第34話(ランス視点①)

・前書き

すいません、今後の物語の都合上、前回(34話)のサクヤ視点の話は変更する事にして一旦削除させて頂く事になりました。読者の皆様に混乱を与えてしまい本当に申し訳ございませんでした……。


――――


 夕方。元アリシア邸にて。


「サクヤさん、今まで色々とありがとうございました」

「いえ、こちらこそ今まで本当にお世話になりました」


 私はアリシア様が住まわれていたこの屋敷の前でサクヤさんと別れの挨拶を行っている所だった。


 本来ならばサクヤさんはあと数日はこの王都に滞在する予定だったとの事なのだが、しかし突然サクヤさん宛てにアリシア様から連絡が入ったとの事だ。そしてその連絡を受けてサクヤさんもすぐにアルフォル領へと戻る事になったのだ。


 なのでこの屋敷の引渡しを急遽本日中に行われる事になったという訳だ。


「それではこの屋敷と設備の事はランス様に全てお任せ致します。屋敷内の設備は一通り点検させて頂きましたが、特に異常な点は何もありませんでしたので、今すぐにでも稼働させる事が可能となっております」

「はい、わかりました。最後まで入念に調べて頂き本当に感謝致します。ですが念のために我々の方でも最後にもう一度設備点検は行ってから稼働させていこうと思います」

「はい、そうですね、点検自体は何度やっても無駄にはならないと思いますし。はい、わかりました。それではもしも何か不具合などが見つかりましたらいつでもレイドレッド家に連絡を頂ければ幸いです」

「わかりました。本当に何から何まで御親切にして頂きありがとうございます!」


 という事で私は改めて今までの全ての事についての感謝を込めてサクヤさんにもう一度深くお礼をしていった。


「あ、それと……あとは私の兄上の件についてなのですが……」

「ん? あぁ、はい。もしかして何か進展はありましたのでしょうか?」


 そしてもう一つ、我々とレイドレッド家の間にある重大な懸念点についてを思いだしていった。それはもちろん、私の兄であるセシルの事だ。


「そうですね、現状としてはまだ事実確認をしている段階なのですが……しかし少しずつですが兄上の悪事を働く証拠や証言などは集められている途中です。なので後は全ての証拠を全て揃え次第、こちらの方で厳重に処罰をしていくつもりです」

「そうですか。それならば安心です」

「はい。その件についてもサクヤさんには沢山の証拠を我々に提供してくださって本当に感謝しております。そして今回はアリシア様にだけでなく従者のサクヤさんにも相当な迷惑をかけてしまい……本当に申し訳ありませんでした」


 今回の兄の件についても従者のサクヤさんにはとてもお世話になっていた。兄が沢山の女性との逢引をしている浮気現場の証拠写真は全てサクヤさんからの提供品だし、それにサクヤさん自身も兄に口説かれてしまっていたというのだから……何というかもう身内として本当に恥ずかしくなるばかりだ。


「いえ、私に関しては大丈夫ですのでお気になさらないでください」


 私は申し訳ない気持ちになりながらサクヤさんにそう言っていくと、サクヤさんは全然気にしてないという素振りで私にそう言ってくれた。


「そうですか、サクヤさんにそう言って頂けるのが唯一の救いです……本当にありがとうございます」

「いえ、ですがこれ以降にもまたセシル殿下の件で何か新しい問題が出てきましたら、その都度レイドレッド家の方に連絡を頂けますか? あぁ、もしその話の内容がアリシアお嬢様の耳に入れたくないような話だった場合には私宛てに個人的に連絡をして頂ければ幸いです」

「あぁ、はい、わかりました。それではアリシア様にお伝えしにくい話が出てきたら、私の方からサクヤさんへ個人的に連絡を送らせてもらいますね」

「はい、わかりました。ありがとうございます」


 確かにサクヤさんの言う通り、アリシア様には口にするのも憚れるような話が今後出てくる可能性だってあると思うので、サクヤさんの今の案はとてもありがたいものだった。


 サクヤさんは本当に色々な事をしっかりと考えてくれているとても素晴らしい従者だなと、私は改めてそう思った。


「それで、サクヤさんは何時頃この王都から離れる予定なんですか?」

「はい、もうアルフォス領に向かう馬車を既に手配していますので、ランス殿下への引渡し作業が完了したらすぐにでも出発する予定です」

「あぁ、そうなんですね。わかりました、それではこれ以上長引かせてしまうと待たせている御者の方にも迷惑でしょうしし、引渡し作業はこれで終わりにしましょう」

「はい、わかりました」


 どうやらサクヤさんは既に馬車を待たせているとの事だ。なのでこれ以上無駄に話を長引かせるのは良くないだろうと思い、私達はこれで引渡し作業を終わらせる事にした。


(よし、それじゃあ今日の夜にもう一度我々の方で最後の設備点検を行う事にしよう)


 そうすれば明日の朝からまたポーション生産が稼働出来るようになるはずだ。もう一週間以上もポーション薬の流通が滞ってしまっているので、早く生産を再開させなければならないしね。


「それでは最後に……今までありがとうございました、サクヤさん。もしこれからも何か困った事があれば私の方で力になりますので、いつでも王都に来たら私を尋ねに来てくださいね」

「えぇ、こちらこそです。ランス殿下には今まで本当にお世話になってきました。ランス殿下も何かポーション生産について何か困った事がありましたらいつでも頼ってくださいね」

「はい、本当に何から何までありがとうございます。それではまたアリシア様やサクヤさん達といつかまた再会出来る日を楽しみにしております。それではお元気で……」

「はい、ありがとうございます。それでは……」


 そう言って私はサクヤさんと固い握手を交わし、そして別れていった。またいつか、何処かで再会出来る日を夢見て……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る