第2話 エンカウント


「今日って何年の何月何日だっけ?」


「…呆けたの?」


「いいから教えて」


「2023年の6月7日」


「ありがとう」


 妙な事を聞いたおかげで少し怪訝な顔をされたが変な夢を見たせいで日付を忘れてしまった…


(それにしても嫌に記憶に残る夢だな)



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おっすおっす」


 学校に着くなり朝には会いたくない人物が声をかけてきた。同じクラスの…なまえは忘れた。うるさい人。


「朝にお前ってご飯に牛乳くらい嫌な組み合わせだわ」


「急に辛辣すぎね??まぁでも面白いニュース持ってきたから喜ぶと思うぜ」


「なに?」


「新種のUMA発見だってよ!なんと人語を喋る蟹だって!」


 一瞬視界が歪んだ。


(え、喋る蟹?まさかあの夢の?)


「ありえないだろ…発声器官どうなってんだよ」


「だよな!でもこれ見てみろよ」


『あ、け、ろぉぉぉおおおおお』


 そこには見覚えのある人語を喋る巨大な蟹が映っていた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 家に帰りベッドの上に寝転がると今日起こった事を振り返る。


(あの夢で見た蟹が現実に存在してる。。。

 あまりに非現実的過ぎて思考が追いつかない)


「与一、帰って来てたんかい」


「あぁ、ただいま」


「あら、泣いてたのかい?」


「え?」


 気付くと止めどなく涙が溢れていた。


(あれ?なんで?でも…なんか久しぶりに会ったきがする…)


「ねえばあちゃん。今日はカレーにしてよ」


「はいはい」


(あの夢で見たのと同じ化け物が現実に居たとしても、遭遇さえしなければこの日常は保たれる…それなら…)

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 〜数日後〜


「最近不審者がうろついてるらしいからな。気をつけて帰れよ〜」


「「はーい」」


「ん…帰ろ」


「あぁ」


 氷彩が帰り支度をそそくさと済ませ声を掛けてくる。いつも通りの日常。平穏と言わざるを得ない。しかしそんな幸せは脆く儚く崩れ去っていく。


「こーんにーちは」


 校門を出た所で黒サングラスに黒マスク。パーカーのフードを目深く被った人物に声を掛けられた。


「ん…誰?」


「ごめんねぇーあなたに用は無いんだよねー

 用があるのは与一くんの方でさぁ」


「「…は?」」


(なんで僕の名前を!?)


「ねえねえ与一君でーとしよっ!」


 そう言って腕を組まれ耳元で


「還って来たんだよね?」


 ぽつりと小声で囁かれた





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