第33話(セシル殿下視点⑦)
翌日の夜。
「よし、これで全ての準備は完了したな」
私は王宮の自室にて一人でワインを飲みながらそんな事を呟いていっていた。
私は昨日の夕方に普段から利用している“何でも屋”に訪れていき、クズ女の住んでいた屋敷を燃やして貰うように依頼を出していた。この“何でも屋”という店は、高額な報酬さえ支払えばどんな事でも引き受けてくれるという便利な店だった。
「しかし、いつもの女達の始末をして貰うだけでなく……まさかこんな事にまでも“何でも屋”を使うハメになるとはな……」
私は普段はこの“何でも屋”には私の子を勝手に孕んできた数々の女達の始末をして貰っていた。正確には“女”の始末ではなく、女のお腹の中にいる“子供”の始末をだが。
まぁ女達には無理矢理堕胎をさせていき身体にも沢山の傷をつけさせてしまったので若干の申し訳なさはあるが……しかしそれはそもそも私の子供を勝手に孕んだ女達が悪いのだ。だから私は決して悪くはない。悪いのは私の許可なく勝手に私の子を孕んでいった下民の女達なのだから。まぁ一言で言えば自業自得という事だ。
という事で今回もその“何でも屋”に高額な報酬を支払って、あのクズ女の屋敷を燃やして貰うように依頼を出したのだ。
「それにしても……あの写真を盗撮したものは一体誰なんだろう?」
今回、クズ女の屋敷と従者を燃やし尽くすと決めた要因となったあの写真だが……結局あれは一体誰が撮影した写真なのだろうか? もちろん気にはなっているが、しかし流石にあの一枚の写真だけで犯人を探す事などは到底不可能だ。
だから私は盗撮をしていた犯人捜しについては今はまだ調べるつもりはなかった。そんな事よりもまず最初にあの従者を亡き者にする事の方が先からな。
「ふふ、早く良い知らせが私の元に届いて欲しいものだ」
何でも屋の店主は今日の深夜には依頼内容を必ず遂行すると言ってきていた。正直、私はこんなにも早くに依頼をこなしてくれるとは思ってもいなかったので、少しだけ驚いてはいた。
でも何でも屋の店主曰く、あの屋敷の庭先には大量の木々が植えられているので、そこに火の手を上げれば一瞬で屋敷全体を火の海にする事が出来るそうだ。
だから私がいつも店主に依頼していた女の堕胎を無理矢理させていく事なんかと比べたら、今回の依頼は遥かに楽だと言ってた。これは非常に頼もしい限りだ。
「まぁしかし、今回の件でまた無駄に金がかかってしまったが……まぁでもいいか。金なんて腐る程大量にあるんだしな」
私はそんな事を呟きながら自分の机に置かれている大量の札束を見ながら笑みを浮かべていった。この金はこの王宮にて厳重に保管されている国庫に貯蔵されていた金だ。
私は王族の権限を使って時々この国庫に侵入しては大量の札束を頂戴していき、そしていつもこの金を使って何でも屋に依頼を出していた。
まぁ本来ならばこの国庫に入っている金を無断で使うなんていうのはどう考えても犯罪ではあるのだが、それでもこの国庫に貯蔵されている金はまだまだ大量に残っている。だから私が少しくらい国庫から金を頂戴していた所で何の罪にもならないだろう。
「ふふ、それもこれもこの王都での税収が大幅に増大していってるおかげだな」
数年前にポーション薬の新事業を立ち上げてくれた者には感謝してもしきれないな。ふふ、これからもその優秀な者達にはこの王都でしっかりと稼いで貰っていく事にしよう。
「さて、私の依頼が完了したらすぐに報告を入れると店主も言っていたし……それでは今日はのんびりとその報告を待つ事にしようかな」
という事で私は店主からの連絡が来るまで手に持っていたワインを飲みながらのんびりと連絡を待つ事にしていった。
……しかしこの時の私はまだ気づいていない、この数日の間に私がしてきた行動というのは全てが裏目に出ていた事に……。
そして今日の選択肢も間違えてしまった事により、ここから私の転落人生が始まっていく事になるというのを……この時の私はまだ気づいていない。
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