第7話 試行


「…よし」


 氷彩への贖罪デートを終えた次の日。

 ベッドから起き上がると与一は何かを決心した。


 ピンポーン


「…ん、おばあちゃんおはよ。与一起きてる?」


「あら氷彩ちゃん。与一ならさっき洗面所で顔洗ってたからもう降りて来ると思うよ」


 少し世間話をして時間を潰すと2階から制服に着替えた与一が降りてきた。


「おはよ氷彩」


「…ん、おはよ、学校行こ?」


「あぁ」


 靴を履き玄関を出ると学校へ向かった。その道中


「今日放課後予定あるから一緒に帰れない」


「…まさか…あの女…?」


「違う違う。クラスのやつと遊ぶ約束があるんだ」


「…ん、珍しい。わかった」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 帰りのHRを終えた後、与一は猿渡エテ彦の席へと向かった。


「んお?どし「ついてこい」


 エテ彦にしか聞こえないくらいの声量で『ヒトタラシ』を使用した。


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 与一と奴隷。もといエテ彦は隣町のゲームセンターに居た。


「戻れ」


「んぁ…ん?あれ?どこ?教室にいたはずじゃ?」


「寝ぼけてんのか?一緒にゲーセンに遊びに来たんだろ。次お前の番だぞ」


(おかしいな…夢遊病ってやつなのか…?)


「パンチングマシーンか…あんま得意じゃないんだよなぁ」


 ボフッ


 液晶画面には130kgと映し出されていた。筐体の側にパンチ力の平均が記載されている。だいたい140〜160kgが一般的らしい。


「んーやっぱこういうの苦手だわ。ゾンビのゲームやr「殴れ」


 ドゴォッ


 音が違った。重みが違った。もはや液晶画面を見るまでもないが。一応確認はしておくべきだ。

 220kg…


(明らかに『ヒトタラシ』を使用してる状態との差があるな。脳のリミッターの問題か?)


 人間は筋繊維に負荷がかかり過ぎるのを防ぐため無意識に潜在能力の3割しか出せないように脳がセーブしている。だがおそらくこの『ヒトタラシ』使用中は本来の身体能力を全て引き出している。


(これは検証しておいて良かった。使えるな)


「ついてこい」


「…」


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 今日一日エテ公を連れ回してわかった事がいくつかある。


 1.『ヒトタラシ』中は身体機能をフルに活動する。


 2.『ヒトタラシ』の同時使用は最大約30名


 3.『ヒトタラシ』効果範囲は目視できる距離まで


(だいたいこんなもんか…)


「じゃあみんな、戻っていいよ」


「「…!?あれ?おかしいわね…さっきと歩いてた場所が違う気がする…」」


「エテ公、もう遅いしそろそろ帰ろうか」


「エテ彦だ!誰がエテ公じゃ」


「また明日な〜」


 家に着くと真っ先にベッドに寝転がった。


「なんか疲れたな…」


 PINE!


 ウトウトしてるとsnsの通知音が部屋に響いた。


 鈴音からだ。


「蟹を見つけた」

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