第2話

 私の名前はアリシア・レイドレッド。年齢は18歳の女だ。


 私はセレスティア国にある自然豊かなアルフォス領出身で、私はその領を統治しているレイドレッド公爵家の令嬢として今まで生きてきた。


 容姿は160センチ前後のスレンダー体型、金髪碧眼に長いロングヘアが特徴的で、見た目は整っていて綺麗だと周りからは言われていた。


 でも私自身は感情を表に出すのが苦手だったので、冷たい目をしているように見えるのが若干のコンプレックスだった。実際には怖い性格なんかでは決してないし、どちらかと言えば非常に温厚な性格なのだけど……


 そして先ほども言ったように、私が生まれたこのレイドレッド家というのは代々“薬学”に精通している家系だった。


 なので私もレイドレッド家に生まれた者として薬学の道を極めようと日々邁進してきた。その結果として私は若くして幾つもの新種のポーション薬を作り続けていく事に成功した。


 そしてこの世界には数多くの凶暴な魔物が地上に生息しているのだが、その凶暴な魔物を日々討伐してくれている兵士や冒険者達の怪我を回復させるのに私の作成したポーション薬がとても役立っていた。


 そしてそのおかげで魔物との戦闘における死傷者の数がここ数年では一気に減少していったらしい。それはつまり今まで私が作り続けてきたポーション薬が世界平和のために貢献できていたという事だ。


 そしてこの功績が認められて私は国王陛下から“錬金術師”の称号を得る事になり、さらにはこの国の第一王子であるセシル殿下との婚約を打診されたのだ。


 当時の私はセシル殿下との一切面識はなかったのだけど、でも私は二つ返事で殿下との婚約を受け入れた。何故ならそれが“貴族の女”としての務めだという事を重々承知していたからだ。貴族の女として生まれたからにはいつかは政略結婚をする事になる事はわかっていた。


 それに王国側からしたらレイドレッド家の薬学の知識を取り込めるというメリットがあり、レイドレッド家側からしたら王族との繋がりが持てるという事でお互いにWin-Winな関係を作る事が出来る。だから私とセシル殿下との婚約に異議を唱える者なども一人もおらず、私達の婚約はとんとん拍子で決まっていった。


 それからすぐに私は王都の王立学園に通う事になったので、私はレイドレッド家があるアルフォス領から離れて王都に移住する事となった。それが今からニ年程前の出来事だ。


 そして私がその王立学園を無事に卒業する事が出来たら、その後すぐにセシル殿下との結婚式を執り行う事も決まっていた。なので私はその日が来るまでに、未来の王妃となるべく王族としての立ち振る舞いをしっかりと覚えていった。


 さらにそれだけではなく、私は今までアルフォス領で行っていたポーション薬の研究開発も王都にやってきてからもしっかりと続けていった。国王陛下から錬金術師の称号を与えられたからには、その役目もしっかりと果たす所存だった。


 だから私はその研究開発のために王立学園を休んでしまう日が時々あったんだけど、でもその事についてはちゃんと国王陛下には了承済みだったし、そもそも私が仕事をしているという事をセシル殿下も知っているはずなんだけど……


◇◇◇◇


「……私がミヤ……様を虐めていた?」


 私は戸惑った表情をしながらもう一度そう呟いた。


 “ミヤ・レガード”とは私よりも一つ年下の17歳の女子……生徒だ。 私よりも少し後に王立学園に編入してきた女子生徒で、身長は170センチくらいと少し高めでほっそりとしたスレンダー体型をしている。


 容姿に関してはこのセレスティア国ではかなり珍しい黒髪のロングヘアに、綺麗な紫色の瞳を持っていつ。そして性格はとても優しく人当たりの良い素敵な女子生徒だった。


 そしてもちろん、そんな優しいミヤの事を虐めた事なんて私は一度もない。一体誰がそんな酷い嘘をついているんだろう?


「えぇっと……私がミヤ様の事を虐めたとの事ですが、そのような事実は一度もありませんし、そもそも私は誰かに対して虐めを行うような酷い人間ではありません」

「ふん、往生際が悪いぞアリシア! 貴様がミヤの事を虐めている所を目撃していた生徒も沢山いるんだ!」

「え? い、いえ、それこそきっと何かの間違いだと思います。もしかしたら殿下も何か誤解をされているのかもしれませんし、ここは一度確認のためにもミヤ様とお話をさせて貰えませんか?」

「そんなの駄目に決まってるだろ! ミヤは貴様からの暴行を受けて怖い目に合わされた被害者なんだぞ! だからそんな酷い目に遭っているミヤを貴様のような暴力女と引き合わせるわけにはいかない!」

「え……」


 殿下はそう怒鳴り散らしながら私の事を叱責してきた。これこそ明らかな濡れ衣だ。ちゃんとミヤと話をさせて貰えればすぐにわかるはずなのに……それなのに殿下は私の話を聞こうとはしてくれなかった。いやそれにしても……。


(それにしても一応私は殿下とは婚約者という間柄のはずなのに、何故ここまで執拗に私を卑下した態度で接してくるのだろう……)


 それに殿下がミヤに対して何故ここまで執拗に肩入れをしてくるのかも、正直私にはさっぱり意味がわからなかった。


「以上の事から、貴様には“国費の横領”と“婦女暴行”の二つの容疑がかけられている! この容疑が晴れるまで貴様には屋敷での謹慎処分を命じる! いいなアリシア!」

「……えぇ、わかりました」


 私は釈然とは全然していないのだけど、これ以上騒いでも良い事にはならなそうだ。周りにいらっしゃる来賓の方々も不安の表情をしながらこちらを見ている。


 という事で私は癪全としないままセシル殿下からの謹慎処分を受け入れる事となった。

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