第18話 バライチゴの大木

 俺は夜明けとともに強引にみんなを起こして村を出た。

 みんな眠そうだけどそれ以上にエルフの女王が気になる。

 何かが起きる予感があった。

 謎が解けるかもしれない。


 ミステリが眠そうに言った。


「もう、早すぎる」

「悪かった、でも行こう!」

「何かあったの?」


 勘がいいな。


「早くエルフの女王の所に行きたくなった」

「モモイロとバットも悪かったな。もう手遅れだけどさ」


「だ、大丈夫だよ」

「問題無いよ」


 モモイロの顔を見ると、問題あったんだろうな。

 2人で色々長く、したかっただろうし。


「済んだことはしょうがない、行こう」


 俺の言葉でモモイロが真っ赤になっているが気づかないふりをした。

 わっかりやすいな。

 どっちが好きかもこれくらい分かりやすいとよかったのに。


 女性兵士だけが納得できないように言った。


「早すぎますよ! 女の子は色々あるんです!」

「ジャムパン、食うか?」

「……貰います」


 パンを渡すと女性兵士が静かになった。

 ちょろい、女じゃなくて女の子だな。


「イチゴミルクも飲むか」

「もらいまふ」


 ミステリが俺を見た。


「……」


 ミステリの目線が一瞬だけ女性兵士を見てから俺を見る。

 ちょろいって思ってるのがバレたな。

 本当に勘がいい。


「私にもイチゴミルクを」

「うん」

「イチゴミルク、美味しいですよね」

「そうね」


 ミステリが控えめな笑顔を見せた。

 気づいても突っ込まないでいてくれる気遣いを感じた。

 ミステリがミステリだったらいいな。

 化けてるとか騙してるとか、そう言うのは本当にやめて欲しい。


「ぷはあ、おいしいです。道がガタガタし過ぎて」

「フラグ様、ここからは歩きになります」


「そっか、所でまだついてくるか?」

「いえ、皆さんの移動速度について行けません」

「本当に護衛とかじゃなくてサボり防止でついてきたんだな」


「は! その通りであります!」

「そういうネタはいいから、ここでキャンプか」


 俺はキャンプ用の用具を出した。

 だが女性兵士が食い下がる。


「バライチゴのパンも、後イチゴミルクと焼き鳥も美味したっかったです!!」

「……はあ、分かったよ。欲しいなら欲しいって言ってくれ」

「いえいえ、フラグ様のお気遣いを信じていますよ」

「はいはい」


 俺が追加で物資を出すとみんなが笑った。


 みんなが敬礼をして見送る中、女性兵士は片手にパンを持っていたが誰も突っ込まない。

 俺達は先を進んだ。

 馬が疲れたのと俺達の方が早いので自分で走った。

 


 ミステリが走れるか心配だったが意外とついて来てくれた。

 それよりも先にモモイロが息切れするくらいスタミナがあった。


「バット、悪いけどモモイロを運んで欲しい」

「分かったよ」

「悪いな」

「……」


 ミステリは2人の関係を察したか。

 それとも前から分かっていたのか?

 分からない。



 ◇



「バライチゴの城についたけど、凄いな」

 

 ゲームで出てくる世界樹のようだ。


「早速兵士に話してくるわ」


 俺は入り口を守る門番に話をしに行くと話をする前にエルフが礼をした。


「フラグ様ですね? どうぞ」

「行ってくるわ!」


 俺1人を女王に会わせたいようだ。

 他の3人は違う場所に案内される。


 中に入ると兵士が目の前の老婆に敬礼した。


「占いババア様、後はお願いします」

「おま! そういう感じか!」

「そういう感じじゃ」


 占いババアが笑った。

 父上の手のモノかと思っていたけどまさかのエルフ側か!

 ここでも占いババアで呼ばれてんのか!


「何から説明したものか、ワシの正体は明かせん、じゃが、女王は第二王子であるお前にワシの関係を明かした、それだけは言っておくでの。ついてくるんじゃ」


 占いババアが螺旋階段を登っていく。

 足が速い、妖怪のように見える。


「なあ、もしかしてここに来れば分かると言ったのは、お前の事か?」

「せっかちじゃのう、いや、じゃが、恋をしたとすれば分からんでも無いわい、ひっひっひ。恋はいいのう」


「はあ~、分かった。女王に会ってから聞けることは聞こう」

「そうか、エルフの村はどうだった?」

「エルフは、悪い感じはしなかったけど、うん」


「なんじゃ、はっきり言わんかい」

「俺はターンポイント村を調査するように言われたんだけど、調査してみると村が食糧危機だったんだ。で、思ったのは狩猟採取の考えが強すぎて今のままじゃうまくいかないと思った。食料備蓄や農耕の考えを実践して体感してもらわないとまた食糧危機になるだろうな」


「ふむふむ、話を続けんかい。意味は分かるでの。ワシはインテリじゃ」

「将来的に最も効果が高いのは大規模な農地開拓だ。手っ取り早いのは人の国と交易する事だけど、不作になれば農作物が運ばれなくなるから困ったときほど食料が運ばれてこなくなるのがまずい。エルフの移民を提案してみたけど、移動する目途は無い感じだった。この話楽しいか?」


「話を聞くのは好きじゃ。続けえ」

「うん、1番いいのは1番大変な農地開拓だな。でも、それをやろうとすると木を伐採して開墾したり、人を村に入れたりと、エルフの反発が起きそうな気もしている。木の実を植えて、成長促進ポーションで木の実の林を作るとか、回避方法は色々思いつくけど、話をしてみないと何とも言えないな」


「まるでお前がやるような言い方じゃのう」

「父上ならそう言いかねない。でも、俺がクレイジーなのはみんな知っているからバカな振りをしてやることは出来るかもな。多分父上の望みは多分そっちだろう。俺も好きにするならある程度剛腕で進めるだろうな。話は終わりだ」


「ふむ、フラグ、お前は今誰が好きなんじゃ?」

「俺は」


 言いかけて思った。

 もしこいつがミステリだったら俺は……

 最初にそれが知りたい。


「それは、占いババアの正体を聞いてからだな」

「何を考えてるか分からんが、そろそろじゃ。この部屋で待っとれ。またの」


 俺は螺旋階段を登った部屋で待った。


 ガチャリ!


「準備が出来ました。さあ、行きましょう」


 きれいで上品なエルフの女性が出てきた。

 モモイロより、銀のある動きがミステリに似ている。

 

「はい、よろしくお願いします」

「ふふふ、緊張していますか?」

「ええ、まあ」


 玉座に向かうと誰も座っていない。

 ただ横に付き人が立っているだけだった。

 さっきの女性が玉座に座った。


「さて、始めましょう」

「え!」

「私が女王、ママーン・ローズストロベリーですよ」



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