第20話 王への報告

 勢いよく謁見の間を出たが、みんなが帰ってこない。

 あれか、モモイロはコイバナが好きだ。

 女王も俺の想いを言う時に身を乗り出していた。


 俺の話と、モモイロとバットの話で盛り上がっているんだろうな。

 でも、いいんだ。

 最近の俺は俺らしくなかった。

 気になれば即行動、それが早い。


 エルフの兵士が俺を呼ぶ。


「フラグ様、今日はここでお泊りください」

「そっか、うん」


 俺はバライチゴの城に泊まった。

 そして女王にまた呼ばれてにこにこしながらミステリについてどこがいいかなど色々聞かれた。

 モモイロを超える恋バナ好きか。

 しかも父上への手紙を書きながら聞いてくる。


 嫌な予感がするぞ。

 俺達は次の日、帰路についた。



 ◇



 ミステリは俺から少し距離を置いていた。

 話しかけようとすると数回言葉を交わして立ち去る。

 しきりに髪をいじって落ち着かない様子だった。

 俺はやってしまったか、でも、いいんだ。


【王城】


「ご苦労だったな。返信の手紙か」


 4人で王に謁見する。

 王はエルフの女王からの手紙を呼んだ。


「……」

「ふ」


 王がわずかに笑った。

 エルフの女王、何を書いた!

 俺の事か?

 モモイロとバットの事か?


「色々あったようだな。なあ、フラグ」


 俺か!


「……はい」


「そしてミステリも、お疲れ様だった

「はい」


 ミステリはつるっとした顔をしており、表情が読み取れない。


「エルフの村、ターンポイントの報告書はいつ出す?」

「出来ております」


 報告書を渡すとその場で読んでいく。 



「……真面目にやってきたようだな、いつも手を抜かず、本気で取り組んで欲しいものだ」

「はっはっは、ご冗談を」

「簡単すぎたか?」

「いえ! 私の力に余る大きな仕事でした!」


「私とアニサマが苦労しているのは知っているな?」

「はい」

「もっと無理をして頑張ってみたらどうだ?」

「もうとうに疲れております」


「エナジーポーションを使えばいいだろう」

「あ、あれはコーヒーや茶葉から抽出したカフェインをふんだんに使っております。その場限りの効果で飲みすぎは良くありません」

「あれは素晴らしい、私は毎日5本飲んでいる。お前もせめて3本くらい飲んで働いてみないか?」


「い、いえいえ、ご、ご冗談を」

「向こうでは中々に元気だったようだが、まあいい」


 ほ!


「で、フラグ、お前はターンポイントをどうするのが良いと思った? この紙はあくまで現状報告と考えられる策のみをまとめたものだ。お前自身はどう考える? どうするのが良いと見えた?」


 予想通りだ。

 答えは考えてある。


「1番は農地開拓だと思いました。交易も悪くはありませんが、干ばつなどの際にこちらから食料を送れないとなればエルフからの不信感が増します。まずは農地開拓を進め、最低限の食料を自給できるようにした上で次を考えるのが良いと考えます」


「もしお前が中心となってやるならどうするのが良いと思う? だが困った事に最近金貨が不足している」


 そういう事か!

 俺を閉じ込めてポーションを作らせて金貨を工面するためにポーションを寄付させた。

 これは今このための布石か!

 金がないと伝える為に寄付をさせた!


 暗にこう言っている。


『お前が金を用意してターンポイントの食料不足を解決しろ』


 兵士が急いで入ってきた。


「報告します。エルフ友好派とエルフ排除派の貴族間で殴り合いの乱闘が発生しました」

「それで、死者は出たか?」

「いえ、かろうじて死者は出ていません」


「武器を使わず収まって何よりだ。また喧嘩にならぬよう、双方には距離を取るように伝えるのだ」

「了解しました!」


「所でアニサマ、フラグ、たまには3人で食事でもしようではないか。特にフラグ、気になる娘の話を聞かせてもらうぞ」


 周りの家臣から笑いが起きる。

 でも食事の話題はミステリの話題とはならない。

 父上はこう言っている。


『ターンポイントの件は後回しだ。エルフ友好派とエルフ排除派の会議を3人だけで行う』





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