第25話 エルフ排除派の暗躍

 屋敷は窓もドアもすべて閉められ、ろうそくの明かりだけが揺らめく。

 そこにはエルフ排除派が集まり、円卓を囲んでいた。


 全員が1人の老人を見る。

 スキーム・ナイトロード侯爵。

 バットの祖父に当たり、エルフ排除派の筆頭だ。


「とりあえずはうまくいった。フラグのパーティーを引きはがす事には成功した」



【スキーム侯爵視点】


「しかし、王はこちらの意図を察しております」

「関係ない、あの状況で我らの意見を断る事は、エルフ排除派を信頼しない事と同義。王であっても、いや、王だからこそ動けん」


「兵士の中には旧エルフ友好派もいます」

「そのために皆を呼んだ。これを使う」


 ワシはビンを取り出した。


「それは、何ですか?」

「毒だ」

「「!!」」


「安心しろ、食中毒、そう思わせる程度の毒で命に別状はない。そして兵士全員に毒を食べてもらった上で、この薬を飲んでもらう。これを飲めば、毒の症状を軽減できる」

「エルフ排除派だけが薬を飲み倒れる、その隙にモモイロを誘拐すればいいのですね?」


「そうだ、ここに連れてくるのだ」

「しかしそれではスキーム様が主犯である事が明確になってしまいます」

「構わん、どうせワシは長くはない。王がワシらをおとなしくさせても、エルフが死ねばエルフ共は必ず態度を硬化させてくる。そうすればまたエルフ排除派が力を取り戻せる」


「スキーム様、まさか死ぬおつもりですか!」

「死ぬ気で事を起こす! 王の血が半分エルフで汚れた! その息子もまだ1/

4 がエルフの血で汚れている。人の血を混ぜて汚れを薄めねばならんの!」


 ワシの妻も、父も、エルフによって殺された。

 そして王家の血を浄化しようとした息子も王の両親を殺した後その場で殺された。

 ラブエルフ王国は誇りを取り戻さねばならん!

 モモイロを殺し、ワシの命を捨ててでも栄光を取り戻さねばならん!


「しかし、バット様はモモイロと同じパーティーです」

「ふ、バットは遠征で帰ってこん」


「しかし王は気づいているかもしれません。バット様を呼び戻すかもしれません」

「もしバットが戻った場合、ワシもろとも死ぬ覚悟だ」


「もし、バット様が王家についた場合は」

「くどい! バットはワシの思想と同じ、ワシの陣営じゃ、そしてもしバットがその場にいても、孫を、孫もろとも死んででも理想を貫く!」


「おお! その決意、素晴らしい!」

「さすがスキーム様!」

「我らを手足としてお使いください」


 皆川氏に礼をした。


 問題無い、うまくいく、モモイロは必ず殺す。


 ワシには、切り札があるのだから。


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