第8話 予言のまとめ
ミステリが食器を洗ってくれて片付けが終わるとバットは出かけていった。
モモイロは街を案内すると言ってミステリと出かける。
1人でギルドに向かい、ポーション1000本を寄付するとギルド長が話しかけてきた。
「おう、悩み事か? 明日は氷が振って来るか、気をつけねえとな」
「人を何だと思っている!」
「クレイジーフラグだろ?」
ギルド長がニヤッと笑った。
「コーヒーをもっとぇ来てくれ」
これ、長くなるやつだ。
「まあ座れ」
俺を隅の席に案内した。
「ポーションの寄付には感謝している。ギルドのポーション管理に問題がある事は俺も分かっている」
「いや、いいって」
ギルドは経費削減の為少ないギルド員で回している。
どこも人は足りない。
ギルドは荒くれ者の冒険者を抑えるだけで手一杯だ。
ポーションは冒険者には安く販売しているが、安く買って転売しようとする冒険者は当然出てくる。
ポーションを普通の値段で冒険者に売れば、ポーションの買い控えが起きて冒険者の死亡率が高くなる。
結果モンスターを狩る人間が減って王都が危険になる。
よく「ちゃんと監視をすればいいのに」とかいう人間もいるが監視に金をかければポーションの転売より更に金がかかるようになる。
厳しくしすぎても緩くしすぎてもいけないし完全な方法は今のところない。
今出来るのは次の3つ。
①転売をした冒険者を公表して釘を刺す。
②冒険者へのポーション販売価格を少しだけ引き上げる事で転売をした冒険者に圧力をかける。
③冒険者のパーティー単位でポーションの販売数をリスト化し、ポーションを節約できる冒険者に飴クエストを流す。
そのくらいか。
それを全部実行しても今度は「初心者冒険者が育たない」とか色々と批判の声は出てくるだろう。
天秤の傾きのように政策はキリがない部分がある。
何かを得て何かを捨てて、最大多数の最大幸福と発展を地道に進めていく。
今父上と兄さんは寄付をした者や国の発展に貢献した者に勲章を与え讃えるよう法をに変えようとしているけど、法を変えても民の心まで変えるのは難しい。
そして改革を進めれば批判を浴びる。
俺はギルド員が持って来てくれたコーヒーを飲んでため息をついた。
「父上も兄さんも、ギルド長も大変だと思う。トップは何もしない批判者のうっぷんを晴らす殴られ役でもある」
「お前もやる気になれば出来るだろう?」
「いや、俺は皆とは心が違うんだよ。あーコーヒーがうまい」
「心? なんだそりゃ?」
「むやみやたらに批判だけをして対案も出さず、寄付もせず、人を育てず、批判だけをひたすら続ける人間を、それでも父上や兄さん、ギルド長は助けようとしている。でも俺は駄目なんだ。俺は人を選ぶし、クズがいい思いをせず、真面目に働いている人間だけを助けようとする。人格が違うんだよ」
「お前だって色々寄付はしてるじゃねえか」
「頑張っている人間に寄付をしているのは、圧力をかけるカードとして使っているだけだ。真面目が馬鹿を見る法や慣習を潰すためカードを切る。俺はそういう人間だ」
「おめえ、王や立派な兄の苦労を見すぎだ、それと裏の事情に気づきすぎる。お前は変に頭が回るからな」
「クレイジーでも悩みはあるわけだ。コーヒーうまかった。ギルド長の事は嫌いじゃない、状況によってはまた圧力をかけるけどな」
「おう、また来いよ!」
手を振ってギルドを出た。
ギルド長は表では俺に怒鳴ったりしているがギルド長にはギルド長の役割がある。
ギルド長の事は個人的に嫌いではない。
俺が落ち込んでいるような顔をしていたから話を聞いてくれたんだろう。
でも預言の力は人には言わなかった。
ギルド長は俺の悩みを勘違いして聞いてくれただろう。
さて、1人になった。
公園のベンチに座って腕を組む。
色々まとめてみよう。
予言の内容を確認する。
『モモイロはパーティーの誰かに恋をしています』
『バットは裏切ります』
『フラグはエルフと結ばれます』
『目の前の石像はフラグに嘘をつきます』
モモイロは俺かバットに恋をしている、でも、どっちが好きなんだ?
普通に考えれば選ばれるのはバットだ。
でもバットの祖父はエルフ排除派だ。
バットはそれが嫌で冒険者をやっているが、それも裏切るとなれば納得できる、しかしバットを疑うのは嫌だ。
俺はエルフと結ばれる、普通に考えればモモイロか、気になるエルフとの交友関係がそれしかない。
でも俺はミステリに惹かれ始めている。
だがミステリは俺に嘘をついているかこれから嘘をつく。
それが何なのか分からない。
しばらくすれば予言が更新される可能性もあるが、俺の能力はランダムで発動する。
時間が経てば予言は明らかになっていくだろう、今までそうだった。
「くそ、堂々巡りか」
バライチゴの匂いがした。
「ひっひっひ、クレイジーフラグ、悩んでいるようじゃのう」
「占いババア」
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