第12話 étude

「与一…隠してる事…全部話して」


凄惨な出来事を目撃した氷彩はその詳細を理解してるであろう人物に説明を求めた。


流石に全てを見られた上で隠し切れるとも思えないと判断した与一は渋々語り出した。ギフトの事。成れ果ての事。近く必ず起こる回避不可の列車事故。そして自分がその脱線事故ですでに一度命を落としている事


あまりに非現実的な話の数々で言葉を失ってる氷彩は今一度成れ果ての残骸に目を向ける。


「…考えを整理する時間が欲しい」


当然の反応だ。僕と氷彩と鈴音は山を下りて帰路に着いた。


「…死体とか…そのままにしてきたけど。警察とか良かったの?」


「あの凄惨な現場を見て僕達が疑われる事もないと思うよ。近くに巨大蟹の残骸もあるし。来る時も人の壁に紛れて向かったから監視カメラにも映ってない」


帰りの電車で急に現実に戻ってきた実感が湧いてきて眠気が襲ってきた。氷彩と鈴音も同じなのだろう。僕に寄りかかって寝ている。


(…)


『レイコクを授けます』


意識を失う前に聞こえた声が遠のいていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『昨夜未明〇〇市××山の山頂付近で男女複数の遺体が発見されました。近くには巨大な野生動物の死骸と争った跡等も見られ、襲われたものとして調査を進めております。』


「物騒やねえ、あんたも一人で山とか入っちゃいかんよ。与一」


「うん、ばあちゃんもね」


ピンポーン


他愛もない朝のやりとりを終えた所でいつも通り氷彩が迎えに来て一緒に学校へ向かう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《聞いたか?今日隣のクラスに鈴音ちゃんねるの鈴ちゃんが転入して来るらしいぜ!》


《まじで?俺ファンなんだけど》


クラスに着くと大物配信者の編入に色めき立っていた。おそらく昨日の校門でのやり取りが噂になっていたのだろう。

そんなやり取りを他所に学校のチャイムが鳴る。


「はい、お前ら席に着け〜」


「聞いてるやつもいるかも知れんが、今日隣のクラスに有名配信者が転入して来るらしいが。あんまり興味本位で騒いで刺激しないようにな。相手も人間なんだ、かく言う先生も推しのアイドルの1人や2人居るから節度ある距離感を保ちながらお互いにとって…」


((長い…))


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねえ与一君。転校生放置するとか酷くない?」


いつも通りに学校生活が過ぎて行ってたが。

昼休みになると鈴音がクラスに遊びに来た。


「適度な距離感って教えられたからな。それに有名人なんだから僕が話しかけなくてもクラスの人が放っとかないだろ?」


「…う…確かにひとりぼっちだったわけじゃないけど…」


泣きそうになりながら僕の席で当然のように弁当を広げようとする鈴音に


「…そこは私の定位置。お前はクラスに戻れ。」


「あらぁ?そうなのー?ごめーん転校初日でわかんないやー!」


めんどくさい戦いが始まった。


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