この世界で生きる
たつの落とし子
第1話 まぁ、息もできないのですが。
太陽光に灼かれ、肌から焦げ臭い香りが漂う。
この太陽光で輝く黄金の砂丘で。
僕は何度も何度も何度も何度も。
……焼け死んだ。
空気を吸えば、肺が燃えるような熱さを感じる。
実際、熱で少し焦げているだろうが。
しかし、これ如きで足を止めることはできない。
僕は今、数週間ぶりの食糧を持って帰ってきている。
ここで死ねば、この体で食糧を庇わなければ。
死んだ後の僕に食べさせることができない。
日を避けれる穴倉まではあともう少し。
何度も爪を剥がして掘った穴倉の奥に、この食糧を置けば死ねる。
「はぁ……ハっ……ゲぇええェぐほっ……ゔぇ」
内臓まで焼け焦げる。自分が焦げていく臭いにはいつまで経っても慣れないものだ。
あともう少し。投げ込めれる距離にまで近づければ問題ない。
あと三歩、あと二歩。
……あと一歩。
「ウぉゔぇ…………うッ!」
満身創痍渾身の投擲。
食糧は穴倉の奥に滑り込む。
欲を言えばもっと奥に滑り込んで欲しかったが、及第点だろう。
よくやった。あとは時間をかけても良い。
案外人間はしぶといんだ。
穴倉まで戻れば。全部元に戻る。
『僕は死なないんだから』
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