第3話 真水。

真水。

まず、自分の体毛と血液と砂を混ぜ合わせた何かに、汚水を染み込ませたものを焼けた砂に埋める。

次に蒸発した綺麗な水を含んだ砂を回収する。

最後に砂と体毛を混ぜてしばらく放置し、水を吸った体毛を口の中に入れてひたすら噛む。


これが真水……というより安全な水分だ。


今日はその安全な水分を摂取しつつ、穴倉の隙間から湧く毒持ちの虫を捕まえては解剖している。


「外にいる虫は熱に耐えたり熱を利用する過程で毒が分解されていることが多い……でも、洞窟の虫はその毒を持ちっぱなしだ……」


この毒持ちの虫をどうにか食べられないか奮闘した事もあった。

しかし分かったことは、熱で解毒できる毒虫がいないということだった。


「毒腺さえ取り除けば……と言ってもこいつも体のほとんどが毒……食えたもんじゃない」


解体した虫は適当に床に置く。しばらく後の遠征に使うために廃棄はしない。


「そういえば今まで試してなかったけど」


なぜだろう。この生活が始まってから長く経つはずだ。思いつかなかったのが不思議でならない。

初めて神に感謝した。このアイデアはきっと次の自分を生かすものとなるだろう。


「じぶんの からだって たべられるよ ね」

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