第6話 雪解け
「じゃあそろそろ帰ろっか、連絡先交換しよっ」
(交換した方が得られる情報は多いか)
「あぁ」
「じゃあてんちょー!ごちそーさま!」
鈴音はフードを被り直しサングラスとマスクで不審者コーデを整えると元気に店長へと挨拶をして出ていった。
「…」
(試す事は多いな)
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昨夜雨が降っていたせいか濡れたアスファルトがじめっとした不快な空気を作り出している中与一は登校ルートを歩いていた。
「おっすおっす」
不快指数をさらに上昇させる要素が現れた。
「うわ…おはよう」
「うわってお前…少しは隠せよ…それより今日は氷彩ちゃん一緒じゃねえの?まさか喧嘩でもしたかぁ???」
いつも登下校は氷彩が一緒であった故に1人で登校してるのを見られたら当然の如く関係性を知る周りは違和感を感じるのだ。
「…ほっとけ」
割と的を得た指摘であった為に誤魔化すのが難しかった。
「これは朝からテンション上がるわ!ちょっと顔が女ウケするからってあの学年で1番可愛いと名高いクールビューティ氷彩ちゃんをいつも独占してたバチが当たりやがった!」
氷彩はあの性格からかあまり目立つ事は無いが学校では割と噂になるレベルで顔が良い。無口な所も魅力を更に引き出していると結構な頻度で告白をされているらしい。全て無視してるらしいが。
そうこうしてる内に教室に着いた。
「氷彩、昨日はごめん」
「…あの人と何話してたの?」
「それは…」
言葉に詰まる、あまりに非現実的すぎて説明した所で変な宗教に勧誘されたと思われるだけだ。
「…言えない事…してたの?」
(あながち間違ってないのが返す言葉に困る)
「言えないけど、氷彩に後ろめたい事をしてた訳じゃないよ」
「…」
氷彩が少し考え込む
(これならいける。あとはもう1押し)
「今日はクレープ食べて帰ろうか」
「…ん、なら今回だけ特別」
「「((許すのかよっっ))」」
この仲違いの行く末を野次馬よろしく見守ってたクラスの連中の心が一つになった。
そんな時に予鈴がなった。
「は〜い席につけ〜。HR始めるぞ〜」
「まず出欠を取るぞ〜〇〇〜」
「
「はーい!」
(あのうるさい人猿渡エテ彦だったか。親が名前つけるのめんどくさくなったのか?)
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「あー授業疲れたー」
「ねー帰りカラオケいこーよ」
授業を終えてそれぞれ帰りの準備をしていると氷彩が珍しくニコニコしながら近寄って来る。
「ん、クレープ。はやくいこ」
「あぁ、わかってる」
帰り支度を済ませて氷彩と並んで駅前の移動販売型のクレープ屋に着いた。氷彩はいつもと同じチョコバナナクレープを注文した、僕は惣菜クレープ。お詫びも兼ねて2人分の会計を済ませ2人で食べながら帰路に着く。
「…なんか久しぶり…こういうの」
「いつも一緒に帰ってるだろ」
「そうだけど…ここ最近の与一は心ここに在らずって感じでどこか遠くに居るみたいだった…」
「ねえ…与一はどこにも行かないでほしい…もし…行くなら…私も連れて行って欲しい…」
(やっぱり幼馴染なだけあって鋭いな…でもごめん氷彩…僕は…僕の大切な人達に幸せな時間を長く楽しんで欲しい)
「大丈夫、僕はどこへも行かないよ」
「…ん」
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