第9話 占いババア

「クレイジーな第二王子の癖に何を悩んでおる?」

「やかましい」

「占いの結果が気になっているんじゃろう、もう一度言う」


「指を差すな」

「お前はエルフの娘と結ばれる」

「お前が怪しすぎる」


「どこがじゃ?」

「自分の事を占いババアとか言う人を初めてみた」


 ついでに老婆の割に動きが良すぎる、妖怪のような得体のしれないモノを感じている。


「うむ、クレイジーなフラグはババアに興味が無いと思い、クレイジーに合わせて配慮た末に分かりやすい占いババアと言ってやったんじゃが、か弱い老人の配慮が裏目に出るとわの、流石クレイジーフラグじゃ」


「何回言った! クレイジーって何回言うんだよ!」

「エルフでない、気になる娘がいるのかの?」

「……」


「図星のようじゃな。思うがままに生きるがいい」

「ん?」

「占いババアなんぞの話は信じられん、そう思うのなら自分の好きなように生きたらええ、ババアの話など聞き流しすだけでええ」


 その言葉を聞いた瞬間に、占いババアの予言が思ったより気になっていることに気づいた。

 怪しいババアの言う事なら気にしなければいい、その通りだ。

 だが俺は今、こいつの言う事が気になっている。


 それと、気になる事があった。

 占いババアの匂いだ。


「占いババア、バライチゴの匂いがするけど、バライチゴが好きなのか?」

「なんじゃ急に、それを言うなら、クンクン、今気づいたんじゃがお前からもバライチゴの香りがするのう」


「昨日食べたからな」

「お前もお仲間じゃな。バライチゴは好物じゃ」


「パンでも食うか? バライチゴのジャムを塗ってある。でも金はやらん!」

「バライチゴは生で食ってなんぼじゃ、何でジャムにするのかのう」


 ミステリと同じ言葉!


「いらないか」

「待て、いらんとは言っておらん。貰えるものは貰う主義じゃ。もぐもぐ、けっこううまいのう、だが、口が渇いてきたわい」


「……イチゴミルクでも飲むか?」

「くれるなら貰おう」


 俺は無言でイチゴミルクを差し出した。


「いいのう、バライチゴは過熱せず、生で食うのが一番じゃ、バライチゴとミルク、砂糖のハーモニーが絶妙じゃ、ごくごく、ぷはああ!」


 見ているとミステリと同じでイチゴミルクの方が好きな事が分かる。


「最期に言うわい」

「何だよ」

「予言ではお前はエルフと結ばれる。じゃがババアの言う事は気にせず、想い人に恋をするがええ。好いた娘としか恋は出来んからのう」


「さっきと同じ内容だろ」

「占いババアは同じことを繰り返すんじゃ。だってババアだからの!」

「大きな声を出さなくてもいいんじゃないか」


「ひっひっひ、クレイジーフラグ、お前の決断を楽しみにしておるぞ、ひっひっひっひっひっひっひ」

「どんだけ笑うんだよ、後笑ったまま立ち去っていくのが怖いんですけど……」


 占いババアとミステリは同じ香りがした。

 そして予言を思い出した。


『目の前の石像はフラグに嘘をつきます』


 ミステリと占いババアは同じ人間……なのか?

 変化の紋章を持つ者はいる、でも匂いまでは隠せない。

 赤魔法の紋章でなくても初級の剣技や魔法なら習得できる。

 つまり変化の紋章を持っていてもバレることは無い。


 そしてミステリは俺に紋章を見せていない。

 そもそも変化の能力で紋章を消す事は出来る。

 紋章に触れれば俺なら紋章の効果を判別できる。

 でも、ミステリの紋章を見て、触れることが出来ていない。


 自分を石化させて、石化モンスターが多くなり石化解除のポーションが無くなったタイミングで自分を石化させて王城に連れて行けば、俺を王城に呼び出す事は出来なくはない。


 でも、何のために?

 ミステリは、本当の姿はどっちなんだ?

 占いババアが本当の姿か?

 それともミステリが本当の姿か?

 シャワー上がりのきれいな姿、いい匂いも全部嘘なのか?


 どっちだ?

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