第15話 宴会

 父上の意図。

 俺を缶詰めにしてポーションを作らせた。

 そして、父上は俺に作りすぎた食料の価格を維持する建前で俺に食料とポーションを交換させ、俺の収納にポーションをストックするまでポーション作りを行わせた。

 その意図は父上が俺の収納にエルフを助ける為に十分な食料とポーションをストックさせる事だ。


 そして俺は父上の意図通りにエルフの村に到着した。

 収納魔法を使え、死なない戦闘力を持つ俺を。

 そしてこの村の調査まで命じられている。

 ここまでお膳立てを整えられたら俺は食料を寄付する。


 というか仮に俺が食料を寄付しなければ父上は激怒するだろう。

 寄付しなければエルフだけでなく俺も色んな意味でヤバイ。

 俺の意思で食料を寄付した、そういう事にしたかった。


 実際は父上の計画通り父上の手の平で踊っているだけだ。

 クレイジーな第二王子が村に食料を寄付した。

 そうする事でエルフの警戒は無くなる。


 となれば次のステップだ。

 皆の信頼を得た俺がエルフの村を救うよう命令を出すだろう。

 エルフの王に手紙を渡して帰り、報告書を出せば父上はこう言う。


『報告は分かった、で? お前はどうするのが良いと思う? お前の考えが聞きたい』


 俺は案を答える、そうするとこう言う。


『そうか、では命じる。エルフの村、ターンポイントを救ってくるのだ』


 うん、詰んでる。

 断る理由が思い浮かばない。

 父上は1度の手で複数の効果を狙う。


 エルフの国と友好を深め、両国の交易で国を富ませ、俺を遊ばせず使う。

 俺は父上に答えは持って行く必要がある。

 報告書を出すだけでは終わらないだろう。


「なーに? 難しそうな顔をして」


 ミステリが俺の眉間を撫でた。


「飲んでいるのか?」

「少しだけね」


 ミステリが俺の隣に座った。

 目がとろんとして、顔が赤い。

 しっかりした雰囲気から無防備な顔に変わっていた。

 寝起きの無防備な感じを思いだす。


 俺と違い邪念が無い表情、


 いつもより近い距離、


 ラフな服装とバライチゴの甘い香りに鼓動が早まる。


 ああ、そうか、前世の得府野とミステリは雰囲気が似ているんだ。

 落ち着いていて上品なしぐさ。

 クレイジーな俺にも普通に接してくれる器の大きさ。

 そういう所が似ている。


「どうしたの?」

「うん、昔の事を思い出してな」

「そっか」

「なにか、言いにくい事とかあるか?」


 俺はどうしても我慢できずに聞いてしまった。

 ミステリがどんな嘘をついているのか気になる。

 ……俺は、何を言っているんだ。


「あ、ほら、俺って変わっているだろ? だから、何か言いにくい事とか無いかと思って」

「誰でも、言いたくない事くらいあるよ」

「そうだな、うん、そうだ」


「だいじょーぶ?」


 ミステリが俺の額に手を当てる。

 顔が熱くなる。


「ああ、色々あってな、うん、報告書を仕上げてくる。やる事を減らそう!」


 俺はガバっと立ち上がって宴会の場を離れた。

 俺は、ミステリに惹かれている。

 でも、ミステリは俺に嘘をついている。

 いや、今から嘘をつくのか?


 どうでもいい嘘ならいい、そう願っている俺がいる。

 そしてミステリと占いババアは同じ匂いがする。


 もしミステリが占いババアだったら嫌だ。

 それにミステリはエルフじゃない。


 俺は、モモイロと結ばれるのか?

 俺はエルフと結ばれる、予言ではそう出ている。

 占いババアの言葉を思い出す。


『思うがままに生きるがいい』


『占いババアなんぞの話は信じられん、そう思うのなら自分の好きなように生きたらええ、ババアの話など聞き流しすだけでええ』


「ああああああ! 頭がごちゃごちゃする!」


 1つでいい、1つだけでも謎を解きたい。

 予言が多すぎるんだ!


 俺は、ミステリと結ばれたい、そう思ってしまう。


 でも、ミステリの姿は、あの優しさは、本当のミステリなのか?


 都合よく石化した状態で現れたミステリが疑わしくも思える。



 ……バライチゴの香りがした。


 ミステリが、俺を心配して追ってきてくれたのか?


 だが、そこには、占いババアがいた。

 占いババアが妖怪のように見えた。


「……占いババア、何でお前が、エルフの村にいるんだ?」


「ワシはどこにでも現れるでの」


 心がざわつく。


 心がもやもやする。


「占いババア、お前は何者だ?」


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