竜騎士の新人大会

竜騎士は竜と心を通わすことが大事だ。何故なら空の上では頼れるのは自身の腕と竜だけなのだから。


金属の交わる音が青く染った空に響き渡った。

今日は新人の竜騎士達が腕を競い合う大会が催されている。国民達も観覧できるコロシアムでの大会だ。

次の試合に備え、コロシアムの入口にいる俺には空中で戦っている2人の竜騎士の姿がよく見えた。

「うぉお!!」

青髪の騎士が金髪の騎士に切りかかる。だが、金髪の騎士は竜と息のあった動きで無駄なく避けニヤリと笑った。

「弱いねぇ」

視力のいい俺でなければ唇までは読めなかっただろう。

金髪の騎士は青髪の騎士を竜の背から蹴落とした。ざわめきが広がる。

しかし、青髪の竜が主人の服をくわえて助け事なきを得た。これも信頼の成せる技だ。

「勝者!レオン!」

審判の声に伴い観客達が大きな歓声をあげた。レオンと呼ばれた騎士は観客達に笑みを向けながら手を振っている。

不意に背後に気配を感じ、横に動けば後ろから肘で突こうとした男がその勢いのままよろける。

「よけんなよ!!」

「避けられたくないなら気配を消せ」

「幼馴染まで警戒すんじゃねぇよ!」

腐れ縁とも言うが幼馴染であるタートンとは父同士仲が良く、その流れで良く一緒にいた。少し癖のある茶髪が本人にとってはコンプレックスらしく、幼少期の時悪気なくパスタのようだと言ったら叫びながら殴られた。普段滅多に怒らないだけに、二度と髪のこと話すまいと心に決めた。

「何か用か?」

「何かじゃねぇよ!次レオンと決勝戦やる幼馴染の激励に来たんだろうが!」

「お前は1回戦で剣滑らせて負けたからな」

「本当に恥ずかしいから言わないで!!」

タートンは気合い十分で臨んだにも関わらず、相手と1度も刃を交えることなく剣を落とし敗退となった。ルールとして騎士が竜から落ちる、剣を落とす、降参を認めると相手の勝利となる。タートンの相手は戦わずして勝利を得たのだ。

「お前は確かに優秀だけど、こういう試合とかは勝てる程度に手ぇぬくと思ってた。けど、常に全力だよな。ちょっと意外」

俺はこれまでの試合を全て一撃で終わらせている。自身の成せる全力を出し切るつもりで。

「...中途半端なところを見せたくないからな」

無意識に呟くとしっかりと聞き取っていたタートンが目を輝かせる。

「それってまさか好きなひ...」

次の単語が出る前にカプリと青竜がタートンの頭にかじりついた。

「ネフェレー。腹を壊すぞ「まず俺の心配しろよ!!」

青竜ーネフェレーがクルルと喉を鳴らし俺に頭を擦り寄せる。

「よし、体調は万全そうだな」

ネフェレーは試合に出れるように鞍をつけてきている。準備を整えたネフェレーがいるということは連れてきた世話人がいるはずだ。

「ネフェレーの世話人、ルイーザが手を負傷したため代役として私がお連れしました」

「あぁ、ありが...」

ネフェレーの後ろから姿を表した相手の姿に目を見開く。

「君は...」

「え...」

間違いない。あの時の...

「騎士レオンと騎士リオスの決勝戦を始める!両者入場!」

「呼ばれたぞリオス。優勝して来いよ」

タートンの声など耳に入らない。俺は世話人の少女に目を奪われた。不意にくいと服を引かれる。ネフェレーだ。早くと促すようにコロシアムをさす。

「待っててくれ!君に伝えたいことがある!!」

何事かと目を丸くする少女とええ!?と驚きの声をあげる幼馴染の声を聞きながら開けた空へと飛び立った。

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