第7話 18才

 次の日、俺は夜が明ける前に目覚めた。

 酔いは抜けたがまだ考えがまとまらない。

 心を落ち着かせる為にテーブルを片付けて回復ポーションでも作ろう。


 巨大な鍋に刻んですり潰した薬草を水と一緒に投入する。

 鍋いっぱいに薬草汁が満たすと火にかける。

 大鍋をかき混ぜて水分を飛ばすように煮詰めると火を弱めた。


 魔法でポーションの成分だけを抽出して空中に浮かべるとポーションが輝きを放った。

 宙に浮いたポーション成分を並べてあるポーションビンに注ぎすべて軽く蓋をする。


 ポーションを氷魔法で冷やすと木の蓋がしっかりと入っていった。

 成分保存の魔法をかけるとポーションの完成だ。


「おしっと」


 3人が起きて俺を見ていた。

 もう日が昇ったか。

 生産魔法はいい、心を落ち着かせてくれる。


「おはよう」

「「おはよう」」


 モモイロのはだけた胸に目が行ってしまう。

 ミステリが俺の視線に気づいた。


「モモイロ、胸が見えているわ」

「へ? あ!!」


 モモイロが部屋に戻っていった。

 

「ミステリ、モモイロと仲良くなったようだな?」

「ええ、皆仲良しよ」

「ミステリも、後ろ髪が跳ねているよ。まだ酔いから覚めていないようだね?」


 バットが手櫛で髪をすくと心がざわついた。


「私も人の事は言えないわね。身だしなみを整えてくるわ」


 ミステリも部屋に戻っていく。

 ミステリはしっかりした印象だったが朝に弱いようだ。

 可愛い。

 ポーションを収納すると思い出した。


「あ、ギルドにポーションを渡してなかった! 父上に渡すように言われてたわ!」

「昨日は色々あったからね。仕方がないよ」

「今日渡しててこよう」


 モモイロとミステリが2人戻ってくるとモモイロが俺の手を取り撫でた。


「また手が荒れてるね」

「薬になる毒草もあるからな」

「手袋をすればいいのに」

「後で治すから」


「ねえ、フラグとモモイロは付き合ってるの?」

「いや?」

「付き合ってないよ?」

「恋人みたいね」


 ミステリの機嫌が悪そうに見える。


「2人は付き合っていないよ。それにね、無理に聞き出そうとするのは良くない」


 バットの言葉にミステリが謝るが、俺の胸にも突き刺さった。

 俺は皆から予言の事を聞き出したくてたまらない。

 そう思ってしまう。

 

 ミステリのイヤリングが気になった。


「このイヤリングってさ、魔力」


 ミステリのイヤリングに触れようとするとミステリが驚いた。


「ひゃ!」


 ミステリが後ろに下がる。


「あ、悪い」

「……チャラい」

「え?」

「フラグってチャラいよね?」


「いや? クレイジーとは言われるけど、チャラいとは言われた事が無いし、違うと思うぞ?」


 なんだ?

 さっきから俺の視線に気づくし、


 モモイロと付き合っているか聞いてくるし、


 機嫌が悪いし、


 イヤリングを触ろうとしただけで怒るのにバットが髪を触っても何も言わないし!


「2人って、似てるよね?」

「同じ黒目黒髪で耳にイヤリングをつけているけど、黒目黒髪はどこにもいるし、俺のイヤリングはイヤリングだけど魔道具でもあるから、中身は全然違うぞ?」


「そうじゃなくてね……」


 モモイロは考え出した。


「うまく言えないけど、雰囲気が、似てる、気がする」

「姉弟(きょうだい)みたいな?」


 ミステリの言葉に俺は首を横に振った。


「ちょっと待て、兄妹って俺とミステリ、どっちが上なんだ?」

「そこって重要かな?」

「どっちどっち?」


 モモイロが思いついたように手をパチンと叩いた。


「せーので年を言ってみようよ」

「俺達3人は分かってるけど、ミステリは自分の年を分かるか?」

「分かるわ」


「せーの」

「「18才!」」


「おお、みんな18才だね。じゃあ、4人の中で誰が一番弟に見えるかせーので指を差してみようよ」

「何で俺を見て言うんだ? だが受けて立とう」


「せーの!」


 俺はモモイロを指差した。

 だが俺以外の全員が俺を指差した。


「な、ん、だと!」


 みんなが笑う。

 俺も釣られて笑ってしまう。


「朝食を作るわね、弟はパンとベーコン、卵とサラダを出して」


 俺が納得できない顔をしたまま素材をミステリに渡すとモモイロが更に笑う。

 バットはにこにことほほ笑んで見守っている。


「ミステリお姉ちゃんか」


 俺の言葉でモモイロは呼吸が不安定になるほど笑い続けた。

 その後、朝食が終わるまでモモイロはちょっとの事で笑いをぶり返し続けて朝食が終わる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る