第16話 こんちゃーす!
「うああああ……ええ……この人だったの……恥ずかしー!」
「あの! こんちゃーす!
ぺこっと頭を下げた。
黒髪でさらさらのショートカット、
でもかなり短めのスカートから伸びる足は、びっくりするほど白い肌。
そちらに視線を吸い込まれそうになるけど、そういうことをするとあとで
一見してこりゃモテそうだな、と思った。舞亜瑠と二人で並んでいるところを見ると、なかなかの美少女コンビだ。
「お、おう、さっき会ったな……」
「あのーさっきの記憶は消してもらえませんか? あれは
「寝坊じゃないよ、ちょっとメイクに時間がかかっただけ! 遅れたのはごめん」
「うわー、これが
っていうか。
「今日友達と一緒だったんか?」
「うん、そうなの! えっへっへっへー、
「そうなんすよ。
「遅れたのはごめん! でも見られたのがうちのおに……じゃない、あっぶな、えっと先輩でよかったよ、もう知り合いだから恥ずかしくないね!」
うーん、知り合いでも恥ずかしいもんは恥ずかしいと思うが……?
「で、紹介します!
大仰に手のひらをまっすぐ武士郎に伸ばして元気に言う
「お、おう、よろしくな」
「ちゃっす。舞亜瑠ちゃんの彼氏さんどんな人かなーと思って。彼女にかわいいとかストレートに言う人なんすね、いいすねいいすね。私、
「いや待て、俺たちは別に彼氏彼女とかじゃないぞ、俺たちは――」
言いかけて、待てよ、
「おい、まあ……笠原」
「はーい」
と返事する。
「えっと、この
武士郎は
「えっへっへー、
うーん、なるほど、嘘は言ってないな、嘘は。
ただし、重要な事実は言ってないぞ、もともと俺たち一緒に暮らしてた兄妹だからなー。
「ふーん、なるほどねー。園城寺って結構遠いとこなのに、こっちで一緒の高校に入るとか奇跡じゃん。舞亜瑠ちゃん、中学三年生の時に私と同じ中学に転校してきたんだもんね。そっか、山本センパイかあ。山本だと、じゃあ舞亜瑠ちゃんと同じ……」
といいかけて、
「あ、ごめん」
と言った。
「いいのいいの、気にしないで、えへへ」
離婚のせいで、
いや武士郎にとっても
じゃあこいつ、
言われてみれば、”サナエちゃん”って名前はそういや今までも何度か
武士郎と
通学できるほどの距離ではないし、まさか中学生を一人暮らしさせるわけにもいかないから、
そしてそのあいだ、自分に血のつながりのない兄がいる、ってことは同級生には言ってないようだった。
「そうなの! 山本先輩とこの高校で一緒になれたのは奇跡なんだよ!」
まったくの他人だったらそりゃすごい確率だけど、入学したときは兄妹だったしなあ。
「じゃあ先輩! 先輩のおごりでごはんですよ!」
「……まあ、いいけど……」
「あ、どもっす。ごちっす」
おごりと言っても、
父親としては元妻の動向が気になるらしく、
武士郎は曲がったことが嫌いな性格なのでそれを悪用してこづかい稼ぎにするってことは思いもしないのだったけど。
店に入ったあと、メニューを眺めながら
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