第3話 魔物のお医者さん
レイリーがウサウサにモテるようになったことに興味を持ったジャングは、一緒に採集に出かけることにした。
レイリーが歩くと、うさぱんとはなうさがついてくる。
(結局、レイリーははなうさを飼うことにした。)
そして野原で採集をしていると、どこからともなくウサウサが集まり始めた。
お昼を食べていると、ひざに乗ったり体にまで登ってくる。
試しにレイリーが横になってみると、顔以外がウサウサに覆われてしまった。
「幸せだ…。もう死んでもいい。」
いつの間にかレイリーはウサウサの虜になっていた。
のどかな時間を過ごしていると、はなうさがジャングの周りをウロウロしていた。
気になって、はなうさの後をついて行くと、崖に切れ目があり、がんばれば中に入れそうな狭い洞窟があった。
はなうさが入っていくので着いていくと、そこに小さな霊薬の泉があった。
「すごい質の良い霊薬だ…!」
はなうさからのお礼だろうか。
ジャングは瓶に霊薬を汲んだ。
「この霊薬でお前の鼻を治す薬を作ってやるからな。」
はなうさはまた鼻をひくひくさせていた。
――
その日から、毎日レイリーと出かけることにした。
段々に、ウサウサ以外の魔物も集まって来るようになった。
霊薬で作った薬は、魔物たちの治療に役立った。
はなうさの鼻は治り、羽毛が抜けてしまう鳥型の魔物も美しい羽が生えるようになった。
おそらく腎臓が弱い猫型の魔物も、霊薬を飲んでいるうちに元気に走り回るようになった。
ある日は、足を怪我した小さい恐竜型の魔物に添木をした。
すると翌日、足を無くした別の恐竜型の魔物が来た。
ジャングは家に帰ってから、残っていた素材でその魔物に義足を作った。
はめてあげるとなかなかに良い出来で、ジャングは今までにない満足感を味わっていた。
魔物はおそろしい存在で倒すもの。
倒したら素材にするもの。
そういう関係が変わり、あたかも自分が魔物のお医者さんになったような気がした。
魔物は治療を受けると、何らかのお礼をしてくれた。
珍しい魔鉱石の場所に案内してくれたり、貴重な羽や鱗をくれたり。
自分たちの卵を差し出してくることもあった。
ジャングはそれらを少しずつ利用して、魔道具に生かした。
特に、”魔除け”の魔道具の効果がより高くなった。
「最近のお前の魔道具、本当にいいよな。この魔除けのお守りつけてたら、すぐ近くにいたドラゴンが俺を無視して行ったんだ。まるで、俺自身が魔物になって、あっちの仲間になったみたいだったよ。」
レイリーはそう言いながら、ウサウサへマッサージしている。マッサージ待ちのウサウサの行列ができていた。
「戦いが苦手な人や戦いたくないときは、本当におすすめだね。魔物だってむやみに怪我はしたくないだろうから。」
ジャングには馬型の魔物がなつき、荷物運びを手伝わせていた。
この魔物は、戦闘で瀕死だったが、斬られた傷を縫い、霊薬を飲ませて治療をしたところ歩けるようになったのだ。
魔物たちの日常、体の変化を感じながら、魔物たちと時を過ごしていると毎日がより穏やかになっていった。
二人は狩りをしなくなり、魔道具作りはアクセサリーやインテリア作りに変わっていった。
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