第26話(過去編④)
それから数日が経過した。
「お父様。薬草採取を無事に終えました」
「あぁ、そうか。今日もお疲れ様、アリア」
私はこの数日間、父に頼んで実家の稼業を手伝う代わりに幾らかお小遣いを貰っていた。
父からのお手伝い内容としては主に薬草採取とポーション作成のお手伝いをしていた。具体的には庭先にある土を耕していったり、ポーション薬の原料となるブルーリーフの葉を近くの森に入って集めたり、そのブルーリーフの葉を磨り潰してポーション薬の作成をしたりとか、まぁ簡単に言えばただの雑用だ。
父から貰ったお手伝い内容はどれも危険性は一切無いのだけど、でもその代わりに時間と手間がちょっとかかるという少しだけ面倒なお手伝い内容だった。
「それにしても急にお金が必要だなんて一体どうしたんだいアリア? 何か欲しいものがあるのなら、ちゃんとその理由を教えてくれれば私の方で買ってあげるが?」
「いえ、これに関してはお父様に買ってもらう訳にはいきません。私の力だけで買いたいのです!」
「そ、そうか……それならまぁいいのだが」
私が力強くそう言うと、父は少しビックリしたような表情を浮かべてきた。
まぁでも確かに、普段から勉強ばかりしていた私がいきなりこんな力仕事をするだなんて、普通に考えたらビックリもするだろうな。
(でも、サクヤの誕生日までに何としてでもお金を集めなきゃだ……!)
私はその一心でこの数日間は頑張ってお手伝いをしてきた。そしてこれからもしっかりとお手伝いを頑張っていくつもりだ。
◇◇◇◇
翌日。今日も私は父のお手伝いを一人でひっそりと行っていた。
そういえば私はここ最近サクヤとは全く会っていなかった事に気が付いた。なので私は父にサクヤが今何をしているのかを尋ねてみた。すると、どうやらサクヤは冒険者ギルドに行って訓練所で剣の特訓をしているとの事だ。
これからサクヤが本格的にレイドレッド家の従者になるためにも私達をいつでも守る事が出来るように護身術を覚える必要があるという事で、サクヤはその術を習得するために頑張って身体を動かしているとの事だ。
(あの子も頑張ってるのね……私も頑張らなくっちゃ……!)
という事で私は心の中でサクヤの事を応援しつつ、今日も私は森の中でブルーリーフの葉を採取して回っていた。そしてもちろん私がこんな事をしているのはサクヤには内緒にしている。
でもそうしないとあの子は自分の訓練を放りだして私の護衛をすると言って一緒に付いてきてしまうだろうから。それでは私の秘密の計画がバレてしまうから絶対に駄目だ。
「お父様。今日のポーション薬作成が無事に終えました」
「そうか、今日もお疲れ様、アリア。それじゃあこれが今日の分の報酬だよ」
「ありがとうございます!」
今日も父からのお手伝いを無事に完了させてお小遣いを貰う事が出来た。私は父にそう感謝を伝えて父の書斎から出て行った。
「ふぅ、今日も疲れたわね……」
私はそう言いながら自分の肩をトントンと叩いていった。でもこんな所でへこたれる訳にはいかない。何故なら私は数日前にとある決意をしたんだ。
その決意とはもちろん……サクヤへ誕生日プレゼントをサプライズで渡すという決意だった。
「うーん、でも……お金は少しずつ貯まってはきてるんだけど……」
私はそう呟きながら財布の中身を確認してみた。
確かに財布の中には少しずつ資金が貯まってきてはいるのだけれど……でもそうはいっても私は父のお手伝いをしているだけだから、貰えるお小遣いの量もそこまで多くはない。だからサクヤが喜んでくれるような高価な買い物は出来ないかもしれない。
「お父様に理由を話したら、もっとお小遣いを貰えるのでしょうけど……」
でも私はサクヤにはサプライズでプレゼントを渡したいんだ。だからこの秘密の計画は誰にも言えないし、父にもっと沢山お小遣いが貰えるお手伝いをさせてくれだなんて言えるわけもない。
それにこのポーション薬を作る作業のお手伝いというのは、これから私が一流の薬師になるためにもとても役立つ作業だと思っている。だからこのようなお手伝いをさせてくれている父にはとても感謝をしているんだ。まぁでも……。
「うーん……流石に手がすっごく汚れちゃったわね……」
私はそう言いながら自分の両手を見ていった。私の両手は泥による土汚れや、薬草類を磨り潰した時に付着した緑色の汚れも沈着してしまっていた。父に言われたけどこの薬草類の汚れは数週間は落ちないらしい。
だから父も最初に“本当はこの作業は女の子のお前にはやらせたくないんだ”と、心配そうな表情をしながら私に言ってきていた。でも……。
「……ふふ、まぁそれでも頑張るしかないか」
でも私はそんな自分の手の汚れを見ながら笑った。汚れてると言っても別に病気じゃないから私は気にしてない。それに数週間もしたら汚れはちゃんと落ちるって言われたし。
そんな事よりも私はサプライズプレゼントをした時のサクヤの顔を今から想像して楽しんでいた。きっとサクヤは驚く表情をするに違いない。
「ふふ、サクヤの驚く顔が見ものだわ!」
私はそんな事を考えながら父の書斎から自分の部屋へと戻って行った。
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