第21話 私はあなたの恋人になりたかった、妹です。
現実だとは思えなかった。
今、笠原
顔だけは知っている、クラスメートの女の子。
その子が裸になって、先輩男子の身体を触ったり、触られたり、なめたり、なめられたり。
それを4~5人の上級生の男子がにやにやして眺めている。
聞くに堪えない、唾液と体液が立てる水音を聞いてしまうと鳥肌が立つ。
両手で耳をさらにつよくふさぐ。
部屋の中には甘い香りの煙が充満し、それを吸ってしまった
夢だ。
きっと夢だ。
私は悪い夢を見ているんだ。
目をつむり、耳をふさぐ。
でも、でも手で耳をふさいだ程度じゃ全然音を遮断できなくて、肉と肉が当たる音、粘膜と粘膜がこすれる音、そして汚らしい男と女のうめき声が聞こえてきて――。
「ひひひ、よくやるぜ」
「あいつのでけーからな。最初血がでたよな」
聞きたくない聞きたくない聞きたくない。
耳をふさいでいる手を引っ張られて外され、耳もとで言われた。
「おい、宗助と里香が来たら次はお前だからな」
同時に、
「うっ!」
「いやぁっ」
男女の声が聞こえ、そして甘い煙の臭いの中に漂ってくるいやな臭気。
目を力の限りぎゅっとつむる。
つかまれた腕をふりはらってまた耳をふさぐ。
――次って、なに?
次……次?
次に、私が、なにをさせられるの?
やだ。
やだよ。
お兄ちゃん……。
お兄ちゃん!
私は……。
私は。
どんなに脅されても、絶対に自分から身体を動かすことはしない、と決めた。
もうこうなったら抵抗なんてできない。逃げ出すなんて絶対に無理だ。損得でいったら協力的にして早く済ませてもらった方がいいのかもしれない。
いや、間違いなくそうだ。
でも、損得じゃない。
私は、私は……。
お兄ちゃん……。
お兄ちゃんのために綺麗な身体は残せなくても、綺麗な心は残せるかもしれない。
だから、どんなに脅されても殴られても自分からはなにもしてやらない。
私の身体を使うなら勝手に使えばいいけど、”私自身”は絶対に渡さないから。
お兄ちゃん。
そしてついに、その時がやってきた。
「お、宗助、来たな」
「おお、お? こいつ、あの一年か。うまいことやったな、偉いぞ。ははは、もうセックスしてたんか、お前も好きだな美幸」
宗助は自分が持っていた、火のついた大麻のジョイントを、全裸でベッドに横たわっている美幸の口にくわえさせた。
部屋の中の煙がさらに濃くなる。
「里香は?」
「まだ学校だよ、ちょっと遅くなるってさ。動画撮っておいてくれれば先にやっててもいいっつってたからさ。やろうぜ」
そして三脚にセットされるスマホ。
耳もとでささやく宗助。
「おい、一年。こないだはよくあれだけ馬鹿にしてくれたなあ。これからお前を犯す。まだ人が来るからな、十人はいるぞ、一人三回はノルマだ。今日は深夜まで帰れないと思え、腹の中を俺たちのでタプタプにしていけよ、大丈夫だよ、ハッパすってりゃ痛くも怖くもないさ。ただし、ケツの穴のしわの一本一本まで撮影させてもらうからな。明日からはお前の人生は変わるんだ。良かったな。心配するな、ハッパとセックスで頭がどうかなっちゃうくらい気持ちいいぜ」
――お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。
いつもお兄ちゃんが守っていてくれた私はこんなことになっちゃったけど。
でも、それでも、ずっと私の事、大切に思ってくれるかな?
こんなやつらにめちゃくちゃにされたらもうお兄ちゃんの彼女にはなれないよね。
でも、それでもお兄ちゃんが守ってくれるような、大切な人でいられるかな……。
ごつごつした手が、
そしてスカートの中にも手が入り込んできて――。
心を、閉じろ。
体と心を切り離して、心を閉じるんだ。
閉じこもれ。
犯すなら犯せ、それは私じゃなくて抜け殻だ。
口の中に何かを押し込まれた。
大麻をまぜこんだグミだ。
「おい、あれは使うか?」
「Sか? あれ高いからなー」
「でもあれを使えば頭の中までこいつおれらのいいなりになるぜ」
「よし、やるか」
お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
私はあなたの恋人になりたかった、妹です。
妹だから、せめてずっとお兄ちゃんではいてね。
そして舞亜瑠が完全に意識をオフにしようとしたとき。
部屋全体を揺るがすほどの衝撃とともに、部屋の大きな窓が割れた。
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