第2話 食糧は貴重なタンパク源です。

日光に照らされ続けた体。皮膚の表面のほとんどは炭化しているだろう。


しかし死なない。


普通であれば朦朧とする意識も冴え渡っている。


食糧を投げ込んだあと、一歩一歩、ゆっくりと進んでいた。


本来であればここで寝転び、疲れを癒したい。


しかし、黄金に輝く砂丘はそれを許さない。


熱せられた砂は、体の表面を焦がし崩し、内面にまで影響を及ぼす。


被害は足だけにとどめておきたい。


……ちなみに足はもう感覚がない。


むしろ、焼けた砂と血と炭が混じり合って靴のようなものになっている。


「……ゔえ」


あゝ暑い。いや、熱い。


そんな思いももう終わりだ。


もう少しで穴倉だ……


「グォっフォ……ゔうェ……」


焼け焦げる臭いにむせ返る。


ああ、愛しの日陰よ。会いたかった。


君まであと数歩なんだ。


あと五歩か? いや六?


まぁ良い。


「イっッギャあアぁアア!!」


あと数歩を走る。痛みも厭わず。


いち早く。その穴倉に入るため。


そして倒れ込む。


「やったぜ……こんちきしょう……」


みるみる癒える体。蘇る気力。


先程まで焼けていた肌は、綺麗な色白の肌になっていた。


「ふぅ……分かっていてもしんどいな」


いつからか分からない。ただいつのまにか俺はこの穴倉にいた。


ここでの生活は過酷なものだった。何度も死のうと思ったが死ねなかった。


そして僕は生きることを選んだ。


過酷だろうが、生きる意味が見つけ出せなかろうが関係ない。


生きる。それが全てだ。


「さてと。それじゃあ三日分のまともな食料だ。一週間かけて遠征した甲斐があったぜ」


持ち帰った食糧は、石のようなものが四つであった。


しかし、それは裏返すと奇妙な細い糸のような足がワラワラと生えている。


「ふーふふーん♪」


足を器用に全部掴んで、石から何かを引きずり出す。そうして出てきたのは、小指の爪ほどの大きさの、足の主であった。


「久々の毒無しだぁ……」


生きたままその虫らしきモノを食べる。まずは本体の方から。


奥歯ですりつぶし、余分な足を前歯を器用に使って引きちぎる。


「やっぱ毒がないってだけで、こんなに美味いんだなぁ……」


久々の食糧に涙を流した。


二匹目、三匹目、四匹目も同じように食べる。


そして、それらから引きちぎった足をまとめ、前歯で扱くように足の中身の体液を啜る。


「ご馳走様でした」


空腹だが、これで三日は毒持ちを食べずとも真水だけで生きれる。

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