第17話 モモイロの真実

 奥に進むと衝撃を受けた。


 バットとモモイロが向かい合い、唇を重ねていた。

 なん、だ?

 占いババアは何がしたい?

 いや、本当に占いだったのか?

 それすら分からない。


『モモイロはパーティーの誰かに恋をしています』


 モモイロが恋をしているのはバットだ。

 それは分かった。

 でもバットはエルフ排除派筆頭の孫だ。

 関係を大っぴらにするわけにはいかない。

 

 だから人がいないここで、2人は密会してキスをした。

 1つ謎が解けた。

 俺はほっとしている。


 なんでだ、そうか、俺がモモイロを結ばれる可能性が低くなったから。

 ミステリと一緒になれると期待している?

 俺は、占いババアかもしれないミステリに惹かれている、のか。


 とにかくだ、ここにいてはいけない。

 俺は何も見ていないし、何も知らない。

 それでいい。

 この夜はモモイロとバットだけの秘密だ。

 それがいい。


 そっと立ち去ろうとして木の枝を踏んだ。

 バキ!


 しまった!

 焦りが出た!

 2人が俺に目を向けた。


「この匂い、フラグだよね? 隠れないで出て来て」


 俺はゆっくりと前に出た。


「す、すまない、のぞき見をする気は、無かった」


 モモイロとバットが手を繋いだままだ。

 これは確定だ。

 モモイロはバットが好きだ。


「えっとね、隠し事をしたいわけじゃなかったんだよ?」

「僕から話すよ」

「ああ」


「僕のおじいちゃんはエルフ排除派の筆頭だ。僕とモモイロがパーティーを組んだだけで怒られたよ、もし、2人の関係がバレたら」

「そう、だよな。モモイロを殺しかねない、だろ?」


「フラグは、モモイロの事が気になっていたよね?」

「前は、そうだったな」

「じゃあ、今は、ミステリの方が好きなの?」

「う~ん、占いババアの事とか色々考えて、頭がごちゃごちゃしている、でも今は、ミステリの方が気になっている」


 少しだけ、2人がほっとした顔をした。

 2人は愛し合っている。

 これは言ってはいけない事だ。

 少なくとも今は駄目だ。


 そして俺の心もほっとしていた。

 ああ、俺は、ミステリの事が好きになっているのか。


 ミステリがミステリじゃないのが怖い。

 エルフじゃなくてもいい、ミステリと結ばれたい、そう思っているんだ。

 でも、この恋は叶わないかもしれない。


 1つ謎が解けると次に行きたくなる。

 エルフの女王に会いに行きたい。

 何が分かるかは分からないけど、何かが変わる予感がする。

 真実を知りたい。


「ふう、これは、この事は秘密だ」

「なんかおかしいね、皆ほっとした顔をしてる」

「そうだね……モモイロ」

「……バット」


 2人は長く、激しいキスをした。


 俺は音を消して、そっと立ち去った。

 少しほっとしたがまた不安要素が込み上げてくる。


 父上は俺とモモイロを結婚させたいと思っている可能性が高い。

 でもバットとモモイロは隠れてお互いを想っている。

 バットの祖父はエルフ排除派だ。


 俺がモモイロと結婚すればバットを裏切る事になる。

 俺がモモイロと結婚しなければ父上を、民の不利益になる。


 そしてバットも苦しい立場だ。

 バットの祖父はエルフ排除派の筆頭で力を持った貴族だ。

 予言のメッセージを思い出す。


『バットは裏切ります』


 今のが裏切りであって欲しい。

 モモイロを裏切る、そんな未来だけは来ないで欲しい!


 そうだ、早く、早くエルフの女王の元に行きたい。



『モモイロはパーティーの誰かに恋をしています』


 これはいい、謎は解けた。

 問題は次の3つだ。

 矛盾が解けない。


『バットは裏切ります』

『フラグはエルフと結ばれます』

『目の前の石像はフラグに嘘をつきます』


 落ち着けず夜型になった俺はポーションを作って朝まで過ごした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る