第26話 悪い報告
俺はひたすらポーションを作った。
ポーションを作ってギルドに納品して、ギルドと城から薬草を受け取りに行く。
その繰り返した。
王城に入り、兵士に様子を聞く。
「事件は無いよな?」
「はい! 今の所は問題ありません!」
父上はそれぞれに監視をつけていた。
「何かあればすぐに知らせに行きますのでご心配なく」
「そうか、頼むぞ」
城を出て歩きながら考える。
やっぱり落ち着かない。
確認したいのに確認出来ないこの状況が嫌だ。
下手に動けばエルフ排除派がブチ切れて起きないはずの争いが起きてしまう。
エルフ排除派を刺激したくないのは分かる。
でも、刺激しなければ大丈夫とはならない。
今は考えても仕方がない。
父上はエルフ排除派とエルフ友好派が殺し合いを出来ないように兵を集めてモンスターを狩らせて農地を開拓して貴族から金を集めている。
国を富ませる建前で力を合わせる事になっている。
王子である俺が建て前を崩してしまうのは駄目だ。
何も起きなければいいが、どうも嫌な予感がする。
バライチゴの香りがした。
「ひっひっひ、クレイジーフラグが真面目な顔をしておるのう」
「……占いババアか」
「何を悩んでいる?」
「エルフの女王に伝えてくれ、エルフ排除派の動きが、どうなるか分からないけど危ない」
「歯切れが悪いのう」
「本当にどう動くか分からないからな、それにただ悪い予感がしているだけで何も起きないかもしれない」
「難しい問題じゃな。エルフがこの国を歩けば目立つわい。危ないとすれば、モモイロか、エルフ排除派の孫、バットじゃな」
その瞬間に心臓の鼓動が早まった。
俺の悪い予感と完全に一致する。
「ふむ、今悩んでも、何にもならんわい。それよりも、ほどほどに手を抜いて何かあった時の為に余力を残しておくんじゃな」
「結局、それしかないか」
「ひっひっひ、当たり前のようにサボろうとするんじゃな」
「当然だろ」
「ジャムパンと、イチゴミルクが飲みたいのう」
無言でジャムパンとイチゴミルクを取り出した。
こいつよく食うよな。
本当に老人とは思えない。
「うむ、うまかったぞ、ではな」
占いババアが去っていった。
家に帰ると人の気配がした。
そして、バライチゴの匂いがした。
バライチゴのジャムか。
「お帰り」
「ミステリ、ただいま」
「少し休みましょう」
「そう、だな」
ミステリは王子として何かある事に気づいている。
でも、聞かない方が良い事だと察して聞かないでいてくれている。
その上での少し休みましょうに癒される。
「ジャムだけじゃなくて、パンも焼いてみたの。一緒に食べましょう」
「そうだな」
大きなバケットを縦に切れ目を入れた。
そして2つに切って大きい方を俺に渡してくれた。
ジャムを塗って2人で食べる
「うん、うまいよ」
「よかった」
コンコン!
「バットかモモイロか?」
ガチャリ!
「大変です! モモイロが、攫われました!」
嫌な予感が当たった。
起きて欲しくないと思っていた。
「バットは、バットはどうしてる?」
「冒険者の遠征組は急いでここに向かってくるはずです!」
バットは関与していないのか?
そうであって欲しい。
そうであってくれ!
俺は予言を思いだした。
『バットは裏切ります』
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