第21話 予言の更新

 3人で食事を囲むと他の者は人払いで退出した。


 俺は予言の事を思いだしていた。


『バットは裏切ります』


 エルフの友好派と排除派でついに殴り合いが発生した。

 嫌な状況だ。


 バットの父が父上の両親を殺し、その場で兵士に殺された経緯がある。

 昔は今よりもエルフ排除派の力が強く、バットの家を潰してしまうと内戦に発展する可能性すらあった。


 その為父上と兄さんは地道にエルフ排除派の勢いを削いできた。

 今ではエルフ排除派よりエルフ友好派の勢力が大きいが排除派を無視するほど勢力が小さいわけではない。


 俺とバットが出会ったのは10才で学園に入った頃だった。

 学園伝統の勝ち抜き戦を行う事になり、俺は最初から手を挙げて学園生を倒し続けていた。

 

 当時の俺は生産の紋章でも全員をぶちのめす気満々で今よりもかなり尖っていた。


「18人抜き! 次は誰だ!」

「僕が行くよ」

「よし、こい!」



 ◇



 お互いに押しきれず、どっちもスタミナが切れて先生が止めに入った。


「はあ、はあ、やるな」

「君こそ」

「俺はフラグだ。名前は?」

「僕は、バット」


 その日から、俺とバットはよく話すようになった。

 俺はかなり過激で、バットは落ち着いていた。

 でも不思議と馬が合った。


 バットがエルフ排除派につけば俺を裏切る事になるのか。

 でもそうは思いたくない。


 だってそうだろ?

 バットは親友だ。

 そしてモモイロだっている。

 

 お前がモモイロを裏切ったらどうなる?

 全部が、すべてがおかしくなる。


『予言が更新されました』


 旧予言

『モモイロはパーティーの誰かに恋をしています』

『バットは裏切ります』

『フラグはエルフと結ばれます』

『目の前の石像はフラグに嘘をつきます』



 新予言

『バットは裏切ります』

『フラグはエルフと結ばれます』

『ミステリはフラグに嘘をつきました』


 バットの予言が消えていない。

 バットとモモイロの恋が裏切りであればよかった。

 あれは違ったのか。

 あれで済んでいれば良かった。


 最悪のイメージが頭をよぎった。


 バットが俺とモモイロを裏切って死に、俺とモモイロが結ばれる。

 じゃあ、ミステリはどうなる?

 いや、俺の妄想だ。


「フラグ、フラグ!」

「父上」

「元気がないな」


「はい」

「バットの事だろう」

「そう、ですね」

「まだ、大事には至っていない」


「……」

「弟がこうだと調子が狂います」

「そうだな」


「アニサマ、何かいい手は無いか?」

「取れる手は取ってきました。後は派閥の出方次第ですね」

「フラグは?」

「私も同じです」


 ゴンゴン!


「入ってもよろしいでしょうか!?」

「緊急のようなら聞こう」

「緊急です」

「入れ」


 ガチャ!


「エルフ友好派とエルフ排除派が武装して広場で対峙しています! 両軍合わせて総数は1000人程度!」

「分かった」

「5分、時間をくれ」


「フラグ、何か策があるのか?」

「まあ、衝突前なら」

「5分待て、そして少し下がれ」

「は!」


 兵士が出て行った。


「話せ」

「作戦があります。それは……」


 俺が作戦を話すと武装して広場に向かった。




 広場には甲冑を着込んだ貴族とその兵士が集まり対峙する。

 見る限りバットはいないか。


 エルフ友好派が叫んだ。


「お前たちは王の意思を踏みにじっている!」


 エルフ排除派が反論する。


「違う! エルフは国の毒だ! 我々は国を守る為にここにいる!」


 お互いに怒号が飛び交う。


 父上がスピーカーの魔道具で叫んだ。


「今すぐに双方後ろに下がるのだ! これは王命だ!」


 1本の矢が放たれた。

 それが合図となって矢の打ち合いが始まった。


 矢が横に放たれ、お互いの陣営に刺さる。


 俺の思った通りになったか。


 俺はスピーカーの魔道具を持って叫んだ。


「俺は第二王子! フラグ・ラブエルフだ!」


 作戦を実行しよう。

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