無題

イエスあいこす

無題

俺には分からないことだらけだ。きっと誰しも、俺と同じようにわからないことだらけだ。

俺は小説家になるのが夢だ。故に、一つでも多くのことを分かろうとしたし、それらを活かして作品を作ろうとした。

その中でも、特に俺は『死』にフォーカスした作品を多く作っていた。理由は分からないけれど、自分の人生観の影響が強いんだと思う。俺の人生観は時に冷淡とさえ思えるほど刹那的で、小説を通してその美しい瞬間瞬間を写し出したかったからだ。

そんな俺にとって、死とはいずれ訪れる最後の刹那であり、人生とは常にそれに備えて一瞬一瞬を満足いくように彩るものだった。

その価値観が今日、唐突に揺らいだ。

バイトの休憩中、届いた電話に応答した。信じられなかった。駆けつけて事実を確認した後の今でも、未だに信じられない。

具体的に言うと、友人が急逝した。

本人には絶対言わなかったことだが、その友人は俺の青春の大きい1ピースであり、その他の小さなピースには彼と作ったものも多い。

そんな野郎が最後に俺に残した記憶のピースは、初めて触れた遺体の冷たさだった。

ドッキリ大成功というプラカードはいつ出されるのか。出されたその時は半殺しにしてやろう。そう考えていたのに、ご遺族の一挙一動が、言葉以上に事実と感情を物語っていた。当然俺も事実を理解する。

その瞬間、俺にとって死とは恐るべきものになった。

つい先日下らない笑い話をしたあいつが、夜を明かせば冷たくなっていたこの事実は、俺の認識を大きく変えるには十分だった。

多分、この文章は上手くまとまらないと思う。物書きの端くれとして失格だとは思うが、小説としての体を成せるかは分からない。

俺には死というものが分からない。そんな人間が人生の云々を論じて良いのかも分からない。

けれど今の俺にとってそんなことはどうでも良い。そんな小難しい話は全て抜きにして、俺はただ一つの言葉を、俺なりの形で彼に捧げたいだけなのだ。

俺たちが当たり前に生きるこの刹那を、生きていない彼に。

夢を叶えられなかった彼に。

旅行へ行く約束さえも、果たせなかった彼に。

俺に、真に命の尊さを教えてくれた彼に。

最高の親友であった彼に。

届けば良い。届かなくても良い。

『ありがとう』

そう一言、捧げたいだけなのだ。


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無題 イエスあいこす @yesiqos

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