第16話 占いババア
「ワシは占いババアじゃ、それ以上でもそれ以下でもない」
「俺にはお前が、妖怪、悪魔のように見える」
「ひっひっひっひ、老婆が夜中に1人歩いておっては怖かろうな」
「そうじゃない、お前、化けてないか? 変身してないか?」
「ふむ、化けているように見える、確かにのう。老婆が人の王国から離れたエルフの村まで来ている、そうなれば気味が悪いのは分からんでもないわい」
占いババアがあごに手を当てて考える。
「フラグ、お前何かが見えている、それか何かを知っているな?」
心臓がドクンと跳ねた。
俺の予言能力に気づいているのか?
いや、占いババアは『何かが見えている、それか何かを知っているな?』と言った。
勘がいいんだ。
ミステリと同じで勘がいい。
「お前が、恐ろしい」
「ワシくらいのオーラになれば、畏怖の念で恐怖すら抱かせるか、わからんでもないわい、ひっひっひ」
そうだ、占ってもらおう。
金を出して占ってもらう。
俺のもやもやを1つでもいいから解決したい。
何を聞く?
何と言えばいい?
占いババアはエルフと結ばれると言った、ミステリの事を聞いても意味が無い。
ミステリと占いババアが同じ人間だったら答えないだろう。
なんだ、何を聞けばいい?
「ふむ、迷いがあるようじゃな、占ってやろう。金は要らんわい」
「な、何を占うんだ? というか、何を占って欲しいのか自分でも決めていない」
「フラグ、1つだけ答えるんじゃ、それで占ってやろう」
「な、なん、だ?」
「エルフ以外の娘に惹かれている、違うかの?」
占いババアの言葉に驚いて思わず顔に出てしまった。
「ひっひっひ、顔に書いてあるわい、もう答えんでええ、占ってやるでの。こー、ひゅー」
占いババアが集中する。
「……見える。エルフの女王に会いに行けば、何かが分かる。それが何かは分からんがな」
「そ、そうか」
「それと、向こうに散歩してみるがええ、何か運命が変わるか、う~む、はっきりとは見えんが、何かが分かるかもしれんのう」
「そ、そうか」
「では、立ち去るとするかのう」
占いババアは森に消えていった。
深呼吸をして考えを整理した。
俺がエルフと結ばれればどうなるか。
俺は一応王子だ。
エルフと第二王子の結婚は両国の関係を進展させる。
クレイジーな俺ならば暗殺をされない可能性もある。
暗殺されたらされたでエルフ排除派を潰す好機にもなりえる。
つまりどう転んでも両国の関係は進展する、妻のエルフが暗殺されたとしてもエルフ排除派を始末して情報操作を行う事で『両国の友好派強固なモノになった』と持って行く事が出来る。
父上なら持っていける。
そして第二王子であるのも国にとって都合がいい。
俺は所詮父上や兄様のスペアだ。
俺はリトマス紙として都合がいい。
そして暗殺されても1番ダメージが無い。
ミステリがいない時に占いババアが出てくる。
占いババアの占いが本当だとすればいい、でも、俺を操る為の言葉だったらどうだ?
エルフの国を治める王。
女王がエルフを統治し、魔女とも言われている。
占いババアも、ミステリも、同一人物だとすれば、エルフの国のスパイなのか!
そして、嫌な事が思い浮かんだ。
父上は1つの動きで複数の効果を狙う。
そう考えればクレイジーな俺とパーティーメンバーになったみんなが疑わしくも思える。
何故か美人エルフのモモイロが俺が気になっていたモモイロがパーティーを組んでくれた?
エルフ排除派の筆頭、その孫であるバットが親友になってくれて、一緒のパーティーになったのは何でだ?
父上の思惑が全く働いていないと言えるのか?
そしてミステリが同じパーティーになったのも違和感がある。
もしミステリに失恋した俺がモモイロになぐさめて貰ったら俺はどうなる?
何も知らなければ俺はモモイロを好きになってしまうだろう。
これが俺の妄想であって欲しい。
そうだ!
向こうに、何かある!
占いババアが言っていた向こうに行けば何かが分かるかもしれない。
分からないままなのが気持ち悪い。
俺は奥に歩いた。
この動きすら操作されているのかもしれない。
それでもいい、真実に一歩でもいい、近づきたい!
足が、早まる!
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