第24話(過去編②)

「はいこれ!」

「な、なによ……?」


 サクヤと大喧嘩をしてから数日が経ったとある日、私はサクヤに呼ばれて小さな小包を手渡された。


「まぁいいから、開けてみてよ」

「う、うん……って、えっ!?」


 その小包を開けてみると、その中身は可愛らしい丸型のメガネが入っていた。そのメガネは数日前にサクヤと一緒に訪れた雑貨屋で売られていた商品だった。


「ちょ、ちょっとサクヤ! こ、これってもしかして……!?」

「ふふん、もう買っちゃったからね! もう今更返品なんて出来ないよ!」

「あ、あなたって子は……! もう、一体何してんのよっ!」

「いたっ!」


―― ぽかっ!


 私はサクヤの頭を手でこつんと叩いていった。サクヤは痛そうに頭を手でおさえていた。


「はぁ、全くもう……何で私に黙って買っちゃうのよ」

「だって、アリアに言ったら絶対に買わせないように僕の事を説得しに来るでしょ?」

「そんなの当たり前じゃない、私の事にお金なんて使わなくて良いのよ。サクヤが一生懸命に働いて稼いだお金なんだから自分のために使いなさいよ……」


 私はため息をつきながらサクヤに向かってそう言った。


「しかもこのメガネ……結構高かったんじゃないの? 凄く上質な素材が使われているメガネよね、これ……」

「え? あ、あぁ、うん、そうだね。まぁちょっとだけ値段は高かったかもね」

「ふぅん、ちょっとだけねぇ……?」


 私も一緒に雑貨屋さんで見てたからこのメガネの価格は知っている。このメガネには物凄く上質な素材が使われており、アンティークとしても使う事が出来る一点物の高級メガネだった。


「というかそもそも……なんで私にこんな高級なメガネを買ってきたのよ?」

「え? だってアリアはいつも勉強で大変そうにしていたし、メガネが欲しいっていつも言ってたじゃん?」

「え? え、えぇ、それは確かに言ってた気はするけど……」


 私は毎日薬学や医療に関しての書物や文献を読み漁ったり勉強をしたりする日々を過ごしていた。そのおかげで私は毎日疲れ目のような状態になっていて、目がかすむようにもなっていた。だからメガネが欲しいなって呟いた事もあったのだけど……。


「……えっ!? だからアナタ……私にメガネを買ってきたってこと!?」

「うん、そうだよ!」

「ば……ばか! それならせめてもっと安物のメガネを買ってきなさいよ! なんでこんな高級なメガネを私のために買ってきちゃうのよ!!」


 メガネなんて服と同じで消耗品だ。壊れたらまた新しいメガネを買えば良のよ。だからこんな高級なメガネを私に買う必要なんてどこにもないはずなのに……。


「何言ってるのアリア! アリアは貴族の女の子なんだよ? そんなアリアに安物のメガネなんて似合わないでしょ! それに凄く綺麗なアリアの顔にはこのオシャレなメガネが一番似合うと思ったんだもん!」

「え……えっ!?」


 私はサクヤに綺麗だと言われた事にビックリとしてしまい、顔もどんどんと真っ赤になってしまっていた。


「だからそんな綺麗なアリアのためにもこの一点物のメガネを買ってあげたかったんだよ!」

「うっ……」

「それにこのメガネはとても良い素材を使って作られているから、丁寧に扱えば一生使う事が出来るって店主さんが言ってたよ! だから長い目で見たら全然高くないメガネだよ! だって一生使う事が出来るんだしさ!」

「……も、もう……それって私が丁寧に扱う事を前提にしてるじゃないの?」

「あはは、大丈夫だよ。アリアはどんな物でもとても大切に扱ってくれる優しい女の子だって知ってるからさ」


 私がそう尋ねると、サクヤはあははと笑いながらそう返答してきた。サクヤに私の事をちゃんと理解されてしまっていると思うと何だか恥ずかしい気持ちにもなってくる。


「わ、わかったわよ……もう買っちゃったものはしょうがないわよね。それじゃあアナタからのプレゼント……有難く頂戴するわよ」

「っ! う、うん!」


 私は気恥ずかしい気持ちを悟られないように顔を少しだけ俯けながらそう言った。するとサクヤはとても嬉しそうな表情をしながら何度も頷いてきた。

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