第11話 Truth-真実

 

「…与一…?」


「与一君…?」


 目の前で起こった状況に理解がまだ追いつかない二人を置いて、与一はただ成れ果てを睨んでいた。


「…」


 バキッ


 静止した状況を動かしたのは物が砕ける音だった。与一が止めていた巨大な蟹の鋏を握り潰していたのだ。


「〜〜っ!?ぎきぃぃいいっ!?!?」


 信じられないほどの握力で潰された腕を見ながら成れ果ては仰向けで悶え苦しんでいる。


 与一は静かに近づくと無言のまま腕を振りかぶり


「…」


 ふんどし部分を貫いた。


「」


 急所に穴を開けられた成れ果ては残された足を少し痙攣させた後動きを止めた。


「…終わった…?」


 絶望的な状況が一変して自分達の命が助かった事に安堵する。


「…与一…だよね?」


「…」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 見覚えのある浜辺


「…ここは…」


「僕達のよく知る場所だよ」


 ふと後ろから声をかけられる。

 振り返るとそこにはお世辞にも健康的なとは言い難い程痩せ細った少年が立っていた。


「君は…?」


「もう名前もない存在だよ。ただ人の足枷になるだけの」


「成れ果て…?」


「…」


「うん…そう呼ばれるのが1番しっくり来るね…君に終わらせて貰った成れ果てだったモノだよ」


「子供…だったんだな…」


「…外に出たかったんだ。ずっと暗い押し入れに閉じ込められて。何度もお願いしても出してくれなくて」


(虐待か…)


 与一は少年の成れ果てを思い出す。


『あ、け、ろぉぉぉおおおおおお』


「硬い甲殻は身を守る為だったのか」


「…僕達成れ果ては生前強く願った事が色濃く反映されるみたいなんだ。僕は痛くない体が欲しかった。」


「…」


「でも…それは人を傷付けてまで欲しかったモノじゃない…終わらせてくれてありがとう。お兄ちゃん」


 少年の体が薄く半透明になって消えていく。


 与一は少年の頭に手を置くと


「今度はきっと全部上手くいく」


 そう願いを込めて少年を送り出した。


「うん!」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 笑顔で消えて行った少年を見送ると。意識が知っている光景に引き戻される。


「…」


 ふと自分の頬に涙が伝うのに気付き指で拭うと自分を案じている二人を見やり


「…終わったよ」


 精一杯の笑顔を向けた。

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