第13話 『トオリマ』
先日平穏な日常生活を取り戻す為に非日常と戦い辛くも勝利し手にした束の間の穏やかな日々
「私が先にここ座ったんですけど!」
「…先とか後の話なら幼馴染の私の勝ち」
《なぁ、なんで与一の取り合いしてんだ…》
《知らねえし信じたくねえ》
自分の席の周りで激しい言い争いをしていると次第にギャラリーが出来始めていた。
「(鬱陶しい…)」
「そもそも、私は大事な話があって来たんですけど!!!」
「…大事な話なら、余計に与一と2人きりにはさせない」
《おい!!!与一と大事な話ってなんだよ》
《知らねえし死にてえ》
「「与一(君)もはっきり言ってやってよ!!!」」
「「あれ?いない…」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煩わしい言い争いを目の前で繰り広げられ緊急回避に成功した与一は考え事をしながら廊下を歩いていた。
「(…思えばあの2人は出会った時から会うたびに言い争ってる気がする)」
「(大事な話があるって言ってたけど、PINEで聞けばいいか)」
「(それよりどこで食べよう)」
いつも昼休みを自分の席で過ごしていた為その席を使えないとなると非常に困る。仕方なく与一は屋上で昼食を済ませた。余った昼休みの時間でぼんやり過ごしていると、屋上の扉が開いた。
「あ、いたいた。もう、急に居なくなるから探すのに苦労したよ!それにしても屋上ってベタ過ぎない?」
「…与一が行きそうな場所はだいたいわかる」
「お前達が人の席で騒ぐからだろ」
「まぁ与一君が居ないのに争っても不毛だから休戦協定を結んだんだけどね、それに…氷彩ちゃんもすでに色々知っちゃってるからね。聞かせても良いって判断したんだよ」
「さっき言ってた大事な話か」
「そ、早速本題なんだけど。まず私たちの関係は私の情報力と与一君の兵力でお互いメリットのある協力関係。でしょ?」
「あぁ」
「その目的はお互いに死の危機を回避する為。だから私の死因も教えておきたいんだよね」
先ほどまで教室でくだらない争いを起こしていたとは思えない程真剣な話題だった。
「…わかった」
「…私は偶然にもあなたと同じ7月7日に殺された。発動型のギフト所有者に、死者の救済措置でギフトを貰って還ってきた私は『ストーカー』を使って自分を殺した犯人を探して尾行したの」
「だから発動型のギフトの使い方に詳しかったのか」
「私を殺した犯人の名前は須藤拓真。四ツ谷不動産で働く会社員で使用するギフトの名前は『トオリマ』。そしてこれが須藤の写真よ」
そういって鈴音は懐から一枚の写真を僕と氷彩に見せた。
「…なんか普通」
「物騒な名前のギフトには似合わない外見だな」
そこに映っていたのはどこにでもいる平凡なサラリーマンといった印象を受ける中肉中背の男性だった。
「…私も見つけた時は自分のギフトを疑ったわ。でも見てしまったの。尾行の最中須藤は何人もそのギフトを使って人を手に掛けてる」
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