が違う。
こんな場所にタダで暮らせるなんて、なんてラッキーなんだろう。
なんて考えて、思わず顔がにやける。
「さ、部屋はこっち」
さっきお別れしたハズの青葉先輩に手を引かれて、危うく転びそうになる。
「あ、あの!」
「なに?」
「案内、ありがとうございました! 後はもう1人で平気ですから」
だから、青葉先輩は男子寮へ戻ってください。
その言葉を遮るように、青葉先輩は振り向いた。
「なに言ってんの?」
「へ? ここって女子寮……ですよね?」
二階までふき抜けの天井には綺麗なシャンデリア。
上へと続く大きな階段の両端には、女神みたいに美しい女性の銅像。
「違うよ」
「へ?」
「ここは生徒会の寮。生徒会のメンバーは男子も女子も関係なく、ここに入ることになってるんだ」
え……えぇぇぇ!?
ギョッと目を見開いて青葉先輩を見つめる。
とても嘘をついているようには見えない、澄んだ瞳。
でも、それって、つまり……。
青葉先輩を入れた4人の男子と一つ屋根の下――!?
あ、ありえない!!
途端に顔がカッと熱くなるのがわかる。
「そんな、無理です」
「無理って、どうして?」
「どうしてって……私、女です!」
ドキドキと心臓がうるさくなる。
学校を続けられる事も、高級ホテルのような寮に暮らせることも嬉しい。
でも、それとこれとは話しは別だ。
彼氏いない歴17年のこの私が、突然4人の男と一緒に暮らすなんて、無理に決まってる!!
ブンブンと首をふり、青葉先輩につかまれた手を振り解く。
手が離れた瞬間、青葉先輩がスッと目を細めた。
「あっそう。じゃぁ出てけば」
「え……?」
「嫌なんだろ? じゃぁ出て行けばいい。 書記係りもしなくていい」
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