第13話 うちの妹はなー、こんなにかわいくはないぞー
あのあと、ケーキショップに行ったがそこもすごい行列だった。
武士郎はほかの店に行こう、といったけど、「絶対食べたい!」という
甘いものを食べてニッコニコに喜ぶ妹の顔を見るのもなんかよかったし。
ただ、それでクタクタになってしまったので、配信は翌日ということにした。
そして今日。
舞亜瑠が今は自分の家じゃなくなった武士郎の自宅に、
「おじゃましまーす」
とかいってやってくる。
父親も舞亜瑠がいつも通り「パパ」と呼ぶとデレデレになって小遣いを渡していた。
「パパが元パパになったら前より優しくなった」
とか言って喜んでいるし。
さて、配信だ。
「ちゃぷちゃぷー! 今日もホラゲー配信するよー」
「はいどうもー」
〈ここ数日配信してなかったな〉
〈みずほちゃんも水男も配信しなかったからほんの少しだけ心配してた〉
〈兄ちゃんもちゃぷちゃぷって言え〉
「絶対言わない」
今日は久しぶりにホラゲー実況だ。
二人ならんで一つの画面に向かって実況する。
カメラは一つしかないので、動くのは水面みずほのアバターだけで、水男のアバターの方は静止画になっている。
武士郎の部屋のデスクは勉強用なので、PCはローテーブルにあり、座って配信している。
今日は隣同士で並んで配信するわけだ。
肩と肩が触れ合う距離、
シャツ越しに体温が伝わってくる。
まあ妹だし。うん。妹の笠原だ。うん。
「えへへへー! 実は今日はお兄ちゃんとデートに行ってきましたー! ゴギラ見てきたよー! 感動してちょっと泣いちゃった!」
「まあ、よかったよな。あっという間に二時間たっちゃったよ」
〈兄妹でデートか〉
〈ほほえましいな〉
〈俺もみずほちゃんとデートしたい〉
〈兄ちゃんがうらやましい、妬ましい〉
〈なんか食った?〉
「ファミレスで月見ハンバーグ食べたよ! それよりゴギラがさー!」
「まーな、あれはよかったな。すげえ迫力だった」
〈へー俺も見に行こうかな〉
〈ところでみずほちゃん、動きおかしくない?〉
「ん? 動き? あ! ほんとだ、あは、あははははは、カ、カメラがお兄ちゃんを認識してる、あはははは! みなさん、今動いているのは私のアバターを着たお兄ちゃんです!!」
〈草〉
〈草〉
〈俺らは兄ちゃんの姿を一生懸命見てたのか……〉
〈今日の兄ちゃんかわいいじゃないか〉
「うるせえ。あのですね、みなさん俺が一人で麻雀配信とかやると、アバター邪魔とかいうのやめません?」
〈むしろなんで邪魔じゃないと思ったのかが謎〉
そんな風にコメ欄のリスナーとじゃれあいながら配信を続ける。
「よし、ところで今日もホラゲーやっていこうぜ」
「そうそう、こないだの続きからね!」
そして始まるホラーゲーム。
「ぎゃーーっ! 女の子の幽霊! 怖い怖い! でもかわいい! かわいいけど怖いーーーっ」
ホラーゲーム配信が一区切りついたらまた雑談タイム。
〈そういや、今日みずほちゃんそっくりの悲鳴の子の動画がバズってた〉
「えー、なになにー? 見たいー!」
貼られたurlをクリックすると、出てきたのはtaktokの短い動画。
「あ、これ……」
武士郎と舞亜瑠は顔を見合わせる。
そこに登場した人物は、紛れもなく舞亜瑠本人。
あのパントマイマーの女性があげた短い動画が、yootubeのショート動画とTAKTOK,それにZ(旧Kwitter)でとんでもないバズり方をしていたのだった。
動画のタイトルは、【美少女すぎる美少女、突然動いた騎士にビビる】。
その動画は
その動画についたコメントはほとんどが
:二千年に一度の逸材だろこれ
:十代くらいだよな? かわいすぎるだろ
:いい笑顔で笑っていて見てるこっちもほっこりする
:悲鳴の上げ方がすごい
:かわええー! 芸能人の仕込みじゃないのこれ?
:悲鳴だけ何度もリピートして聞いちゃった
:かわいい
:やばいくらいかわいい
:これ絶対やらせだって! 芸能プロダクションがステマしてるんだよ。かわいすぎるもん
そして武士郎たちの配信のコメント欄も、
〈これすごいかわいいな〉
〈この子やばい、かわいい。あと声がみずほちゃんに似てるよね〉
〈これみずほちゃん本人? 悲鳴のあげかたとかそっくり〉
「あはは、違うよー! そんなに似てるー?」
まさか認めるわけにもいかないので、武士郎もきちんと否定しておいてやる。
「まあ外見は似てないな、この動画の子かわいいからな」
「え?」
「うん、すっげえかわいいじゃん。うちの妹はなー、こんなにかわいくはないぞー」
「ひどーい、まーそーなんだけどー」
そう言いながらぐいぐい力を入れて武士郎にもたれかかってくる
その表情は嬉しそう。
いやいや、ちゃんとしっかり否定しとけよ、こんなんで顔ばれとかやばいぞ。
この短い動画は、わずか一日で数百万再生をたたき出した。
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